第72話 完成
木村君の作り話のおかげで、真由子ちゃんの籠城は崩れたんだけど、出発時間がかなり遅くなってしまった。
木村君の運転する車で真っすぐに別荘に向かったんだけど、到着した時には監督は酔いつぶれ、カオリさんもかなり陽気に。
3人はカオリさんを見て後ずさりをしていたけど、私はすぐにけいこちゃんの隣に座った。
ヒデさんと勇樹君が仕事のため、明日の朝一で来るということを聞いた後、けいこちゃんが笑いながら話してきた。
「そう言えばだいちゃん、一から作るって言ってたじゃん?一周回ってわかんなくなって、最初のやつでいいって。今不貞寝してるよ」
「マジ?」
「うんうん。しばらくなんか考えてるなぁって思ったら、うがーーって叫んで寝る!って。どうすんのって聞いたら最初ので良いって。だから次は美香だよ」
けいこちゃんの言葉を聞き、鞄からUSBを取り出した。
「4人で相談して作った」と前置きをし、OPをけいこちゃんに見せると、けいこちゃんは「こんなポーズ、素材にあった?」と聞いてきた。
「合成に合成を重ねて作ったから、違和感ない?」
「あー確かにちょっとぎこちないね。明日ユウくんに書いてもらえば?」
「そうしよっかなぁ」と言いながらダイニングに目を向けると、3人はカオリさんに絡まれている最中。
けいこちゃんはそれを見て「安いホストクラブみたい…」と呟いていた。
シャワーを浴びた後、3人に声をかけ、少しだけ編集をして就寝。
翌朝、リビングから誰かの声が聞こえ、目を覚ますと、ケイスケ君の姿がなかった。
『ケイスケ君の声?』と思いながらリビングに行くと、勇樹君とヒデさん、そして原作者の先生がソファに座り、ケイスケ君は興奮した様子で話していた。
「あ、先生、ご無沙汰してます」と言うと、先生は「久しぶりじゃん!陰でコソコソ楽しそうなことして!もっと早く教えてよ」と、笑いながら言っていた。
顔を洗い、コーヒーを入れた後、先生の近くに座ると、「ちょっと聞いてくれる?」と切り出してきた。
続々とみんなが起きてくる中、先生の話を聞いていた。
先生は新OPを見て、出来がかなり悪いと感じ、出版社に文句を言ったんだけど「黙れ」と言われてしまったようで、「1話見たら内容も変えられててさぁ。原作者に名前載ってるけど、ホワイトリリィが俺の名前を使って、好き勝手やってる状態。出版社と白鳳が手を組んでるから、何も言えないんだよ」と、がっかりと肩を落としていた。
「放送開始したけど数字は取れてないし、怒ってコメント出したけど、もみ消されたし、ホント参ったよ。 しばらく描きたくないわ」
朝から黒い話を聞かされ、「うわぁ」としか言えなかった。
「たとえ遊びでも、こうして必死に作ってくれてるのはすごく嬉しいよ。みんな、ホントありがとうね」
「いえ」と言った後、「んじゃ作りますかぁ!」と言い、大きく伸びをすると、先生が「もし必要な素材あるなら、じゃんじゃん描くよ」と言ってくれた。
「お願いします!」と言い、昨日けいこちゃんと相談したカットをお願いすると、先生はパソコンに向かって作業を始め、ケイスケ君はその隣で作業を見ていた。
けいこちゃんと大介君、そして勇樹君に「汚い」と言われたけど「良いだろ~」と言いながらパソコンの前に着き、作業を続けていた。
ほとんど完成間近だったし、先生のおかげで不足していた素材も手に入れたし、何より編集者が倍以上に増えたおかげで、夜には完成披露をすることが出来た。
先生は感動のあまりに涙ぐみ「ホント、みんなと知り合えてよかった!」と言っていたんだけど…
完成度の高さにヒデさんに火がついてしまい、朝方まで作業を強いられた。
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