第32話 地下回廊の果てに。

 月詠と5名の土御門一族がオケラ様にお仕えしている事は分かった。

 その経緯も共有して貰った。


「でオケラ様、犬千代丸様は何処に居られるのですか?」

「私は犬千代丸様に御目通りさせて頂きに参りました」

「犬千代丸様は何処いずこでしょうか」


 ちるなの掌の約束のどんぐりが鈍く光っている。


「犬千代様はシャングリ・ラに向かわれました」

「この洞窟回廊はシャングリ・ラに向かう唯一の道であり守りの門、この先を進めばシャングリ・ラに到達できます」

「私たちはこの回廊を守る役目があるのでここを動けません、土御門を一人道案内役に付けますのでシャングリ・ラに向かって下さい」


「有難う御座います。月詠様またお会いしましょう」


 月詠と土御門の面々と合っていた場所は回廊の中で犬千代様が居間としていた場所、本来ならあの不思議な御影石も

 この居間にあった。

 でもその御影石も姿を消していた。


 土御門の柚葉ゆずはが案内役を勤めてくれた。

 公家の雅さ身に纏う柚葉のお陰で迷宮の様に入り組んだ回廊を迷う事なく進むことが出来た。

 景色のない地下回廊を時間にして3日間の道中となった。


 その瞬間は唐突にやって来た。

 ちるなは幾つも分岐、起伏も降り登りと繰り返し位置感覚も高低差感覚も全てを失っていた。

 ただただ柚葉ゆずはの後に従い歩く。

 柚葉ゆずはは口数少なく、ほぼ黙々と歩く。

 ある分岐の手前の小部屋の入り口で柚葉立ち止まり、おもむろに小部屋の扉を開けて中に入る様に手招く。

 ちるなは従い扉を開けた。


 眩い光が射し込んできて目が眩む。


 3日間も暗闇の中だったので視力が戻るまで時間が掛かる。


 扉の向こうは広大な原野を遠望する景色だった。


 地下回廊の扉は断崖の中腹にポカリと開いた窓の様な扉だった。

 足元を観ると幅50センチもない道が断崖を這う様に続いている。


 眼下の原野から噎せ返るような緑風が吹き上がってくる。


 これがシャングリ・ラ!

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