ごあいさつ

 昨日の『七海酔っ払い事件(会長命名)』を受けて行われた緊急会議が全員一致で【洋酒入りチョコまたはそれに類似する菓子類の持ち込みは禁ず】という校則を明日から施行すると決まった直後、生徒会室のインターホンが鳴りました。

「はい、生徒会です」

『初めまして。そしてお待たせしました。烏居です』

「申し訳ございません、現在会議中でして……」

「笑舞、入れて構わないよ」

 烏居と名乗る方に時間を置いて来てもらうように伝えかけていたワタシに会長はそう言ってきました。

「会長の許可が下りましたのでどうぞお入りください」

『ありがとうございます』

 そう感謝を告げた烏居さんは生徒会室の扉をノックしました。

「さいちゃん、君のキャラらしくないよ。早く入って来な」

「も~ 海パイセン酷いですねぇ。さやちゃん的に第一印象は良くしようと思っていたのに」

 入って来て早々、会長と仲良さげに会話をする烏居さん……大人気アイドルでナナの一押しアイドルでもある『rainbow』のメンバー烏居彩香の妹であり今年度からここ明才高等学校に入学した烏居爽香さんは先ほどとは全く異なるテンションをしていました。

「何度か話したことはあるけど紹介するよ」

「さやちゃんの本名はお姉ちゃんのことも含めて笑舞先輩がモノローグで語ってくれているとは思いますが、改めて自己紹介します。折角なので少し見やすくしますね。


明才高等学校1年2組所属さやちゃんこと烏居爽香です。海パイセンとは2020年11月20日の『じょしちゅうがくせい』というサブタイトルで初めてお会いしました。

 皆さんご存知の通り『rainbow』の烏居彩香がお姉ちゃんです。

 初出し情報としては、お姉ちゃんの事務所に所属している草木林華さんと桜居阿須那先輩とは顔見知りです。

 あっ! 大事なことを言い忘れていました。海パイセンには一切の恋愛感情を抱いていないし今後一切抱く事は無いので読者も含めて安心してください。


さやちゃんの自己紹介終わります」

 最後の一言が必要だったかワタシとしては疑問でしたが、生徒会室の中には少なくとも二名……ワタシの左右が安堵していました。

「多少……いや、結構変わった子だけど仲良くしてやってくれ」

「海パイセン、海パイセン」

「どうした?」

「さやちゃんには生徒会の先輩方を紹介してくれないんですです?」

「いや、言わなくても知っているだろ? いつもの感じだと」

「それは勿論ですけど、から読んでくれる人もいるかもじゃないですか。だからさいちゃんに教えてください」

「わかったよ。もちろん俺も自己紹介した方が良いんだろ」

「さっすが海パイセン! さやちゃんルールがわかって来ましたね」

 流石のワタシでも理解が追い付かない会話を繰り広げる烏居さん……「笑舞先輩、さやちゃんのことは以後、爽香さんで統一お願いします」……爽香さんに会長は苦笑いをしていました。

「みんな、悪いけど付き合ってくれ。まずは俺、明才高等学校3年3組所属で生徒会長を務めている。他に言っておいてほしいこととかあるか?」

「海パイセンのご両親のことを」

「何でそんな事が効きたいのか分からないが、両親は海外出張中で今は実質一人暮らしのような生活をしている」

「そうでしたね~ 今度さやちゃんが遊びに行くのでその時に人並みに出来る手料理振る舞ってください」

「わかったよ。次は美沙」

「もう、いきなり振らないでよ。爽香ちゃん初めまして。海と同じく3年3組所属の福品美沙です。生徒会では副会長を務めています。お菓子を作るのが好きだから今度爽香ちゃんとも一緒に作りたいな。これからよろしくね」

「はい、是非作りましょう。さやちゃんメモに記しておきます」

「次はワタシだね! こんにちは! ワタシは早川柚鈴です! 2年じゃなかった、3年4組で生徒会会計です! 生徒会以外にも色々な部活の助っ人もしています!」

「お話は聞いています。背が高くてスレンダーな体形をしていることはあまり触れられていなかったはずなので今後柚鈴先輩のそう言った一面が見られることを楽しみにしています」

「次は私で良いのかしら? 春風明日香。海や美沙と同じ3年3組所属で生徒会では庶務を務めているわ。えっと、よろしく」

「明日香先輩が人見知りなのはお聞きしています。そうだ、折角の新学期なので紗綾先輩といる時のような性格にキャラ変してみてはどうでしょう?」

「え~ さやちゃん、それマ? ……ごめんなさい、紗綾以外の前では恥ずかしいと感じてしまうわ。折角の提案ではあるけれどごめんなさい」

「明日香先輩せいではないので気にしないで下さい」

 先輩方の自己紹介を黙って見ていましたがとうとうワタシの番が回って来ました。

「ここまで台詞パートが長々続いていたのでモノローグを入れて頂きありがとうございます」

「えっと、よく分かりませんが良いでしょうか? 明才高等学校2年1組に所属している生徒会書記の小柳橋笑舞と申します。爽香さんとは何故だかワタシと似た雰囲気を感じています。これからどうぞよろしくお願いします」

「さやちゃんも笑舞先輩とはすごく似ただと思っています。これからよろしくお願いします」

「さ、最後はナナだよね? 2年5組の初島七海です。生徒会副会長です。さいちゃん……烏居彩香さんは昔からファンで……爽香ちゃんの前でこういう話はしない方が良いよね。えっと、爽香ちゃんとは彩香さんの妹だからとかじゃなくて普通に先輩後輩として仲良くしたいです。よろしくお願いします」

「お姉ちゃんのことはさいちゃん的にタブーじゃないので全然お話してくれて構いませんよ。それを抜きにしても七海先輩とはさやちゃんすっごく仲良くしたいと思ってます。言うなれば、明日香先輩に対する美沙先輩みたいな存在になれたらいいなって」

 爽香さんがナナに何を伝えたいのかワタシもナナ自身もわかりませんでしたが、爽香さんは会長を除くとナナに対して特に興味を抱いているように感じました。

「さて、長くなってしまったのでさやちゃんの『ごあいさつ』はこれで終わりにしま~す」

「いつもながらさやちゃんは急に来て、急に帰るのな。まぁ、いつでも遊びに来てくれ」

「は~い。具体的には月二回くらいのペースで遊びに来るつもりです~ それじゃ皆さんまた今度~」

 何故か『は』を強調するように言った爽香さんは眩しすぎるくらいの笑顔で両手を大きく振って生徒会室を出ました。



生徒会議事録

 ナナたちも先輩になったんですね。 七海

 爽香さん、少し変わった雰囲気ですが仲良くなれそうな気がしました。 笑舞

 二人とも先輩としてさやちゃんと仲良くしてやってくれ。 芹沢

 海君どの立場?! 柚鈴

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