第12話 「学校祭」 その8


 そういえば、今日は部活ってあったんだっけな? 学校祭準備があるのは分かるけど、そっちが終わるのはたしか18:00くらいだし、やっぱ今日は部活はあるなのかな。


 そこで、僕は四葉に聞いてみることにした。


「えっと、確か四葉はメイド用の衣装を作っているって……」


 クラスの女子に聞いてみると、四葉は今、試作衣装を試しに着ている所らしい。あと数分ほどで戻ってくると言われたので待つとしようか。


 しかし、試作を着るのが四葉の仕事とは女子たちもよくやってくれるものだ。なぜなのか、その理由は良く分からないが感謝しておこう、最高だぜ、サンクス!


 ——すると、ガラガラと後ろの扉が開く音がした。


「お、ようやくっ——よつ……ってお前か」


「っいて~~」


 入ってきたのは両足に包帯をぐるぐる巻きにしていた前沢誠也と、その後ろにいたのはニヤニヤと笑みを見せている西島咲の二人だった。


「なんだよ、お前かって……」


「いや別に、予想が期待を裏切ったていう感じでな」


「はぁん……まあどうでもいいや、っていうか——くそ、いってぇ、まじで」


「あら、どこが痛くなっているのかな~~」


 にやりと口角が上がっているのだが、その瞳は笑っていなかった。

 その瞳笑ってるね!! ——じゃないが、反対の事象が起きている。


「お前のせいだよ、この犯z——」


 しかし、前沢が言い放った台詞に周りの女子はギッとした睨みをらみを利かせる。西島咲の本当の恐ろしさを知らないから仕方ないだろうがこの場では彼女に悪態をつく前沢が悪い人間だという状態が出来上がっていた。



「——っち、なんでもねえよ」


「よろしいっ!」


「あ、ははは……」


 二人の険悪なムード且つ出来上がっている優劣の縮図を見せつけられどうにも笑うことしかできなかった。


「んで、二人はどうしたんだよ?」


「まあこいつが勝手に連れ出してな——っ、なんだよ‼‼」


「別に、余計なことは言わないでほしいだけよ」


「余計なこととはなんだ? 別に、すべてが必要なことだけどなぁ?」


「違うわ、まったく——まあ、ちょっと二人だけで話してただけだわ。洞野君には関係ないから気にしないで?」


 最後のはてなマークには僕も若干、恐怖してしまったがどうやら触れない方がいいらしい。


「あ、ああ——」


「うん、よろしい!」


 あ、それは僕も言われるのか……。


「それで、洞野君は何してたの?」


「ん、まあ……タキシード作ってたんだけど、今日の部活について四葉に聞きたくて待ってたんだよ」


「ふーん……で四葉ちゃんは?」


「今はなんか、メイド用の衣装の試作が出来たらしくて——」


「え、まさかっ——四葉ちゃんメイド服着るの!?」


 意外にも、彼女は取り乱す。


 ——いや、意外じゃなかったか? まあ別にいいか。


「うん……まあもうすぐで来ると思うけど……」


「え、まじ?」


「うん……」


「いや、いきなりきもいぞお前……」


 横槍を入れた前沢を睨みを利かせた目で一瞥する。


 ————しかし、その瞬間。

 今度こそ、扉がガラガラと開いた音がした。


「お?」

「おぉ」

「おぅ、いえぁぁん」


 おっと、一人がAVだと間違えているぞ!


 ーーーー扉から現れたのは女子をボディーガードのように纏った、四葉その人だった。



 可愛らしい白と黒のモノトーンのエプロンドレスに首元には大きな白いリボンと、頭にはふわふわなホワイトブリム、そして猫をイメージした黒の長い靴下。若干の化粧で白さが増し、唇には紅色のリップが塗られていた。そのすべてが小動物な四葉に似合っていて、強烈な破壊力を持っていた。


「か、かわいい……」


 思ったことが口に出て、そして聞こえていたのか四葉の頬が少しだけ赤くなっていた。

 


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