さいのう

「会長ってバスケットボールの経験なかったはずですよね?」

 颯さんに誘われて男子バスケットボール部の活動に参加していた会長はとてもバスケットボール初心者とは思えないほど的確にシュートを決めていました。

「体育の授業でしか経験した事は無いけど」

「どこからでもシュートが決まるなんて才能ですよ」

「そんなこと無いよ。近かったから入っただけで」

 そう答えた会長でしたが、まんざらでもなさそうな表情を見せていました。

「じゃあ、ここからシュートしてみて下さいよ」

「ここからって、スリーポイントライン……だっけ? それよりもゴールから離れているから絶対に無理だって」

「試してみるだけで良いので」

 颯さんはそう言ってボールを会長に押し付けました。

「外しても笑わないでよ?」

「笑う訳無いじゃないですか」

「それじゃあ、行くよ」

 無意識か、それとも意識したのか、会長は千景先輩を思わせる咳払いをするとバスケットゴールにだけ集中をしてシュートを放ちました。

 会長の手から放たれたボールは最初からそのように動くことが決まっていたかのように綺麗すぎる弧を描いてゴールに吸い込まれて行きました。

「お見事だよ。芹沢くん」

「部長もそう思いますよね!」

「おい、佑太。これは偶然だよ」

「いいや、これは才能だ。皆もそう思うだろう?」

 男子バスケットボール部の部長である渡辺佑太先輩の言葉に颯さんを含めた男子バスケットボール部のメンバーは拍手で返答していました。

「拍手はやめてくれ。恥ずかしい」

「生徒会長を務めているんだ。拍手なんて慣れっこだろう? ところで、その才能を俺たちの為に使う気はないか?」

「男子バスケ部にスカウトか? 申し訳ないが俺は生徒会で手一杯だ」

「それは重々理解しているよ。俺が頼みたいのはたった一度。体育祭の舞台だけだ」

 そう告げた渡辺先輩の真剣な眼差しを見てワタシも会長もこの話が真面目な話に切り替わったと感じました。

「うちのクラスの早川くんは体育祭当日に各部活の助っ人を行うと聞いている。芹沢くんが出来ないはずはないと思うけれど?」

「俺じゃ役不足じゃないか?」

「さっきのシュートを見せられて役不足だと思うなら俺はこの部活を束ねる資格が無い」

「わかった。その代わり柚鈴と同じくフリースローを一球だけの助っ人だからな」

「もちろん。よろしくお願いするよ、芹沢くん」

 会長と渡辺先輩は強く硬い握手を交わしました。

「……ところで、ワタシは何故呼ばれたのでしょうか?」

「ごめん、それはオレのわがまま」

 颯さんからそう言われ、悪い気はしませんでした。



生徒会議事録

 話を聞いたけれど、海が勝手に取り決めた約束の穴埋めを私たちがする必要があるのね? 明日香

 海先輩が心置きなく頑張れるようにナナ頑張りますね。 七海

 迷惑をかけて申し訳ない。 芹沢

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