第79話 尊きお方の独り言。
尊きお方(読み手のあなた様でもある)のここに来る経緯の説明のための独り言となります。
〜○〜
黒い影は大襖前までやって来ていた。
「ここが妖怪の里なんだね〜雰囲気あるね、ティル・ナ・ノーグ島にはまだまだ未踏の場所があるもんだ」
黒い影は大襖の前まで来て独り言を呟く。
最近、いや〜ずっとね連夜の残業生活。
夏場は特に疲れが激しいけど此方に来ると疲れも何も吹き飛ぶね。
会社ビル不夜城を脱出したのはいつもの22時過ぎだった。
外に出ると湿気を含んだ熱風が〈もわ〜〉と吹いてくる。
家に帰り着くまでに体力は更に削られ風呂で汗を流してスッキリしても目減りした体力は戻らない。
この疲れ切った体でミラクルジャンプをするのは至高のひとときなんだ。
疲れ切る日常の現在と異世界であるティル・ナ・ノーグ島との行き来を自在に操る事が出来るようになった僕は少しづつ大昔、途方も無い大昔の記憶を頭の中の記憶の扉を開けるが如くに取り戻している。
僕は故意に自らの記憶を封印したようでその封印が解けるのをモリガンいや、統べるモノ、いいいや、ちるなが待っていてくれた。
そのちるなが大襖の向こうから手招くように会釈する。
大方の説明は受けていたけどやはり妖怪の里は凄味がある。
ハリウッドの特殊メイクでなく、本物の造形が目の前に展開されている。
僕自身それらを遥かに超越する力を持つ存在のようだけど平凡な現代の存在が半分ある我が頭では仮想現実ぽく此方の異世界ティル・ナ・ノーグ島での出来事は整理されている。
仮想現実世界、簡単に表現すると夢の世界なんだけどね。
覚えている夢でさえ朝目が覚めたら時間が経つにつれどんどん薄れて忘れてしまう朧げな出来事。
ところが生まれついてより夢の中に多重の世界を共有する感覚を持っていた僕はある日菊の香りに誘われてその多重世界の扉を開けて中を確かめる冒険に出かけることにしたんだ。
それは現在よりもリアルで馴染み深い懐かしさに満ち溢れていた。
現在に戻ると平凡な日常。
やはり夢の世界と安全サイドに整理したがる思考を吹き飛ばしたのは現在に現れたちるなの存在。
そのちるなに先導されて訪れる事となった妖怪の里。
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