どなりごえ

「違う、違う、違~う!」

 クラスメイトと文化祭の準備を行っていると、隣にある3年4組の教室から大きな怒鳴り声が聞こえてきました。

「また始まったよ」

「本職だから仕方ないよ」

 私と共に作業をしていた野々さんと若槻さんはその怒鳴り声に驚いている様子はありませんでした。

「また、という事は前にもあったのかしら?」

「前に持っていうより……」

「文化祭の準備が始まってからほとんど毎日だよね」

 生徒会の仕事でほとんどクラスの準備作業には参加できていなかったとはいえ、毎日起こっている出来事を認知出来ていなかったのは不覚でした。

「そういえば、二人はこの怒鳴り声の理由について知っているようだったけれど」

「私たちだけじゃなくて、クラスのほとんどが知っていると思う」

「最初のうちはケンカだと思って、わたしたちみんなで様子を見に行ったからね」

「そういう時は私か美沙、頼りにはならないけれど海に連絡して欲しいのだけど」

「あぁ~ そうだよね。今後はそうする」

「それで、明日香ちゃんが聞きたいのは怒鳴り声の理由だよね? 明日香ちゃん、3年4組が文化祭で何をやるか知っている?」

 笑舞さんではないので流石に全クラスの出し物までは覚えてはいませんが、自分の学年の分くらいなら辛うじて覚えていました。

「確か、喫茶店だったと思うのだけれど」

「理由はそれ」

「どういう事?」

 野々さんの返答の意味がすぐに理解することの出来なかった私ですが、数秒後にその言葉の意味を理解しました。

「愛知さんね?」

「正解!」

 詳しく話を聞くと、文化祭で喫茶店を出店する3年4組は実家が『喫茶ロトル』という喫茶店を営んでいて、本人も放課後や休日に勤務している愛知紅里さんをリーダーとして準備を進めていたところ、愛知さんの喫茶店への情熱に火が付いたらしくすぐにでも『喫茶ロトル』で働くことが出来るような接客術をクラスメイトに叩き込んでいるとのことでした。



生徒会議事録

 ……以上が報告。後は海に任せるわ。 明日香

 そんなことになっていたのか。皆が困っていないなら問題無いが、一応俺から愛知に話をしておく。 芹沢

 紅里ちゃん文化祭終わったらクラスメイトをアルバイトに雇うつもりだよ。自分がサボるために。 美沙

 そう言っていたよ! 柚鈴

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