第636話 モテたいっすね
その後。
フランクリンとカマセイ、そしてなにより俺の活躍によって、ヨワイの街における暴動は鎮静化した。
とはいえ一時的なものだ。まだ火種はくすぶっている。
他の街では暴動が激しさを増していると聞くし、このままでは本当にドーパ民国転覆ということにもなりかねない。
そうなれば、親コルト派の思い通りだ。それは避けたい。奴らは己の正義を掲げてはいるが、やっていることはただのテロだからな。
さて、メイはどうなったかというと。
「申し訳ありません主様。目標を逃してしまいました」
暴動が落ち着いた頃に戻ってきたレオンティーナは、開口一番その場に跪き、深く頭を垂れた。
「見つけたのに、逃したってことか?」
「はい。彼女はすでに親コルト派の庇護下にあり、今の私では捕らえることができないと判断し、戻ってまいりました」
「そっか。ご苦労だった。それで、メイさんの居場所はわかるのか」
「探知を仕掛けておきました。私のスキル『シーカーポッド』は、目標を追尾し続け、位置を報せてくれます」
「効果時間は?」
「三日ほどです」
「よし。でかした」
俺はレオンティーナの手を取って立ち上がらせると、そのまま宿に向かって歩き出す。
「今日はもう休むぞ。折れた腕を早く治してもらわないといけないしな」
「申し訳ありません。守護隊の一員として、面目次第もございません」
「名誉の負傷ってやつさ。謝る必要も、卑下する必要もない」
俺はレオンティーナをお姫様だっこする。
「あ、主様」
「今回は、俺がじきじきに労ってやる」
レオンティーナは頬を赤らめ、俯いてしまう。
なんつーか。チョロくないっすか。
たしかに二年前から守護隊の中には秋波を送ってくる子もいた。レオンティーナもその一人だ。とはいえ、俺が彼女にしたことと言えばおっぱいに顔をうずめたくらい。
そんなことで惚れられるなんて、普通に考えてありえない。
まぁ、アルバレスの守護隊っていうくらいだし、俺の為だけに結成された美少女軍団だから、異性として俺に惹かれるのもおかしなことではないのかな。いややっぱりおかしいだろ。
あれだ。俺が超絶イケメンだから、ということで納得しよう。そうではないと説明がつかない。それが、帰納法で導き出した答えだ。
宿に帰ってレオンティーナをベッドに寝かせた後、俺は部屋を尋ねてきたフランクリンと話をすることなった。
「今回の暴動ですが、親コルト派の企てで間違いないようです」
フランクリンは悄然とした様子だった。
「連中とメイさんの繋がりについてはどう思う?」
「信じたくはありませんが……間違いなく深く関係しているでしょう。メイ嬢は自身のスキルを把握し、その力を自らの欲望を満たすために利用していた」
「メイさんの欲望ってのは、一体何なんだ?」
「なんてことはありませんよ。男にモテたいという、一般的な女性が抱くごく普通の望みです」
男にモテたいが為に、洗脳まがいのことをするか。
まぁ。気持ちは分からなくもない。
俺も転生前にそんな力を持っていたら、クラスやバイト先の女子全員に使っていただろうからな。
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