ななみのこくはく
「海先輩、今日は一日付き合って頂いてありがとうございました」
「俺の方こそ、今日は一日楽しかったよ。ありがとう」
それはたとえお世辞であったとしてもナナにとってとても嬉しい台詞でしたが、ナナはこの後に控えている台詞で頭がいっぱいになっていました。
「あ、あの……これ、今日のお礼というか、海先輩の誕生日プレゼントというか……海先輩の好みに合えば良いのですが」
「これは、ネクタイピンか? バッタに、剣に、これはスタンプ? 良く見つけてきたな」
「喜んでいただけて良かったです」
お兄ちゃんたちは何故そのような独特なネクタイピンを選んだのか分かっていないようでしたが、ナナと同じ日曜朝の民である海先輩にはこの三つに共通するものが瞬時に理解できたようでした。
「あの、海先輩……」
ナナは迷っていました。正確には今も迷っています。
「ナナから海先輩にお話があります」
「改まってどうした?」
この先の言葉を言ってしまっても良いのか。
「あの……」
自信が無くてずっと海先輩の首元を見つめていたナナが視線を上げてみると、海先輩は真剣な眼差しでナナを見つめていてくれました。
その瞳を見て、ナナは決心しました。
「海先輩、ナナ……生徒会に入った時から、海先輩を初めてみた時からずっと、ずっとずっと……海先輩のことが好きです。ナナ……わたしと付き合ってください」
言ってしまいました。でも、後悔はしていませんでした。
「ありがとう。そう思ってくれることすごく嬉しいし、男として誇らしい気分だ。でも」
『でも』その二文字はナナの心に容赦なく突き刺さって来ました。
「今の俺では七海の期待に応えることは出来ない」
辛い、悲しい、そんな気持ちは不思議と湧いてきませんでした。それどころか、ナナの心はスッキリとしていました。
「七海が俺を好いてくれているのは、俺が生徒会長だからかもしれない。もちろんそうではない可能性だってあるけれど。これは俺のわがままだけど、俺が生徒会長の職を退いても七海が俺のことを一人の男として好いてくれているならば、また気持ちを伝えてくれないか?」
海先輩がナナの告白をすんなり受け入れてくれないであろうことは随分前から予想していましたが、まさかこのような提案をしてくるとは思ってもいませんでした。
「海先輩、それって、すごくわがままです。ナナじゃ無ければ恋心冷めるところですよ」
「そう、だよな」
「でも、ナナはそういうところも含めて海先輩が好きなんです。だから、また告白させてください」
「あぁ、次はちゃんと答えるから」
帰宅してナナの表情をみたお兄ちゃんたちは、告白が成功した訳でもないのにスッキリとした表情をしているナナに困惑していました。
七海 「海先輩に告白しました」
七海 「今はまだ受け入れてもらえませんでした」
明日香 「その報告」
明日香 「いる?」
七海 「はい」
七海 「明日香先輩は先輩ですけど」
七海 「恋のライバルですから」
明日香 「じゃあ、言うけど」
明日香 「海は絶対私が振り向かせる」
七海 「どんな結末になっても」
七海 「お互い恨みっこ無しですよ」
明日香 「もちろん」
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