第67話 朝の目覚め。

 エインセルは不思議な子。

 色んな事を言い当てた。

 誰かが家の部屋でコッソリ食べたお菓子を言い当てたり、秘密の日記の中身さえ言い当てた。

 さも傍で見ていた様に。

 学校での成績も常に一番。

 教室の皆んなの個人情報も全て知っていた。

 村人全員の心の内さえも把握していた。


 だから独り閉じ籠る様になった。

 他人の心の内が把握出来るのは恐ろしい事。

 エインセルは皆んなからモンスターと呼ばれて恐れられていた。


 だから独り部屋に閉じ籠もった。


 でも他人の誰も居ない所での在り様はどんどん流れ込む。

 まだまだ小さい小学校低学年の少女には酷な日々。


 両親のジュセフとメアリーは娘の悲劇を悲しみ心を痛める毎日を過ごす。

 大きな屋敷の中でも人目に晒されない場所へとどんどん愛する娘を避難させる。

 最後に辿り着いたのは分厚い石垣で囲まれた地下。

 地下を改装してエインセルの好きなゴシック調の華やかな部屋を作った。

 他人の発する感情や裏側の行動に触れない様にエインセルの友達も限られた友達だけに限定された。

 それは物言わず、感情も存在しない人形達。

 華やかな部屋の中は様々な人形達で埋め尽くされた。


 そこはエインセル自体が人形に埋もれて何処に居るのか分からない程に人形達に埋もれる部屋となった。


 地下室は代々続く名家の屋敷である故に一族繁栄を願った先祖達の思念を込めた呪印も眠っている。


 あの朝、エインセルは風の渡る丘に立つ禍々しい悪鬼の群れとドクトル・ジゴバの腐臭漂う邪気で目覚めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る