第147話:話を聞いてみたんだが②
話を聞く限り、彼らにとってはやむ負えない事情があったらしい。
俺たちも固定のパーティで普段依頼をこなしているので、気持ちはよくわかる。俺だって立場さえ違えば同じことをしていたかもしれない。
「そんな事情があったのですね……」
アレリアが呟く。
アイナ、ミーシャ、アイナの三人を見ても手段はどうあれ、この決断の是非は共感できるといった感じの反応。
とはいえ、結果と感情は切り分けて考えなければならない。
「その通り、不正をして良い理由にはならないな。……同情はするが」
「ちょ、ちょっとユーキ!?」
「何言ってんのよ!」
アレリアが驚き、アイナが肩を小突いてきた。
「冒険者がランク分けされているのは、本質的には冒険者がなるべく安全に依頼をこなせるようにという配慮でもある。お前らはその配慮を踏み躙ったわけだ。結果として今回みたいなことになった。到底擁護できることではないし、二度とするなとしか言えない。依頼は失敗というよりも、取り消し処分が相当だ。当然報酬は銅貨一枚すら出ない。治療費は諦めろ」
俺はまだ言葉を続ける。
「その代わり、これを持っていけ」
俺はアイテムスロットから『光り輝く生命力ポーションLv.5』を取り出し、パーティリーダーのアインに手渡す。
俺が錬金術で作った特別性のポーションである。
「これは……ポーションか?」
「普通ならそこまでの大きな怪我だとポーションでの治癒は不可能。だが、これならなんとかなる。回復術師に頼むよりも確実だろう」
そう説明しても、三人は納得できない様子。
「疑っているわけではないが——」
「こんなものでどうにもならないと思うなら、試しに飲んでみればいい。在庫はまだあるからな」
俺は追加で三本のポーションを取り出し、それぞれ手渡す。
三人が受け取ったポーションを飲み干すと、すぐに変化が現れた。
「な、なんだこれは……信じられない!?」
「あれだけの怪我が一瞬で跡形もなく……」
「嘘でしょ……!?」
三人が驚くのも無理はない。
普通のポーションにこれほどの効果はない。俺が作ったこのポーションが特別なだけなのだから。
「アース、この三人を仲間がいるところまで連れて行ってやってくれ」
話を聞く限り、一刻を争うらしい。それなら早い方が良いだろう。地上の移動では手遅れになってしまうかもしれない。
「え、オレが送るの?」
「何か問題があるか? 俺たちは先にスイに王都まで送ってもらおうと思ってたんだが」
「んー、じゃあしょうがないんだナ〜」
何か言いたげだったアースだが、事情を話すと損得勘定でもしたのか、あっさり引き受けてくれたのだった。
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