タバコ
「それ、今どきの子って感じだね」
僕の話を聞いて、そのおねえさんは笑いながらそう言った。
僕は半年前に20歳になったばかりだ。20歳になって最初にしたことと言えば、コンビニに行って加熱式タバコを買うことだった。
元々タバコに興味はあったけど、悪い友達のように社会のルールに逆らってまで吸いたいとは思っていなかったので、おとなしく解禁まで待っていた。それでもただ待っていたわけではなく、ネットでタバコについて調べたりしていた。そこで普通のタバコ(紙巻きタバコと呼ばれているやつだ)より健康被害が少ないだの臭いが軽減されているだのといった点から、加熱式タバコを選んだ。
それからいろいろ試した。各メーカーの出している加熱式タバコを吸い比べたり、タバコの葉を燃やすのではなくリキッドの蒸気を吸う電子タバコに手を出したり。
シャグと呼ばれるタバコの葉を加熱するヴェポライザーだって持っていた。でも、気が付けば紙巻きタバコを吸うようになっていた。
僕がおねえさんにした話の内容はこんなところだ。
「タバコデビューに加熱式ってところがいかにも今どき」
おねえさんが再び笑った。僕がその言葉にあいまいな表情をしていたところで、おねえさんのスマホから着信音がした。
「あ、友達の仕事終わったみたい」
スマホをハンドバッグにしまってタバコを灰皿に押し付けながらおねえさんはなんでもないことのないように、
「一緒に来る?これも何かの縁だし」
と尋ねた。無論、尋ねられたのは僕だ。一瞬だけ考えてから頷く。
「じゃ、行こっか。多分、君と私の友達、気が合うよ」
そう言うおねえさんの後について、僕は狭い喫煙室を出た。
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