第113話:やばい現場を見かけたんだが②
俺を見つけたというのに、なぜか意外そうでもないな?
もしかすると、帝都に滞在していることはすでに知られていたのかもしれない。
「お前ら、武器を降ろして投降しろ。何をしようとしてたかは知ってる」
俺が言うと、観念したようにカタン以外の全員が使えない魔法兵器を地面に落とした。諦めは良いようだ。
余計な戦いはできればしたくない。
言うことを聞いてくれてよかった。
だが、カタンは違った。
「くそ! こんなはずじゃなかったんだ……‼︎」
そんなことを言いながら、あろうことか俺に襲いかかってきたのだった。
「盾の勇者は攻撃には向かなそうだけどな……」
盾の勇者の役割は、勇者パーティの他の仲間を守ることにある。
回復の勇者以外の他の勇者に比べれば勇者武器で攻撃ができないから、圧倒的に攻撃力に劣るというのに。
おそらく、カタンも勝てないことはわかっているのだろう。それでも襲いかかってくるというのは、ある意味根性だけは座っているのかもしれない。
ニヤッとカタンが嗤う。
「……⁉︎」
背筋が冷えるような不気味さを感じる。
カタンは大きな盾を俺にぶつけようとしてくる。
本来、盾は己や自分を守るためにあるものだが、確かに雑魚程度なら攻撃にも使えそうではあるな……。
しかし、どれだけ工夫したとしても所詮は盾。
俺がカタンの盾を蹴飛ばすと、姿勢を崩したカタンが倒れた。
聖剣——かつて古き勇者が使っていたと云われる剣——をカタンの首筋に立てる。
「無駄な抵抗はやめるんだな」
「へへ……言われなくてもしねえよ」
「……ならいいんだが」
妙に諦めが良い気がするのが少し不可解だが、俺はカタンには何重にも手錠をかけ、ロープで縛った。
他の者は動けないようにロープで縛るに留めた。
数が足りないというのもあるが、意外と面倒だったりするのだ。
幸い、帝都の近くなのだから、すぐに衛兵が駆けつけてくれるはずだし。
「ユーキやりましたね!」
「ああ、すぐに終わってよかったよ」
と、こんな風にほっと胸を撫で下ろしていたのだが——
ガガガガガ——
という奇妙な音が、帝都の北北東から聞こえてくる。あの場所は、ミーシャによれば魔法兵器の研究所があったはず。
カタンたちもさっきまではそこいにいた。
「フハハ……フハハハハハ‼︎」
突然カタンが嗤い始める。
「何が可笑しいんだ?」
「ふっ、すぐにわかる。もうてめえは手遅れなんだよ!」
「手遅れだと……?」
カタンの言葉が気になるな。身柄を拘束されているというのに、謎の勝ち誇った言動。
「スイ、ちょっと帝都上空を飛んでくれるか?」
「いいよー」
二つ返事で快諾してくれたスイに乗り、上空へ。
「……⁉︎」
研究所の天井が開かれ、中からロケットのような巨大な魔法兵器が顔を出していた。
「あ、あれはミサイルか……?」
既に方位の指定は終えているようで、俺が知るとある場所に放物線を描くように向けられている。
狙いは——王都。
あの規模の魔法兵器が放たれれば、王都は一瞬で跡形も無くなってしまうだろう。
いや、被害は王都だけに止まらない。
さすがに三百キロほど離れたエルフの里まで直接的な被害を受けることはないだろうが、少なくとも生態系には影響を与えそうだ。
と、こんなことを考えている間にも既にゆらゆらと動き始めている。
もう、あとは発射されるだけなのだろう。
今急いで研究所に行き、止めさせようとしても手遅れの可能性が高い。
俺にとって王都自体に土地としての思い入れはないが——
関わった人々の顔を思い出すと、王都が消滅するのは受け入れがたい。
俺にとって何かしら困ることはないだろう。少し寂しくなるくらいで。
でも——
何もせず放っておいたとしたら、気分が悪いだろうということはわかる。
考えろ、どうすれば被害を最小限に抑えられるか……。
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