第503話 門番をやっておるんじゃ
さて、夜まで時間がたっぷりある。
この前きた時にはできなかったことをしよう。
何かって? 決まってる。
アカネを探すことだ。
そしてやってきたのは、学園の貴族寮である。
新魔法学園での貴族寮も、かなり立派な佇まいだ。やっぱり貴族ってのはいい家に住むものなのだろうか。いや、貴族もピンキリか。
「待て!」
門に近づいた俺を呼び止めたのは、大柄な厳めしいおっさんだった。
「誰だお前は。ここは貴族の子女のみが立ち入ることを許される貴族寮だぞ」
「門番か?」
「ああそうだ。お前は?」
「俺はロートス・アルバレス。ヒーモ・ダーメンズに用があってきた」
「ダーメンズ子爵家の坊ちゃんに?」
露骨に変な顔になる門番のおっさん。
「お前のような素性の知れん者を入れるわけにはいかん。帰った帰った」
「そうかい。なら、ここで待たせてもらうよ。そろそろ登校する時間だろ」
「ダメだ!」
「なんでだよ」
「門の前で出待ちなど許されるか。そういう品のない行いを監視するのも警備の役割だ」
「ケチ」
「なんとでも言え」
おっさんは背負っていたバルディッシュを抜く。
「さぁ。こいつでぶった斬られたくなかったら、さっさと去れ!」
「イヤだって言ったら?」
「殺してやる!」
何の躊躇もなかった。
おっさんは一直線に突っ込んできて、バルディッシュを振り下ろす。
「ええ……」
俺はそれを指で挟んで受け止めた。ちょうど紙切れをつまむような感じ。
「な、なんだとっ!」
「出待ちくらいで殺すなよ。頭おかしいのか」
おっさんは全力で武器を押し引きするが、バルディッシュは微動だにしない。俺の指の力が強すぎるから。
「このっ! 離せ!」
「無理」
このおっさんの倫理観がぶっ飛んでいるのか。あるいは戦争によって人々の心がすさんでしまったのか。
いや、前にもこんなことあったし、案外こういう人もいるのかもしれない。
世の中にはいろんな人がいるからな。
「しかたない。ちょっと眠ってろよおっさん」
俺はおっさんの腹にパンチをいれる。
「ウッ」
と悲しそうな声を漏らして、おっさんは気を失い倒れてしまう。
よかった。
直後、貴族寮の正門が音を立てて開かれる。これが漫画なら、ゴゴゴゴゴと擬音が描いてあるところだ。
開かれた門の向こうには、大勢の学生が整然と列をなしていた。ざっと百人はいる。あれ全部貴族か。
「門番が倒れているぞ!」
誰かが叫んだ。
「門番のおじさんが!」
「あの男がやったんだ!」
こりゃ、まずいところを見られちまったな。
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