第77話 進化。

 いよいよ本線が始まります。

 

 〜○〜 


 ちるなが紹介を受けて挨拶をする。


 妖怪の皆様方、内侍ちるなと申します。

 こちらに並ぶはドルイドマスター 森羅万象、地獄の執政官 夢魔公爵ギヒノム卿、自分自身怪異エインセル、風魔小太郎、そしてエミリア、皆、尊きお方の直属のメンバーとなります。

 尊きお方の命を受けて今般、ゆうや様をお迎えしそのお仲間である妖怪様方を彼の地にお連れする役目を担っております。

 小豆公望様の説明の通り尊きお方が隠遁されているシャングリ・ラへの道は途方も無く険しい道程です。

 道程が険しいのは天然の要害に加えて人為的な罠が多数配されている事もあります。

 この道程を踏破するには膨大な時間と万を超える人員で戦を仕掛ける程の大掛かりな取り組みとなるでしょう。

 如何に妖怪様方のお力が甚大でも困難極まりない事となります。


 シャングリ・ラに向かう手立ては他にあります。

 シャングリ・ラが拒まないなら、瞬時に彼の地へと行く事が可能です。


 ゆうや様が居た現代という世界ではもうすぐ丑三つ時となります。

 現代が眠りについたこの時間帯に尊きお方がお見えになります。

 空前絶後のミラクルジャンプでやって来られる時間です。


 〈ギャン〉空間が軋む。

 開け放たれている大襖のずーっと向こうに背に眩い光を浴びながら黒い影に見える人が歩んでくる。

 その黒い影が近ずく程、空気がむず痒く笑い始める。


 大襖に近い妖怪の中に異変を起こすものが出て来る。

 急にジッと硬直したかと思うと悲鳴の様な声を上げる。

 大襖は犬族が警戒のために多く集まっていた。

 その犬族の身体の筋肉が〈ムクムク〉と隆起し腕足が二、三倍の大きさになる。

 耳は大きく垂直に立ち、牙は邪悪な狼の様に鋭く伸び、眼は爛々と黄金色の輝きを宿す。

 まるで満月の月光を浴びて狼男そのものに変幻進化した。

 直立した上背3メータはあるその巨体は標準型の狼男を進化させたウォーウルフ。


 骨女の様子もおかしい。

 〈カラカラ、カタカタカタ〉と骨を振動させて「折れる折れる」と喚くと〈グシャリ〉と崩れ落ちる。

 その骨の山が輝き出して骨を再構成しながら何者かが現れる。

 スラリとしたその容貌では骨のままだが、頭に七色のティアラを抱き真っ赤なマントを翻すその姿。

 自ら名乗る「妾はスケルトーン・クイーン、骨となるものの支配者、粉骨砕身で妾に仕えよ」


 おいおい様子がおかしい妖怪が彼方此方に出てくる。


 逢魔時の様子もまた…。

 元々姿を露わにしたことのない妖怪だがその姿は小さな少女。

 縁側に虚ろな表情でポツンと座る姿に誰も気付かない。

 夕刻夕焼け空が少し進んで薄闇に入る頃、その少女から染み出す妖魔の霧は逢魔時の怪しい異空間のはざまの境界線があやふやとなる。

 その姿から染み出す妖魔の霧。

「わたくしマジックアワーが今起きている不可思議なエーテルの流れを視覚化してあげましょう」


 次々と覚醒する妖怪たち…。

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