第11話 「我が純愛の妹を前に」 その4
—————☆
「————っ」
玄関を突き抜けるように家に入り、二階の部屋へと駆け上がる。そして彼女の部屋の前で一度、深呼吸をする。
きっと、大丈夫。
そうだ、大丈夫だ。
心の中でそう祈り、僕は扉を勢いよく開けた。
「————四葉っ‼‼」
——————☆
「それで、結局……忘れちまったわけか……」
「何よ? 私は忘れてないけれど……」
「別に西島は覚えてるんだろ? そうじゃなくてあの二人のことだよ」
「ああ、そうね……もしかしたら、そうなのかもね」
帰り道、俺の数メートル前で彼女は俯いてそう言った。
「そうなのかも……? って、どういうことだよ」
その言葉に俺は疑問を持った。
高校一年生になって再会した時には彼らはその記憶をなくしていたはずだ。だからきっと四人揃っているあの頃の思い出も失っていると思っていた。
しかし、彼女は今。
それを否定していた。
「いや……忘れてないんじゃないかなってね」
「そう、なのか……?」
「え、ええ。大体、記憶は失われていないと思うのよ」
「そうか? 俺には忘れているようにしか見えないけどね」
「それはーーーーあんたの目が節穴だからよ」
「ーーーーっち、どの口が言う」
あっかんべー、そんな風に舌を出した西島咲に微塵の可愛さを抱かない。
いや、むしろきもいぞこの変態は——どこぞのもの好きじゃなけれな好きになるはずもない。
まったくこの犯罪者、見てるだけでも怖いって言うのに。
「しらん~~、私の口はどの口じゃない~~」
「うるせえ、屁理屈を言うな」
「——まあ、だから。とにかく覚えてないってことはないと思うのよ」
「二人だけの記憶は覚えているとは思うぞ、俺も?」
「それは当たり前よ、大体二人で暮らしているんだし……」
「じゃあ、何だって言うんだよ?」
「それも分からないの? ってもう、つくづく節穴ね」
こんな変態犯罪者には言われたくない。
「うるせえ、変態!」
すると、周りの女性陣の目が一斉に俺に向かった。
ぎろぎろと目を光らせる彼女たちの目はまるではオオカミのそれと言わんばかりのものだったが、どうやらそんな子供騙し、俺には効かないらしい。
「あんた……落ちるところまで落ちたようね……」
「お前に言われたくはない、散々お前に付き纏われてきたんだ。こんなプレッシャー屁でもない」
「っちぇ~~、根回しした私が馬鹿だったわ」
「はいはい、すごいすごい」
ゲーとぼやく彼女を横目に僕は溜息を洩らした。
「ってことは?」
「ただ覚えてないってこと」
「俺たち二人のことを?」
「昔の私たちと、今の私たちが同一人物だとは思ってないのよ……ただ、それを告げるのは少し酷だと思うわ」
「……それならつじつまが合うな……まあ、今は。そうだな」
<あとがき>
皆さんお久です、ふぁなおです。
なんとなく書いてみようかと思い書き始めましたが、あとがきも特に書くことがなかったので――コードギアスの新作が楽しみだということだけ言っておきます。
告白していいのは、振られる覚悟がある奴だけだ。
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