第63話 怪しい行動
楽しすぎる週末を終え、普段の日常に戻る。
仕事を終え、家に帰ると、パソコンと睨めっこしながら食事を取る日々。
『このカット、どうしようかなぁ』と思い少し考えていたけど、なかなか考えがまとまらず、タブレットで漫画を読み返すことにした。
アニメの2部が開始する場面から読み返し、使えそうなところや、かっこいいと思った場面をスクリーンショット。
ついつい漫画に没頭し、スクリーンショットを取り忘れたりもするんだけど、初心に帰るにはうってつけだった。
漫画を読み始めてからは、仕事中にどうしようか考えることはなくなっていた。
週末になると、定時直後に急いで着替え、駅に向かって走る、相変わらずの行動。
電車に乗り、駅でけいこちゃんと勇樹君、大介君と待ち合わせをしていると、この日はかおりさんが迎えに来てくれた。
かおりさんの車に乗り込み、別荘に着いてすぐ、勇樹君をセンターにして打ち合わせ。
勇樹君の指示の下、作業を続け、眠くなったら隣にある部屋で、所狭しと敷きならべられている布団の上で雑魚寝。
眠くなったらと言っても、みんな限界が来るまで我慢していたから、倒れるように眠っていた。
週末を終え、後ろ髪を引かれるように帰宅し、また翌週に集まる日々。
『空いてる時に使っていい』と言っていた監督だけど、想像以上に楽しかったようで帰り際には「また来週な!」と声をかけてくれていた。
勇樹君の動画が完成し、次は私の番になったとき、けいこちゃんがカレンダーを見ながら「来週3連休じゃん。美香ずるくない?狙った?」と聞いてきた。
狙ってなんかないし、カレンダーのことなんて全く頭にないことを言うと、「変わんないねぇ」と笑っていた。
楽しい週末を終え、普段の生活に戻ると同時に、頭を悩ませる日々が始まった。
OPはほとんど終わりかけている状態だけど、『もうちょっとインパクトが欲しいよなぁ』と思っていた。
けど、仕事中に考えてしまうと、また怒られてしまうし、ただでさえ怪しい行動をしているのに、これ以上怪しまれることは避けなければならない。
作業をしながら、時々頭をよぎるんだけど、そんなときは飲み物を飲んだり、必要もないのに資料室に移動したりと、忙しなく動いていた。
そして週末。
今回は連泊と言うこともあり、着替えがないとかなりまずい。
かと言って、着替えを持っていくと、さらにまずい状況になってしまうのは、簡単に予想できる。
『どうしよう… 仕方ない。 いったん帰ってくるか』
そう思いながら、ボストンバックを玄関に置き、事務所に向かった。
その日の定時直前、作業を終え、帰宅準備をしていると、木村君が私の横にファイルを置いてきた。
「悪い。これ急ぎなんだ」
いきなりそう言われてしまい、思わず「えー…」と言ってしまった。
「嫌か?」
「用事がありまして…」
「毎週何してんの?」
「プライバシーに関わるので…」
口ごもりながら言うと、木村君は「ちょっと来い」と言い、応接室へ。
『そこ嫌い』と思いながらも、追いかける事しかできず、ため息をつきながら中に入り、木村君の向かいに座った。
「最近行動が怪しい。何してんの?」
そう聞かれ、何も答えられないでいた。
「たまに仕事も上の空になるし、怪しい行動と関係があるのか?」
「すいません… 以後気を付けます…」
木村君は「そうじゃなくて」と言いかけた後、ため息をついた。
「仕事に差し支えてないから、俺から何かを言う権利は無いよ? ちゃんとしてるし、作業も早いし、売り上げは伸びてる。 経営者目線で言うと文句はない。 だけど、個人的に言うと最近本当におかしいぞ?今まで真っ先に帰るなんて無かったろ?」
「…そうですね」
それ以上何も言えず、黙ったままでいると、木村君は大きくため息をついた後、「あのファイル、全部片づけてから帰れ」と…
「今日はどうしても用事が…」と言いかけると、木村君は「命令」とだけ。
仕方なくデスクに戻り、落ち込んだ気持ちのまま作業を再開した。
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