第770話 この後、めちゃくちゃ

 人であることと、神であることは、両立するだと。

 そんなことがありえるのか。


「神っていうのは、人を超越した存在なんじゃないのか」


「あはは。それだと、人と神にはっきり上下関係があるみたいじゃない」


「違うのか? いや……そうか。俺は自分でも気付かないうちに、神が上で、人が下だと思い込んでた」


「真実は違う。ファルトゥールも言ってたでしょ? 人と神は立場が違うだけ。どちらが上とか、下とか、そういうのじゃない。たまたまこの世界においては、神の方が個の力でできることが多いってだけ」


「だから、お前は人でありながら神でもあるってか?」


「そういう風に考えることもできるってこと」


「……俺も同じだと?」


「あなたはこれまでの経験から、神を毛嫌いしてるでしょ? だから、自分が神であると言われて動じてしまった。だから、その認識を改められればと思ったの」


「神は悪じゃないって? それはなんというか……けっこうエネルギーがいるな」


「でも、必要なことよ。これからあなたが進む道は、人と神の狭間にある。自分が何者であるかを見失わないためにも、知っておくべきじゃないかな」


 俺は、朱音のそっと手を握る。

 朱音も、しっかりと握り返してくれた。

 俺がやろうとしていることは、ただ人であるだけじゃ成し遂げられないということだろう。


「俺は今まで、人であることに誇りを持ってた。人だからこそ、人の為に、人の世界のために、神を倒せるって」


「うん」


「でも、心のどこかでは限界を感じることもあった。〈妙なる祈り〉とか、根源粒子とか、いろいろ世界の真理に触れたけど。マーテリアにも、ファルトゥールにも、結局勝てなかったし」


「うん」


「でも、それも当然だったんだな。俺は知らず知らずのうちに神を遠ざけてた。どれだけ強くなっても……神を倒せるくらい強くなろうとしていても……自分は神じゃないって、ミイラ取りはミイラにならないって、思ってたから」


「うん」


「俺も、変わないといけない時が来たのかもな」


 朱音の額が、俺の後頭部に押し付けられる。


「だいじょうぶ。心配しないで。神であることを認めても、あなたは人のままよ。人には無限の可能性がある。その身のまま神になることだって、できる」


「ああ」


 まだ実感は湧かないし、心から認めるまでには、多くの時間がかかるだろう。

 だって、自分が神であるなんて、本当は認めたくはないから。

 それでも、為すべきことの為に必要なら、認めなくちゃならない。


「そばにいるから」


「朱音」


 俺を抱きしめる朱音の腕に、力が入る。


「ね、蓮。久しぶりに、する?」


「えっ」


 朱音の白い手が、俺の服の中に滑り込んでくる。

 現代日本に戻っていた二年間。その時の思い出が蘇ってくる。

 それに、さっきから背中にあたっている柔らかい感触は、どうにも無視できない。

 首筋に、朱音の吐息が触れる。

 すでに、俺の股間ははちきれんばかりに怒張していた。


「ふふ。準備完了じゃん?」


 朱音はするりと腕を外し、俺の股の間に座り込む。ちょうど机に隠れる場所だ。


「おいおい……」


「好きでしょ? こういうの」


「……好きです」


 朱音は俺のズボンのチャックを口で開けると、そのまま俺のマグナムを取り出した。

 それから何が起こったかは、とても俺の口から言えるようなことではなかった。

 まぁ、めちゃくちゃセックスしたんだけどな。

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