ありがとう

「海先輩」

 次期生徒会一年副会長を務めることとなった、さやちゃんこと烏居爽香から真面目に名前を呼ばれたのは今回が初めてのような気がした。

「最後くらいは真面目モードですよ。なんたって最終回ですからね」

「最終回じゃねぇよ」

 さやちゃんの役職を奪う形にはなってしまうが、一旦の区切りを記念して一度だけメタ的な話をさせてもらう。

 俺こと芹沢海が明才高等学校の生徒会長に就任してからの一年間を綴ったこの擬似録はあと少しだけ……あと30ほど継続する。

「知っていたはずだよな?」

「もちろん知っていましたとも。ここからは生徒会役員を代表してさやちゃんがこの物語を引き継がせていただきますからね。でもその前に」

 さやちゃんはニコニコとお世辞抜きで可愛らしい表情で俺に迫りよると、名刺ほどの大きさの封筒をそっと手渡してきた。

「開けても良いか?」

「開けない選択肢もありですけど、この回のうちに開けてもらわないと、さやちゃんが何を手渡したのか誰もわからないままこの物語は幕を閉じることになりますよ」

「そうか、それは困るな」

 適当(ここでの意味は相応しいという意味ではなくいい加減と言う意味で使用)な相槌を打った俺はその封筒の中身を取り出してみた。

「どうです~? 嬉しいでしょ?」

「嬉しいか嬉しくないかで言えば、嬉しい寄りの嬉しくないだな」

 無駄にしっかりとした作りで出来た『さやちゃんとデートできる定期券(さやちゃんが飽きるまで有効)』を手にした俺は素直に感想を述べた。

「と~に~か~く~ ここまでお疲れ様でございました。ってことで素直に受け取ってください」

「わざわざ交通系ICカードのようなクオリティの定期券はありがたく受け取らせていただくよ。いつ使うかは別として」

「じゃあ、最後のお仕事をしてきてください。次話の主人公はここでお暇させていただきますから」

 さやちゃんはそう言うと文字通り姿を消した。



生徒会議事録

 この一年、生徒会長として至らぬ点も多々あったと思う。それでもついて来てくれてありがとう。七海、笑舞、明日からの生徒会頼んだ。 生徒会長 芹沢海

 この一年、千景先輩の時からも含めると二年間の生徒会活動は美沙にとって今までで一番充実した時間だった。みんな大好きだよ~。  生徒会副会長 福品美沙

 生徒会と助っ人と勉強の両立は大変だったけど、すっっっっっごく楽しかった! 七海ちゃん、笑舞ちゃん、小雨ちゃん先生、今はいないけど颯くん、恵吾くん、さやちゃん、明日から頑張って! 以上! 生徒会会計 早川柚鈴

 あの日、自らの意思で落選した私が今この場に居られることを自分自身今でも信じることが出来ないけれど、この場に居た時間は、みんなと共に過ごした時間は一生の宝物です。七海会長、笑舞副会長、明日からの生徒会をよろしくお願い致します。 生徒会庶務 春風明日香

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