せいとかいるいじろく#8

「お邪魔します」

「邪魔するんやったら帰ってください」

「あぁ、ごめん」

 海パイセンだとわかった上で関西色強めな返答をしたのに海パイセンは真面目な顔で謝って生徒会室を出て行こうとしました。

「海パイセン、冗談です。冗談ですから戻って来てくださいよ。海パイセンが帰っちゃったら今回の類似録たった数行で終わっちゃいます」

「そんな必死になって止める必要無かったのに。俺だって半分は冗談のつもりだったから」

 半分は本気だったんだぁ~ なんて思ったさやちゃんですが、それは言葉にはせずに心のうちに仕舞っておいてあげました。さやちゃんは優しいので。

「確か、さやちゃんに呼ばれたから来たはずなのだが、何の用事だ?」

「用事というほどの用事では無いのですが~ 海パイセンにはこれからさやちゃんのおしゃべりに付き合ってもらいます。具体的には4話分ほど」

「別に良いけど、これから生徒会じゃないの? 4話分が体感時間にしてどれ程の時間なのかはわからないけれど」

 海パイセンにはの概念に関しては理解していないはずですが、さやちゃんに話を合わせてくれました。理解のある良いパイセンです。

「時間に関しては特にお気になさらずに。時間になったら丁度良く七海パイセンたちがやって来ると思うので」

「なるほど、大体わかった気がする」

「それでは早速」

 の前に改行入れます。言わずもがな場面転換です。


「さぁて、海パイセンとまず話したい事ですが……海パイセンってぶっちゃけ、さやちゃんのことどう思っていますか?」

「どうって言われてもな。自由すぎる後輩かな」

「もうちょっと長めの文章で答えてくださいよ。初めての出会いとか振り返りながらぁ!」

 これから海パイセンには4回に渡って過去を振り返ってもらおうと思います。第1回目は僭越ながらさやちゃんとパイセンの過去を振り返っていきます。

「初めての出会いって言うと、学校の外で出会ったのが最初だよな?」

「まだJCだったさやちゃんにパイセンが声を掛けてきたのがきっかけですね。今考えると事案ですよね~」

「おいおい、待て待て。何か記憶違いをしていないか? あの時声を掛けてきたのはさやちゃんだったはずだぞ」

「では、VTRがあるので確認してみましょう。VTRスタート」


 2020年11月20日更新『じょしちゅうがくせい』より抜粋(一部編集)。

 帰宅途中の事だった。

「おや? そこの女子中学生、何やら俺に尋ねたいことがあるみたいだな? 俺は明才高等学校の生徒会長芹沢海だ。困っていることがあるのなら何でも言ってみろ」

 俺は迷える子羊ちゃんにそう声を掛けた。我ながら優しすぎる男だ。


「一部どころか一部以外全て編集がされているじゃないか!」

「あれ? 違いました?」

「少なくとも生徒会長になってからは一度だってなんて自分で言っていても身震いするような言葉を口にした覚えも、考えた覚えもねぇよ」

 一年以上も前の事なのでマルッと忘れてしまっているかと思いましたが、さやちゃんとの思い出はそう簡単に忘れられるものではないようでした。

「初めて会ってからまだ一年程度しか経っていないとは思えないな」

「それってもしかして、海パイセンにとってさやちゃんが大事な人って事ですか?」

「どこをどう解釈すればそんな突飛な事を考えられるのか分からないけれど、さやちゃんとはもっと昔から仲良かったようなそんな気がするよ」

 その時、海パイセンの頭の中に封印されてきた記憶が開きだしました。

ある春の日、海パイセンと明日香先輩とさやちゃんでお花見をした事。

 ある夏の日、海パイセンとさやちゃんで夏祭りに行った事。

 ある秋の日、海パイセンと明日香先輩とさやちゃんで焼き芋をした事。

 ある冬の日、海パイセンとさやちゃんで雪まつりに行った事。

「って、なぁんで、さやちゃんの捏造した記憶にちょいちょい明日香先輩が割り込んでくるんですか!」

「花見と焼き芋は実際に明日香とやった記憶があるから介入は出来ても改変は出来なかったんだろ。夏祭りと雪まつりに関しては完全な捏造だが」

「意外と海パイセンとさやちゃんだけの思い出って少ないですよね」

「そうだな。基本的に誰かと一緒だった気がするな」

 嫌ではありませんが、少しもやっとしました。しかし、残念なことにさやちゃんは海パイセンに対しての恋愛感情は一切ありませんでした。つまり、ただの嫉妬です。

「さやちゃんさえ良ければ俺はいつでも二人きりで遊びに行くのは構わないよ」

「パイセン、残念ながらさやちゃんはこの物語に置いてパイセンの攻略キャラでは無いのですよ。でも、パイセンがうちに二人でお出掛けしましょうね」

 さやちゃんの言葉を聞いてパイセンが男性主人公特有ののスキルが発動して首を傾げている所で数少ないパイセンとさやちゃんの思い出話には一旦区切りを付けましょう。


 それでは皆さんご唱和ください。ばっは~。

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