第149話:報酬を受け取ったんだが

 ◇


 王都に戻ってきた俺たちは、冒険者ギルドの扉を開いた。


 今回の依頼主であるハルカに報告し、報酬をもらわなければならない。


 時刻は昼過ぎ。閑散としたギルド建物内をハルカが箒をかけていた。


「ユーキさん! あれ……?」


 すぐに入ってきた俺たちの姿に気づくハルカ。


 しかし、ハルカの顔は曇ってしまった。


 そういえば、ギルドを出る前にハルカには『必ず生きて三人を戻らせる』なんて言っていたな……。


 オーク討伐の依頼を引き受けた三人の姿がないので、何かあったのかと不安を感じさせてしまったのだろう。


「順を追って説明するよ」


 三人はハルカが思っていた通り、身分を偽っていたこと。俺たちの助けがなければ危なかったこと。仲間のもとへ直接向かったこと。


 全ての説明を聞き終えた受付嬢のハルカは安堵の表情を浮かべていた。


「よ、よかったです……。ユーキさんたちにお願いして本当に良かったです。ありがとうございました!」


 もしアインたちに何かあれば、ハルカは自責の念に苦しんだかもしれない。冒険者としては、ギルドの職員には万全な状態で働いてほしいので、俺としても未然に最悪の事態を防げて良かった。


「それで、報酬なんだが」


「そうでしたね……。私にできることならなんでも……」


「今、なんでもって言ったな?」


 俺は、ハルカの顔を見つめてニヤリと笑みを浮かべる。


「は、はい……言いました!」


 ごくりと唾を飲むハルカ。


 俺は、依頼を受ける前から報酬を二パターン考えていた。アインたちが正規の冒険者だった場合と、不正な冒険者だった場合。


 今回は後者である。


「ギルドカードの不正業者に関する情報を手に入れた。ギルドから摘発依頼を俺たちに出してくれ」


 実は、アースが三人を乗せて飛び立つ前。俺はアインたちから不正なギルドカードを売っていた業者たちの情報を聞き出していた。どこにいけば奴らがいるのか、情報を握っている。


「え? そんなことでいいんですか……?」


 受付嬢のハルカは拍子抜けしたようで、脱力していた。


 俺がどんなことを言うと思ったんだろうな?


「ああ。それなりに大きい仕事だし、冒険者にとっては成功すれば名誉になる案件だからな」


 この手の犯罪は、購入者である末端を締め上げても効果は薄い。売人たちである根本を捕まえるのが手っ取り早いのだ。


 この依頼を出すよう求めたのはハルカを納得させる方便だというのが理由として大きいが、一応裏からこの国を支える立場としてやっておきたいという気持ちもある。


「そ、そうですか……わかりました! 正式な依頼書を発行した後、確約でユーキさんたちにお願いしますね!」


「ああ、それで頼む」


 こうして俺たちは十数分の待機の後、正式にギルドから依頼を受け、現場に向かった。

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