第100話:頼まれたんだが②
ちょ、ちょっ⁉︎
「もうそれほどの関係値なら、結婚も何も問題ないだろう。何がおかしい?」
「いや、それは……」
確かに、他国の有力貴族や王族と婚姻させることが政略的に行われることは不思議ではないが、目の前でそんなことを言われると、何と答えていいかわからなくなる。
もちろん嫌なわけじゃないのだが、そんなことを考えたことなんてほんの少ししかなかった。
「でも、アレリアの気持ちというのもありますから……」
「私はやぶさかではありませんよ」
「……と、言ってるが?」
四面楚歌っていうのはこのことか……?
敵のことを言うからちょっと違うような気がするが……うーん?
そして、なぜかアイナだけは残念そうな顔をしている。
なんでアイナがそうなる……?
逆ならわかるのだが。
「ちょ、ちょっと待ってください。俺の気持ちをはっきりさせましょう」
「うむ」
「まず、俺も嫌というわけではありません。というより、俺には手に余るほどのお話だと捉えています」
「いや、ユーキ君だからこんな話をしているわけだが」
「それは一旦置いておきましょう。アレリアの歳は何歳ですか?」
「十五歳……いや、今年で十六歳だ」
「それは、まだ若すぎます。アレリアがそうだとは断言しませんが、一般的に若い女性……いえ、女性だけに限らないかもしれませんが……ともかく、婚姻を決めるのには早すぎると思うのです」
これを見た目年齢が同じ歳くらいの俺が言うのもどうなのだろうかと思うが、少なくとも中身としてはいい大人。
自然と出てくる言葉がこれだった。
「それに俺とアレリアが出会ってからの期間は短いものです。もちろん濃い期間ではありましたが、婚姻を決めるのには早すぎます。もう少し長い目で見て、最終的にアレリアが受け入れてくれるというなら、俺は断るつもりはありません」
「ふむ……一見筋は通っているようだが……青いな」
「そうでしょうか……?」
「俺とリリスはちょうどユーキ君と同じくらいの歳で結婚したが、今も仲良しだ。な?」
「ええ、そうね」
ラブラブオーラを発する二人。
「もちろんそういう例もあると思います。でも、もしそうだとしても結婚だけを早めなくても良いのではないでしょうか」
「どういうことだ?」
「結婚というのは、ある意味儀式を終えただけのものです。夫婦の関係性というのは、長期的には婚姻をしたから深まるわけでも、浅くなるわけでもないと思いますよ。婚姻という手段を使わなくても一緒に生活はできます」
昔、スピード婚をした夫婦はそうではない夫婦に比べて離婚率が高く出るというネットの記事を目にしたことがある。
「なるほど……結婚をゴールではないと考えるか。深いな」
ユリウス皇帝……というより、アレリア父は押し黙り、塾考しているようだった。
「あなた、ユーキさんの言うことも一理あると思うわ。必ずしも結婚を急がなくてもいいんじゃないかしら」
「む、それもそうだな……」
アレリアの父は皇帝という立場にありながら、意外にも柔軟な考えの持ち主なのだろうか。
リリス皇后の言葉に頷いた。
「アレリア、お前はどうだ?」
「私はユーキと一緒にいられるなら、なんでもいいです!」
「よし、じゃあ決まりだな」
ユリウス皇帝が、俺の手をさっきより強い力で握った。
「まだ婚姻はしないということだが、娘をよろしく頼んだぞ」
「え、ええ……任せてください」
こうして、波乱の食事会は終わりを迎えたのだった——
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