第9話 「第一次奪取戦争」 その10
凄まじい破裂音が鳴った頃には、時すでに遅かった。
口から噴水のように飛び出した温水は彼女目掛けて一直線、気が付けば四葉はびちゃびちゃになっていた。
「う、うぅ……」
「っあ、ご、ごめん‼‼」
「ひ、どい……」
しかし、予想もしていなかった。
半分死にかけていた僕の目が覚めるほどに四葉の色気は半端なかった。
いくら義妹、いくら幼馴染と言えどその姿には抵抗がある。
気を抜けば僕の僕が元気になっていくし、体のラインが下品に強調していないため僕の好みにぶっ刺さる。四葉にシャワーを当てながら元気な姿の僕の僕を隠すのに精一杯だった。
「うぼぼぼぉーー」
「ちょ、すま。まって!」
「うぼぼぼぼーーーー、ゆ、ずぅぅぅぅーー」
「——っ!」
みるみると大きくなっていく僕の僕。どこかのコメディ作品のように、こいつの名前を作る暇はおろか、シャワーをコントールする余裕すらない。
「ゆずぅうううう‼‼」
ようやく萎んでいったかと思って振り返ると、そこにはさらにびちょびちょになった四葉が立っていた。
「——ど、どうした⁉」
驚きのあまり大声で問うと、さらに大声で彼女は返した。
「——ゆずと、のせいでしょ‼‼‼」
「っえ」
そして彼女は僕からシャワーを奪い水を掛ける。
——その瞬間、おそらく誰も見たくはないであろう義妹とのイチャイチャタイムが始まった。
————☆☆
「ふぅ……」
「はぁ……」
二人のため息は小さな浴室で響いた。
よくよく考えてみたら、四葉とゆずとが二人してお風呂に入ってること自体おかしな話。もしも、母に見られたりとしたらややこしいことになってしまいそう……。
「どうしたんだ、四葉?」
すると、四葉の顔色を窺ってゆずとは尋ねました。
「いやぁ……別に」
「そうなのか、ちょっと険しい表情してたからな……」
「お母さんに見られたら少しヤバいかなぁって」
「っう、それは盲点だった」
どうやら、あんなな凄いドヤ顔を決めながら誘ってきた張本人も事後のことは考えてなかったらしい。四葉が言えたことではないけれど、ゆずともたまにぽんこつなところがある。でも、そんな彼がすごく魅力的に映ってしまう自分もいる。
そんな抜けているところも含めてすごく好きなのかもしれない、この可愛さを自分しか知らないと思うととても嬉しい気持ちになって、なんか言い表せないくらいに気持ちがいいです。
「ふぁぁ」
「っ⁉」
「ふにゅぅぅ」
——状態。
若干——、いや。
普通に考えたら、というか、義兄且つ幼馴染でなければこんな状況起きるはずはない、それこそ熟練のカップルでさえなければこんなことは起こらない。でも、今更やめる気だってない。
ここは思う存分堪能しなきゃいけないと使命感を抱いて、四葉の頭をゆずとの胸にそっと寄りかかるように、大きなゆずとの股にこの小さな身体はすっぽりと収まっていく。
考えてはいけないが、ゆずとの大事なところの感触がお尻あたりから伝わります。本で読んだことはあるけれど、その……硬くはなっていない。
っ——一体、何を考えているのだろうでしょうか。
「っひゅ!」
「!?」
すると、彼の手が四葉のお腹あたりで止まった。抱え込むように掴んで、お風呂の温かみどころか、ゆずとの体温すら感じてしまう。そんな刺激に思わず声が出てしまった。
「だ、大丈夫か?」
「う、うん……びっくりしただけです」
「あ、ああ」
そのまま手は結んだままでした。
すごく気持ちい、すごく落ち着きます。長年感じてはこなかった暖かみに触れて四葉の体はどうにかなってしまいそうになっています。
「なんか、早いのなぁ」
「?」
ゆずとは天井を見上げながら言っていた。ふわりと立ち込める湯気に紛れてため息を漏らし、お風呂のお湯に溶けてしまいそうなくらいふやけていました。
「進級してもう一か月くらい経つしさぁ、なんか一瞬で……」
「ぁ、確かに、そうですねぇ」
「初日はヤバかったわぁ」
「それはまぁ、咲ちゃんがあれだったし……」
「めっちゃ怖かったけどな、パワー凄くて」
「それはゆずとが力弱いだけじゃないですか?」
「っう、一理あるな」
「もっとあります、三理くらい」
「ぐへ、僕はそんなにへぼへぼなの……?」
そんなこと、体に触れればすぐに分かる。
ゆずとは太らない体質、もともと脂肪がつきにくい代謝がいい遺伝子を受け継いでいる。今はいない本当の母親のスタイルの良さは四葉が良く知っている。
「っ、へぼへぼです」
「そんなにか、痩せてていいんじゃないのか?」
「ほんとですよ、というより女子はへぼへぼよりも筋肉がある方がいいんです。へぼへぼは論外ですっ」
「そうかぁ……鍛えるべきなのかなぁ僕は」
「その通りですっ!」
「まぁ、ない胸を精一杯張ってる四葉も四葉だけ——ぼふぉおお‼‼」
その先は聞きたくはない。
心の中では、うるさい、あほ、ばか義兄‼‼ と叫んで拳を握り。
そんな四葉、渾身の一撃にゆずとは一発ノックダウンしてしまいました。
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