第99話 おふろ
シュウジ君と手を繋ぎ、家の前に来たまでは良かったんだけど、シュウジ君は私の手を離そうとしなかった。
「離してくれないとおうち帰れないよ?」と言うと、シュウジ君は「お泊りしないの?」と言い、また泣き出してしまった。
どうしていいかわからず、木村君と説得を試みるも、泣き声が大きくなるばかり。
泣き声を聞いたお母さんが、家から出てきたときには、シュウジ君は私に抱き着き、大号泣している最中だった。
お母さんは「わがまま言って泣くことはあるけど、こんなに泣くのは初めてなのよね」と困り果てている様子で、木村君も驚いているようだった。
木村君は「こうなったら最後の手段しかないな」と言った後、私に「車で待ってて」と言い、シュウジ君を強引に引き剥がした後、家の中に入り、私は車の横に駆け出した。
外まで聞こえる泣き声に、申し訳なさでいっぱいだったんだけど、車の横に来たのはシュウジ君だった。
シュウジ君は裸足のまま駆けてきて、私に抱き着き、耳が痛くなるほどの大号泣。
木村君は疲れ切ったように「ごめん。作戦失敗」と、ため息をついていた。
木村君の背後からお母さんが現れ「ごめんね。美香さん、泊まっていってもらえないかしら?大地も飲んでて運転できないだろうし…」と、ため息をついていた。
『いきなり実家に泊りって、かなりハードル高いんですけど…』と思いながらも、この状況を変えるにはそれしかなさそうな様子。
「わかりました」と言った後、シュウジ君に「良かったねぇ。お母さんがお泊りしていいって。でも、これ以上泣いたらお姉ちゃん帰っちゃうからね?」と言うと、シュウジ君はピタッと泣き止んだ。
シュウジ君は木村君に抱きかかえられ、実家の中に入ったんだけど、私が帰るんじゃないかと心配なようで、ずっとこちらを見ていた。
木村君に案内され、和室の部屋に入ったんだけど、木村君は「2DKだから俺もここで寝るしかないんだけどいい?」と聞いてきた。
「仕方ないですよ」と言うと、シュウジ君はたくさんのおもちゃを持ってきて「姉ちゃん、これで遊ぼうぜ!」と言ってきた。
木村君が呆れながら「それより風呂だろ?」と言うと、シュウジ君は「姉ちゃん、一緒に風呂入ろうぜ!」と…
思わず「え?」と聞き返してしまうと、木村君が笑いながら「お前なぁ、俺も一緒に入ったことねぇんだぞ?」とシュウジ君に言うと、シュウジ君は「じゃあ3人で入ろうよ!」と、ドヤ顔で言ってきた。
「狭いよ!」と木村君が言うと、シュウジ君は「じゃあ姉ちゃんと入る」と言い、木村君が「ダメだって!」と引き留める。
シュウジ君が少し泣きそうな顔をすると、木村君が「泣いたら姉ちゃん帰っちゃうぞ?」と言い、シュウジ君は「泣いてないもん!」と意地を張っていた。
『仲いいなぁ』と思いながら眺めていると、シュウジ君は「しゃーないから兄ちゃんと入ってやっか!」と言った後、「ママー。兄ちゃんが俺と風呂入りたいって~」と言いながら部屋を出て行った。
木村君はその様子を見て「あいつ頭、どうなってんだよ」と言いながら立ち上がり、押し入れから布団を出していた。
急いで立ち上がり、「あとやっておきますから、シュウジ君のところに行ってあげてください」と言うと、木村君は耳元で「今度一緒に入る?」といきなり聞いてきて、耳が熱くなってしまった。
木村君は私の顔を見た後、クスッと笑い「真っ赤」と言った後、部屋を出て行った。
『この3兄弟に翻弄されてる気がする…』
そう思いながら、布団の準備をしていた。
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