敗北→始まり

「心技体って、あるだろ?それの統一感が大事だと俺は思うんだよな」

 倒れ伏したオレを前にしゃがみこんでそいつは語り始めた。

「心がイメージしてる技と体が出そうとしている技。それが一体となってないとダメなんだよなぁ」

 べらべらと喋っているそいつになんとか一撃くれてやりたいが、体は動いてくれない。

「少年の場合はリーチとかその辺がきちんと頭に入ってないのかな。そんなんじゃ強くなれないよ」

 なんでもないことのように言ったその言葉がどんな拳や蹴りよりガツンと響いた。

「帰るところがあるんなら、帰れるうちに帰った方がいい。強さでのし上がろうなんて、今どき流行んないしさ」

 言いたいことだけ言って男は去っていった。

悔しかった。自分が弱いことも、あんなヘラヘラしたやつに負けたことも全部が悔しかった。

オレはこんなもんじゃない。まだ終われない。好き勝手言われて黙ったままなんて嫌だ。

その時の気持ちが、きっと始まり。

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