ちょっとふたりだけのじかん

「美沙先輩、お疲れ様です」

 偶然廊下ですれ違った颯くんは姿勢正しく立ち止まると、深々と頭を下げて挨拶をしてきてくれました。

「今までそんなにしっかりとした挨拶じゃなかったよね?」

「す、すいません。美沙先輩が生徒会の先輩だと思ったら身体が勝手に」

「美沙を生徒会の先輩として敬ってくれるのは嬉しい事この上ないけれど、美沙は颯くんが生徒会会計に当選するずっと前から颯くんの先輩だったんだけどなぁ」

「そうですけど、今までは何となく年上の友達って感じだったので」

 それはそれで失礼な態度のような気はするけれど、美沙はむしろそのような付き合い方の方が気楽で良いと思いました。

「颯くんにはこれからも今まで通りでいてくれると嬉しいな。美沙個人の感想で、海や明日香、ユズリンがどう思うかは別だけど」

 美沙は少し意地悪なことを言ってみました。

「会長や柚鈴先輩は許してくれるかもですけど、明日香先輩は……」

「あれ? もしかして颯くんって明日香苦手?」

「苦手ではないですけど、ちょっと怖いっすね」

「大丈夫。『アッスー先輩、今日も可愛いっすね』って言えば明日香は優しくしてくれるから」

「それ、笑舞に申し訳ないんで無理っすね」

 冗談のつもりで言ったことを颯くんは真面目に受け取って真面目な顔でそう返してきました。

「颯くんは本当に笑舞ちゃんが好きだね」

「はい、大好きっす!」

 この笑顔を写真に撮って笑舞ちゃんに送り付けてあげたいほど颯くんはとても良い表情でそう言いました。



生徒会議事録

 今日から生徒会室の戸締りは七海に任せる。よろしくな。 芹沢

 はい、任されました。締め忘れの無いように気をつけます! 七海

 施錠の再確認のお仕事は笑舞ちゃんにお任せするね。 美紗

 はい、引き継がせていただきます。 笑舞

 着々と仕事が次の世代に引き継がれて行っているわね。 明日香

 終わりが見えてきちゃったね! 柚鈴

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