第473話 自主規制
俺は咳払いを漏らす。
「それで、俺がジェルドの里に行ってる間、なんかあったか? エカイユの連中とかさ。どうなった?」
「とりあえずはなんとか解決したのです。ご主人様のおかげで、あの場は丸く収めることができました」
「そいつはよかった」
ジェルド族が介入しなかったこと。そして人間である俺が姿を消したことで、エカイユも落ち着きを取り戻したのだろう。
「でも、課題は残っているのです。エカイユ達はボク達に協力してくれるとは言いましたが、それには条件があると」
「条件?」
「エカイユ一の戦士に、決闘で勝つこと」
ええ。
「そりゃまたわかりやすい条件だな」
「エカイユは個人の強さに価値を置く種族だから。弱い者に従う気はないってことだろうね」
そう言って、ルーチェは俺の水で喉を潤す。
「うーん。俺の強さはあの時に見せつけたつもりだったけど、それじゃだめだってことなのかな?」
「ロートスくん、人間だもんね」
「そういうことだな」
いくら強くても、人間には従わないだろう。
「ボクが戦ってもいいのですが、反対されてしまって……」
「そりゃそうだ。獣人にとってサラは大切な盟主様だからな」
「そういうことじゃ……単に頼りないからだと思うのです」
しゅんとするサラ。そんなサラの頭を撫でてやることにした。
「どちらにしても、盟主自ら戦うなんてことはない方がいい」
他に何かいい方法はないものか。
俺の視界の端に、アイリスが入り込む。
あ。そっか。
「アイリスが戦えばいいんだよ」
「わたしくですか?」
「そうそう」
きょとんと首を傾げるアイリス。
サラがぽんと手を叩いた。
「なるほど。アイリスが獣人を装うってことですね? たしかにアイリスなら耳としっぽを生やすくらいなんてことないのです。ね?」
「もちろん可能ですわ」
アイリスはアデライト先生の『千変』をコピーしているからな。そもそも今の姿がスキルによって変えられたものだし。
「アイリスなら強さも申し分ない。エカイユ最強の戦士くらい赤子の手をひねるより簡単だろう」
「あら。わたくし、随分と信頼されているのですね?」
「……そりゃーな。武道大会で一回戦ってるし」
それだけじゃないんだけどな。アイリスは全部忘れてるから、俺からの信頼も不思議にかんじるのだろう。
当然、アイリスにとっちゃ俺は赤の他人だ。
そんな俺の変化を、サラとルーチェは見逃さなかったらしい。
「ご主人様。元気出すのです。アイリスもきっとすぐ思い出すのです」
「私やサラちゃんだってすぐだったでしょ? アイリスも同じだと思うよ? ロートスくん、存在感すごいし」
「ああ。ありがとな。二人とも」
「ふふ。慰めてほしくなったらすぐに言ってね」
ルーチェはいたずらっぽい笑みを浮かべる。非常に魅力的である。今すぐ慰めてほしくなったわ。
「あ、ちょっと待ってくださいメイド長。次はボクの番だって、この前約束したじゃないですか」
ん? 何の話だ?
「そうだね。でも結局はロートスくんの意思を尊重しようって話だったでしょ?」
ルーチェはしたり顔でおっぱいを強調する。
「むむ。ボクだってこの二年でちょっとは成長したのです」
サラはローブを脱ぎ、ブラウスを押し上げる控えめな膨らみを見せつけた。
ルーチェの美乳もよし。
サラの十二歳にしては発育のよいシンデレラバストもよし。
「なるほど。僭越ながら、俺は選べる立場にあるってことだな」
そういうことなら話は早い。
「俺は別に、二人同時でもかまわないんだぜ」
「えっ」
「あ、そうですね。その手があったのです」
そうだろうそうだろう。
俺はタイマンだけじゃなく、集団戦でもイケるってところを見せてやらないとな。
「なぁアニキ。いったい何の話をしてんだ?」
「お前にはまだ早い話かな? いや、でもサラの初めても今のロロくらいだったか」
いや、やめよう。
このまま続けているとどんどんディープな話になっていきそうだ。
話題を変えるとするか。
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