第38話 決着
戦い見守っている【パルセノス】のメンバーたち。ローゼはシンシアとセルジュの方を振り返り、
「ちょ、ちょっと負けるどころか押し返し始めてない」
「そ、そうね。信じられないけど、そうみたいね」
ローゼの問いかけにシンシアがそう答えると、
「とんでもないですね彼ら、規格外にも程があります。いったい何レベルなんでしょうね」
【パルセノス】のメンバーたちは直人たちのレベルはそれほど高くないと予想していた。それは攻撃の速度や動きに対して火力が出ていない為だ。あれだけのモーションであればかなりの火力が出るはずなのである。
しかし現状では火力が出ておらずゴリラ―ドよりも低いレベルであると窺える。その推測から考えられるレベル差であれば、すぐに終わっていてもおかしくはない所なのだが、それどころか今現在も互角に戦っているのだ。その予想の範疇を越えた状況に、さらに直人たちへと興味を持つ三人だった。
【パルセノス】のメンバーたちが話している間にもGさんたちの戦いは続いていた。三人の猛攻撃の前に押されるゴリラ―ドだが、レベル差もあり倒すことができないでいた。
そんな状況Gさんたちは、
(戦況では押しておるんじゃがのぉ。倒しきれん)
(困りましたね、決め手に欠けます。どうすれば?)
(こいつ固いっス!もう疲れたっス。カイ先輩まだなんスか?)
三人がそれぞれがそんな事を考えていると、回復を終えたカイが直人の元へとやって来て隣に立つと、それに気づいた直人はカイを見て薄っすらと笑い、
「遅かったな、もう大丈夫か?」
「あぁ、待たせたな、じゃ行って来るわ」
カイはそう言い直人に背を向け軽く手を上げ、戦うGさんたちの方へ歩いて行く。カイが近づいて来た事に気づいたGさんが、
「随分と遅かったのぉ。サボっておったんじゃなかろうな?」
と笑みを浮べながら言うとカイは、何も言わずに笑みだけをGさんに返した。
Gさんの声で振り返ったテルとクラリッサは嬉しそうな笑みを浮かべ、
「遅いっスよッ!超大変だったんスからね!」
「本当ですよ、これは何か奢って貰わないとですね」
クラリッサの言葉にカイは苦笑いを浮かべ、
「はははっ、お手柔らかにな。まあ、冗談はそのぐらいして」
そう言い終えるとカイの表情は真剣なものとなり続けた。
「倒してしまうぞ!」
それを聞くとGさんたちの表情も真剣なものとなり、それを合図の様にカイが、
「全力で行く!ドラゴニック・レヴォリューション発動!」
言い終えると同時に飛び出し、ゴリラ―ドに攻撃を仕掛けるカイ。それに対してゴリラ―ドも引くことなく飛び出して迎え撃つ。
戦うゴリラ―ドとカイ、やはりと言うべきか一対一ではゴリラ―ドに分がある。だがカイは一人ではない、カイの後から続いたクラリッサが突きを放つ。カイと戦っているゴリラ―ドは反応が遅れ、直撃ではないもののダメージを受けてしまう。
ゴリラ―ドは邪魔なクラリッサを狙おうとするがカイの攻撃が激しく、カイを無視してクラリッサを狙う事が出来ない。仕方なくカイを先に倒そうとするとGさんとテルの攻撃が来て、カイに集中することも出来ない。
「ちょろちょろ群れやがって!」
ゴリラ―ドはカイたちの連携よる猛攻撃により、徐々に傷を増やしながら押されていく。ダメージと疲労からゴリラ―ド息は乱れ、集中力を失い攻撃は雑となものとなり、隙が目立ち始めていた。
「今だ! 一気に押し切るぞッ!」
カイがそう言うとゴリラ―ドの表情には焦りが浮かび、後退しようとするがカイたちがそれを許さない。
「逃がしません!」
下がろうとするゴリラ―ドの先を読み、次々と鋭い突きを放ち牽制する事で後退の妨害をするクラリッサ。
「邪魔だそこをどけぇッ!」
それでも強引に後退しようとするゴリラ―ド。クラリッサの攻撃を凌ぎ突破しかけたゴリラ―ドの前に足を大きく開き、膝を折る事で重心を落とし居合の構えを取るGさんが立ち塞がった。
間合いに入ってしまい焦るゴリラ―ドは間合いから出ようとするが、
「既に遅いわぁッ! 燕返しッ!」
体がブレた様に十の残像から放たれるほぼ同時の十連撃。
「ぐうあぁぁっ」
燕返しを受けゴリラ―ドの体から鮮血が散る。その痛みから叫び声を上げるゴリラ―ドに、クラリッサとテルが休む暇を与えず襲い掛かる。
クラリッサとテルに攻め立てられるゴリラ―ドの表情は、ダメージと疲労からだろう、とても苦しそうである。
ゴリラ―ドの様子から今だと、カイが刺突・風天絶牙を発動する。カイの剣に風が集まり始める。その様子に気づいた直人が走る。そんな間にも集まった風は収縮し始め、回転速度が上がっていく。
それを見て直人が走り出す。直人はゴリラ―ドと戦うテルの少し後ろにたどり着くのと同時に雷の槍を出し、テルを目掛けて投げ放つ。投げた雷の槍がテルを貫いた。次の瞬間、テルの近くに分身が現れ貫かれたテルが消える。
突然テルが消え、自分へと迫る雷の槍を見たゴリラ―ドは目を見開き、
「なっ!」
突然の事に何の反応も出来ないゴリラ―ドを雷の槍が貫く。ゴリラ―ドの全身に電気が流れる。
「ぐわああああぁっ」
苦しむゴリラ―ドに刺突・風天絶牙を発動したカイが迫る。
「これで終わりだ! 刺突・風天絶牙!」
放たれた刺突・風天絶牙がゴリラ―ドの喉に突き刺さる。回転する風の刃がゴリラ―ドを貫き吹き飛ばした。首から上が消し飛んだゴリラ―ドは崩れ落ちた。
皆が倒れたゴリラ―ドを眺めている。死んでいる事を確認したのだろう、皆の表情が緩み始める。
「倒したようじゃのぉ」
最初に口を開いたのはGさんだった。それに対して皆が相槌を打つ中、
「いやいや、おかしいっスよ。何かいい感じに終わらせようしてるっスけど、フレンドリーファイアが起こってるっスからね。俺、貫かれたっスからね!?」
抗議し始めたのはテル。全身を使い抗議するテルに、カイが肩を叩き言う。
「まあそう言うな。直人もお前のギフトを信じてのやったんだろ。実際、無傷な訳だしよ」
「そうじゃぞテル。結果オーライじゃ!」
カイに続き相槌の打つ様に言うGさん。二人に言われても納得いかない顔をするテル。そんなテルにクラリッサが。
「テル。あなたのギフトのお陰でゴリラ―ドの足を止められたのです。勝利の立役者なのですから、そんな顔しないで」
紫の髪をなびかせ、微笑みながら言うクラリッサ。女優の様な美しいクラリッサにそう言われ、
「そうっスかねぇー」
照れながら言うテル。そんなテルに直人が、
「そう言う事だ。良かったなテル」
といい感じに声を掛けた。
「いやいや、張本人の先輩が言うのはおかしいっス! 納得いかないっス!」
そう言い直人に詰め寄るテル。直人はテルに俺が悪かった悪かったと謝り宥める。仲間たちはそんな二人の様子に笑みを浮べるのだった。
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