きょうかしょ

「海も柚鈴さんもいつものカバンで来たのね」

「俺としては明日香と美沙がキャリーバックで登校してきている方が気になるのだが」

 そう言った海でしたが、私が周りを見渡してみると今日は女子生徒のほとんどがキャリーバックを転がして登校してきているようでした。

「これから受け取る教科書って、意外と多くて重いでしょ? 海とユズリンは軽々かもしれないけど美沙たちには重くて持って帰るのが大変だから笑舞ちゃんにお願いして明才新聞に教科書の受取日はキャリーバックで登校することを推奨するお知らせを載せてもらったの」

「柚鈴さんはともかく、海は確認していなかったの?」

「む、ワタシはともかくとは失礼な!」

「柚鈴さん、読んでないでしょう?」

「もちろん!」

「胸を張るような事ではないだろ」

「それで、結局のところ海はその記事を読んだの?」

 私の問いに海は視線を逸らしました。

「はぁ、読んでいないのね」

「笑舞ちゃんが生徒会の印象を悪くする記事を書かないのをわかっていても読んであげた方が良いと思うな」

「そうだよ!」

 呆れるワタシと微笑みながら優しく怒る美沙に便乗して柚鈴さんも一緒になって責めたからか、海はうつむいて反省したようでした。

「海、そこまで責めるつもりは無かったのだけれど……」

「明日香、珍しく優しくしてくれるのはありがたいが、確かに記事を確認していなかったのは俺の怠慢だ。笑舞にこの仕事を任せたのは俺だからな」

「そうだよ。海にはその責任があるんだから」

「ワタシも読むようにするから、海君も読もうよ!」

「は?」

 海の肩を叩く美沙と海の方が大きく沈むほど強く叩いた柚鈴さんを見ながら私は知らない事実を耳にして今日一番低い声が出ました。

「あの記事って、海が笑舞さんに任せた仕事なの?」

「言っていなかったか?」

「えぇ、初耳よ」

「やべっ」

 私の表情を見て何かを察したらしい海は生徒会長だというのに廊下を駆けだしていきました。



生徒会議事録

 笑舞、これからは明才新聞の記事ちゃんと読ませてもらうな。 芹沢

 毎週五回は読んでね。 美沙

 いえ、毎日五回は読みなさい。 明日香

 今更な話ではありますが、週に一度で構いませんよ。 笑舞

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