ふたりだけのすいぞくかんでーと
柚鈴先輩から水族館のペアチケットを貰ったワタシは休日を利用して颯さんと水族館デートを楽しんでいました。
「なぁ、これ可愛くないか?」
「颯さん、明才祭の時もサメやカメのぬいぐるみを見ていましたね」
「男が可愛いものを好きって、変か?」
颯さんは不安そうな表情でワタシに尋ねてきました。
「少なくともワタシは変だとは思いません。それに、キラキラと目を輝かせてぬいぐるみを見つめる颯さんの姿はとても可愛らしいと思います」
「ばっ! オレは可愛くなんかないって」
「ふふっ。何かお気に召すものはありましたか?」
「あぁ!」
生き生きとそう答えた颯さんは見ただけでも柔らかい手触りが伝わって来るイルカのぬいぐるみを手に取りました。
「どうしよう。買っちゃおうかな……」
イルカのぬいぐるみを優しく撫でながらそう呟いた颯さんは、ぬいぐるみに付いた値札を見てそっと棚に戻し、そのぬいぐるみよりはるかに小さいイルカのキーホルダーを持ってきました。
「これ買ってくるよ」
複雑な笑顔を見せた颯さんはキーホルダーを二つ持ってレジへ向かいました。
「お待たせ」
数分経ってレジから戻ってきた颯さんは二つ持っていた小さな紙袋のうちの片方をワタシに差し出しました。
「ぬいぐるみに手が出せなかったのは残念だけどさ、笑舞さんと……笑舞とお揃いに出来るならそれ以上に嬉しいから」
「ありがとうございます、颯さん」
プレゼントと呼び捨ての二段構えにときめいてしまったワタシでしたが、颯さんは肩から崩れ落ちていました。
「結構勇気出して呼び捨てにしたのに、笑舞はまださん付け?」
「あっ! すみません。では、改めて。ありがとうござい……ありがとう、颯」
気持ちを読み取れなかったお詫びも兼ねて、ワタシは颯さんにハグをして気持ちを伝えました。
笑舞 「すごく、恥ずかしい気持ちでいっぱいです」
颯 「それは、オレもだよ」
笑舞 「でも、楽しかったです」
颯 「あぁ、また行こうな」
笑舞 「次は、人目のないところで」
颯 「またやってくれるのか?」
笑舞 「やっぱり今のナシで」
颯 「ダメ。約束な!」
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