第30話 これがかの有名なのじゃロリ

「まぁ、君のような貧乏人じゃ臆病になっても仕方ないか。どうしてもというなら、吾輩のパーティに入れてやってもいいけど」


 お前その見た目で一人称吾輩なのかよ。


 俺はパーティのメンバーを見てみた。彼らの表情はお世辞にも明るいとは言えず、後ろ向きな表情ばかりだ。


 なるほど。この白髪頭がなまじ優秀だから、苦戦していた連中が尻馬に乗ろうとパーティを組んだわけか。試験でいい結果を出すための知恵だわな。


「おいお前! 若様が誘ってくださっているのじゃ! 二つ返事で承服するのが礼儀じゃろう!」


 いきなり俺に詰め寄ったのは、サラと同じくらいの歳の少女だ。白髪頭の従者かな。


「ご主人様、どうするんです?」


 サラが耳打ちしてくる。


「渡りに船だ。ご一緒させてもらおう」


 正直こいつに馬鹿にされるのは構わない。と言うかどうでもいい。俺は目立ちたくないし、こいつの影に隠れてメダルだけもらうことにしよう。

 イキールの時と同じ作戦だ。


「こら! なにをコソコソ話しておる! はよう返事をせんか!」


 従者は高い声で喚く。長い黒髪と黒い瞳は、どこか日本人を思わせる容姿だ。着ている服もなぜか着物っぽい。俺はなんとなく従者の少女に懐かしさを覚えていた。のじゃロリだし。


「じゃあ、お願いするよ。俺はロートス。こっちは従者のサラだ」


「よろしく」


 そういうと、のじゃロリ娘が満足げに頷いた。


「それでよいのじゃ! 若様、また家臣が増えましたな!」


「うるさいぞ。出しゃばりクソガキ」


 白髪頭が、ドスの効いた声を出した。


「あ……申し訳ありませんですじゃ……」


 のじゃロリは途端にしゅんとなり、黙り込んでしまう。


「すまないね。うちの愚か者が耳を汚してしまって。帰ったら棒で叩いておくから、許してほしい」


「いや、そこまでしなくても」


 流石にドン引きだ。こんなことで折檻をうけるのも可哀想すぎる。


 こいつはあれだな。マジでクソな貴族だ。

 イキールもいけ好かない奴だったが、あいつには貴族としての誇りがあった。戦闘不能になった騎士を守っていたし、助けに入ったエレノアに感謝を述べていたしな。

 だがこいつはだめだ。出会ったばかりだがわかる。自分の身分を笠に着て、威張っているだけのゴミクズだ。


 ま、俺には関係のない話か。


「これで六組十二人のパーティだね。これなら楽にメダルを手に入れられるだろう」


 白髪頭がニヤリと笑う。


「じゃあ早速行こうか。ほら君達、さっさと霧の中に入るんだ」


 自分から入れよ。とは誰も言わない。新入生たちは無言で顔を見合わせ、渋々といった様子で霧の中に入っていく。


「さぁロートス。君も早く。吾輩はその後に続く」


「はいよ」


 まったく、臆病なのはこいつの方じゃねぇか。


「サラ、気をつけろ。何が待ってるかわからん」


「はい。ご主人様も」


 俺はサラの手を握り、霧の門をくぐった。


 そして、驚くべき光景を目にすることになる。

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