マントバ要塞攻略戦 02
「ロドリーグ代将。大元帥閣下から貴官の分艦隊1500隻をもって、マントバ要塞を攻略せよとの命が下されました。できれば、後々使用できるように、余り破壊しないで攻略してください」
「了解しました。直ちに準備にかかります」
艦橋のモニターに映るクレールから、マントバ要塞攻略の任務を受けたルイは任務を受領すると、さっそく準備に取りかかる。
「前回の戦いでは、我が艦隊は戦えませんでしたから、腕がなりますな。とはいえ、余り破壊するなとは、総司令部も気安く言ってくれますな…」
参謀のアナクレト・シャルトー大佐は、前回の戦いで自分達の艦隊が戦線に参加出来なかったことを武人として悔しく思っていたので、今回の任務は嬉しく思っていたが付けられた条件に思わずそうぼやいてしまう。
彼のぼやきを苦笑いで聞いた後、ルイは彼にこう言って作戦を練ることにした。
「まあ、取り敢えずは、総司令部の意向を汲んだ作戦を考えましょう」
「では、要塞の情報を見ながら策を練るとしましょう」
参謀のアナクレト・シャルトー大佐がそう言って、戦術モニターにマントバ要塞の情報をオペレーターに映し出させると、二人はそれを見ながら攻略の策を練り始める。
因みにルイが丁寧語なのは、育ちもあるがシャルトー大佐が自分よりも年上且つ軍歴も長い事に対して、敬意を表しているからであった。
マントバ要塞は200年前にドナウリア帝国の手によって、ロンバディア星系に建設された宇宙要塞である。
惑星ミナノ・惑星ボローナ・惑星ヴェネーシアの丁度中央に位置する北ロマリアの重要防衛拠点であった。
200年前に建設されたとはいえ、防御兵装はそれなりに改修されており、要塞砲は移動式ではない為に柔軟さには欠けるが、それでもその威力は驚異ではあることには変わりない。
弱点といえば備え付けであるために、射角が限られており近づいてしまえば死角に入れるわけであるが、何の対策もなしに近づけば死角に入る前に、かなりの被害を受けることになるのは攻略する者になってしまう。
「僕の考えた作戦は、手頃な大きさの隕石を要塞のある宙域まで持っていき、スラスターをつけて衝突させて、要塞砲を破壊させようというものですが大佐の意見はどうですか?」
「動く艦隊相手なら散開されて、大した戦果をあげられない隕石攻撃も動かない要塞相手なら効果があると小官も考えます。特に今回はその作業を邪魔する敵駐留艦隊もいませんから、準備は容易にできると思います」
「まあ、使い古された作戦ですがね」
ルイの言う通り、要塞攻略に隕石を衝突させる手は、この世界の戦史ではよく見かけるもので特に目新しい作戦ではない。
司令官の作戦を聞いたシャルトー大佐は、そう答えたが一つの懸念を若い司令官に尋ねる。
「問題はそのスラスターが、いくら使えるかですが…」
「それは、僕が今から殿下に伺います。恐らく聡明な殿下のことなので、今回の要塞攻略の為の必要な数を持ってきていると思います」
ルイはシャルトー大佐にそう答えてから、オペレーターに命じて総司令部に通信を繋げさせると、画面に映った銀色の髪と透き通るような白い肌をしたゴスロリ美少女は、皆の手前淡々と以下のようなことを話し始めた。
「その話か…。作戦の詳しい話もしたいから、今から私のへ― ブランシュの会議室に来くるがよい。10分で来い。遅れたら、罰だからな」
彼女は物理的に不可能な条件を一方的に言うと通信を切ってしまった。
30分後―
ルイは会議室からお約束通りに、即行でフランの部屋に連れ込まれ遅刻した罰として、椅子の上に座ったルイの太股の上にフランが乗るという刑を受けていた。
ロイクが見たら<どこが罰だよ! ただの『恋人がいちゃつく』時の座り方じゃないか! 爆発して、死ね!!>と、突っ込むであろう。
フランがこのような大胆(?)な行動に出たのは、ルイが攻略作戦に出撃すればボローナからマントバまで往復で約2週間、ワープを使っても約一週間は会えなくなってしまうからである。
もちろん、戦死すれば二度会うことは無い為に、彼女は勇気を振り絞って彼に甘えておくことにしたのだ。
本当は対面に座って抱きつきたかったが、恋愛精神年齢が幼い彼女にはルイの太股の上に横に座わって頭と腕を彼の体に預けるぐらいしか恥ずかしくて出来なかった。
(暫く会えなくなるから、寂しいのかな…)
そう思ってかれこれ10分ぐらいフランが何も言わずに、黙って自分の膝に座って体を預けてくる体勢を続けている事を受け入れていたルイであったが、流石に準備の事もあるので話を切り出す。
「あの~、フラン様? 要塞攻略の話ですが…」
すると、彼女は瞳孔の開いたヤンデレ目で威嚇しながら、彼の顔を見ながらこう言ってきた。
(※少なくともルイにはそう見えた)
「なんだ! 暫く会えないのだぞ! 作戦の話なんて、もう数分しなくてもいいではないか! 私と仕事どっちが大事なの!!?」
(アナタが命じた仕事ですよ…)
ルイはこの理不尽な質問に、心の中でそう思う。
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