みっかまえ

「さて、始めるよ」

「おう」

「よしっ!」

「美沙、よろしく」

 後期中間試験を三日前に控えたこの日、美沙たちは放課後に海の家に集まって勉強会を行うことにしました。

「まずは、それぞれの苦手分野を聞いても良い?」

「俺は理数だな」

「私も」

「数学以外」

 聞くまでもなく知ってはいましたが、改めて聞くと頭が痛くなりました。

「ユズリンは一旦置いておくとして、今回の試験は理科だと化学と生物、数学だと数1と数2のどちらもあるけど、海と明日香はどっちも苦手?」

 美沙がそう尋ねると2人は全く同じタイミングで、全く同じふり幅で頷きました。

「そっか。まぁ、まとめて教えられるからある意味では楽かな」

 本音を言えばお互いに得意分野と苦手分野が違ってくれれば美沙はユズリンに集中できるから嬉しかったけれど、不幸中の幸いだと思うことにしました。

「問題は、ユズリンだね」

「ミササ、ごめんね! お詫びとは言えないけど、これ使えないかな!」

 教える必要がない数学以外の国語、英語、社会、化学、生物を教えなくてはならないユズリンの学力をこの三日でどこまで伸ばせるか悩んでいるとユズリンが分厚い紙束を美沙に渡してきました。

「ユズリン、これって?」

「前々から南帆ちゃん先生がワタシに渡してくれていた復習用のプリント!」

「ユズリン、ありがとう」

 ユズリンが渡してくれた手を付けた形跡の無いプリントは試験の範囲外のものもありましたが、復習用のプリントとして渡されただけあって試験範囲のものも含まれていました。

「海、コピー機使っても良い?」

「じゃんじゃん使ってくれ」

 海の許可を得た美沙は試験範囲の問題が載ったプリントを片っ端からコピーして、理科と数学のプリントは海と明日香の前に、数学以外のプリントはユズリンの前に、全教科のプリントは美沙の前に置きました。

「みんなには申し訳ないけど、この三日間で百点を取らせる教え方は出来ないからこのプリントをひたすら解いて。分からなかったら美沙が解説するから」

 美沙はそう言って三人にプリントを解いてもらうことにしました。もちろん美沙もその間に同じプリントを解いていくことにしました。




海   美沙、今日はありがとう。明日もよろしく。

美沙  教えることで美沙の勉強にもなるから気にしないで。

美沙  でも、一人でもプリントの問題は解いてね。

明日香 もちろん。海には負けたくないから。

柚鈴  赤点を取ったらミササと南帆ちゃん先生に申し訳ないからね!

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