第716話 これからの世界の話をしよう
グランオーリスの王都アヴェントゥラ。
その王宮にて、俺は会議に出席していた。
魔王を倒したということで、発表することや、色々と話し合わなければならないことがあるらしい。世界的に。
「グランオーリス王ヘリオス・レイ・オーリスの名代として、王女である私セレン・オーリスがご挨拶をいたします」
セレンの淡々とした声が響く。
「今日より十日前。およそ一年に渡る魔王との戦いに終止符が打たれた。まずはこの歓喜と感動を、各国代表の皆様と分かち合いたい」
王宮のホールには、百人に及ぶ各国の首脳達が集まっている。楕円状に並べられた卓をみんなで囲っている感じだ。
今まさに、会場内には拍手が響いていた。
「世界に満ちていた瘴気は晴れ、人々に希望が戻った。我々にはそれぞれ意見の食い違いや、諍いなどもあるでしょうが、今はただ平和の訪れを喜びましょう」
セレンは立派に王の代理を務めている。
まだ十五歳だというのに、国家の代表達の注目を一身に集めてなお堂々としていられるなんて、肝っ玉が座っている。
とはいえ、場の空気は和気あいあいといった風じゃない。
ただ喜ぶためだけなら、世界中の要人が一堂に会する必要はないからだ。
「前置きはそれくらいにしておくアルよ」
ピリピリとした空気を象徴するような声が、ソウ・リュウケンの偉そうな口から発せられた。
「今日ここに集まったのは、世界のこれからを話し合うためアル。心にもない社交辞令を聞くためではないアルよ」
そうだそうだと、何人かのおっさん達が野次を飛ばす。グレートセントラルに与する国家の奴らだろう。
「まぁ落ち着けよリュウケン殿。社交辞令ってのは円滑なコミュニケーションに不可欠なものさ。それに、王女様のお言葉には心がこもっているだろう? その証拠に、俺も平和を取り戻せた喜びに打ち震えている」
ハンコー共和国のネルランダー首相が涼しげに言うと、その他の代表達も異口同音の賛同をした。
「フン。何でもいいアルが、さっさと話を進めろアル」
相変わらずこのおっさんは偉そうだな。すこしはネルランダーを見習ってほしい。
「ま~ま~。そう焦らないでさ~。魔王は倒したんだし~。ゆったりやろ~よ~」
ジェルドの女王アルドリーゼが、眠たそうな仕草で間延びした声を出す。
彼女はマッサ・ニャラブ共和国の代表としてこの場に参席している。今日に限って、その腕にアナベルの姿はない。
「では」
セレンが円卓を叩く。
「まず最初に申し上げておきたい。魔王を倒し瘴気は消え去ったけど、すべてが元通りというわけにはいかない。もちろん、この場の誰も、魔王出現の前に戻れるなんて考えていないと思うけれど」
会場の温度が更に下がった気がした。
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