第213話 新たなる出発

「先輩。考えってのはなにっすか?」


『ひとまずサラちゃんを王都まで連れ帰ってください。学園の知識と技術ならば、サラちゃんをなんとかできるかもしれません』


 それはありがたい。

 先生が言うなら期待大だな。


『あと、マクマホンという男性もこちらで保護しましょう。帝国の有力貴族ならば、色々と使いようはあります』


 なるほど。そいつはいい。

 人質ってわけだ。


「俺は先生の考えに賛成だ。みんなも、それでいいか」


 反論はあがらない。


「よし、じゃあ王都に戻ろう」


 当面の目標はそれだ。


「マスター。よろしいですか?」


 アイリスが小さく手を挙げる。


「なんだ?」


「来た時のように、空を飛んで帰るというわけにはいきませんわ」


「まじで?」


「わたくしを狙撃した魔法。飛来した方角を見るに、マッサ・ニャラブ共和国との国境から放たれたものだと思います。策もなく飛べば、また同じ目に遭ってしまいますわ」


「でも、さっきは飛んでただろ?」


「一時的に対空魔法を無力化していたんすよ。シーラ達が、ロートスを助けるために危険を顧みず国境まで行って、やってくれたんっす」


 シーラ達の姿が見えないと思ったら、そういうことだったのか。


「そうなると……帰り道は大変な道のりになるね」


 ルーチェが細い顎を押さえて言う。


「亜人同盟との戦争が始まった以上、王国軍は間違いなく亜人を狙う。サラちゃんもそうだし、アイリスだって見る人が見れば人間じゃないってわかるし」


「ウチもっすね……」


「それに、私とロートスくんだって顔が割れてる。ガウマン侯爵に見られちゃってるでしょ?」


 そうだった。

 やばいな。たしかにルーチェの言う通り。


「だからって王都に戻らないわけにもいかない。腹を括るしかないぞ」


 俺はみんなを、一人一人見る。


「わたくしはいついかなる時もマスターの命令に従いますわ」


 アイリスが当然とばかりに微笑む。


「そっすね。ウチもロートスと離れるつもりはないっす。サラを助けるためにも」


 ウィッキーは俺の腕を取り、そして再びサラを見上げた。


「うん。私には、思うところがあるから……」


 ルーチェも神妙に頷く。


「決まりだな。シーラ達が戻り次第、王都へ出発だ」


 みんなが賛同の声をあげてくれる。


『私からも逐一、情報を送ります。長い道のりになるでしょうから、どうかお気をつけて』


「ありがとうございます。先生」


 よし。

 頑張るぜ。


「精々ムダな努力をするんだな……どうせ運命は変わらないのだ……」


 マクマホンがブツブツ言っているのは無視でいいだろ。

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