ふたりだけのちょっとのじかん

 来月と言う節目から生徒会で使う文具を新調しようと購買部を訪れると、眉間にシワを寄せて文具をじっくりと見つめる恵吾さんを見つけました。

「奇遇ですね。恵吾さんも文具を探しているのですか?」

「笑舞先輩!? お、お疲れ様です。そうなんです。書記として筆記用具はちゃんとしたものをと思いまして」

「なるほど、良い心がけです。……が」

 ワタシは恵吾さんの持つ買い物かごの中身を見つめ、表情にも行動にも出しませんでしたが頭を抱えました。

「試行錯誤しているようですね」

「すいません。役に立ちそうなものを手に取っていたらいつの間にか……。本当に必要か考えていたんですが、考えれば考えるほど物が増えてしまって」

「なるほど……」

 ワタシは恵吾さんのかごの中の物を一つ手に取り、元の棚へ戻しました。

「書記と言ってもほとんどの仕事はパソコン一台あれば事足りてしまうのでこれらのほとんどは必要ありません」

「そう、なんですね」

「ここでお会いしたのも何かの縁ですから、良ければワタシが必要なもの見繕いましょう」

「ありがとうございます」

 恵吾さんは目をキラキラとキラメかせてそう言いました。颯の存在が無ければときめいてしまっている所でした。

「この程度で十分かと」

「これだけですか?」

 恵吾さんはワタシが見繕った必要最小限の文具を見つめてそう呟きました。

「先にも述べた通り、現在の書記の仕事はパソコン一台で済んでしまいます。なので、提出書類に使用するためのボールペン、普段使いするシャープペンシル、仕事内容だけでなく様々なことを記入するためのメモ帳、最低限これだけあれば十分です。あとは、実際に仕事をしていて必要に感じた物を買い足すのが良いかと」

「本当にありがとうございます」

「いえ、ワタシの買い物のついでですから」

 ワタシはそう告げて自分の買い物を済ませ……数分が経ち、恵吾さんに勧め恵吾さんが購入した筆記用具とワタシが新調した筆記用具が偶然にも色違いのお揃いになってしまっていたことに気が付きました。

「颯に限ってそのような事は無いと思いますが」

 万が一、颯にあらぬ誤解をされてしまうのは非常に嫌なので、颯とナナそして爽香さんにも色違いの筆記用具を購入してプレゼントをすることにしました。



生徒会議事録

 とうとう明日で終わりなんですね。 七海

 確かに明日で終わりだが、明後日からは新たな始まりだ。 芹沢

 ナナちゃん、笑舞ちゃん頑張ってね。 美紗

 小雨先生も引き続き生徒会をよろしくお願い致します。 明日香

 忘れられていないようで安心しました。 小雨

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