第92話:練金術が進化したんだが②

 最初千本あった生命力ポーションも、レベル5まで残ったのはたったの一本。


 なお、ポーションのレベルは5が最大らしく、これ以上は調合不可になってしまった。


 魔力ポーションも同様に作業を進め、一本だけレベル5を達成することができた。


 どちらも太陽のような眩さを発しており、もはやこれを初見でポーションだと言う者はいないと思えるほど変化している。


 全ての作業を終えた時——


 《二種類のアイテムの錬金限界に達しました》


 《新スキル『アイテム合成』を習得しました》


 《新スキル『アイテム性質変換』習得しました》


 また謎の声が俺の頭の中に直接話しかけてきたのだった。


 今度覚えた新スキルは、『アイテム合成』と『アイテム性質変換』の二種類。


 どちらもレベル1の状態。


 今までは一つずつしかスキルが増えていかなかったのだが、二つ同時にもらえることもあるんだな……。


 新スキルの習得条件を解明できていないので、これがわかったところで何かが変わるわけではないのだが、単純にちょっとした驚きだった。


 どちらも名前からしてアイテムに関するもののようだが、どういうものなんだ?


 試してみよう。


 レベル5の貴重なポーションは一旦アイテムスロットに収納しておく。


 俺は少しだけ残っている『聖花』と『赤い薬草』、『青い薬草』を取り出し、『錬金術』で生命力ポーションと魔力ポーションを一つずつ作成した。


 まずは、『アイテム合成』を試してみる。


 スキルを使ってみると、自然に使い方が理解できる。


 これは、文字通りアイテムを合成できるスキルのようだ。


 生命力ポーションと魔力ポーションが融合し、二つが混ざり合ったような色——紫のポーションになった。


「あ〜、スイが見たやつそれ! ご主人様もやっぱりできるんだ〜!」


「なるほど、こういうことだったのか」


「ご主人様って思ったより凄いんだナー……」


「当たり前だよー! ご主人様は凄いの〜!」


 俺とスイがそんなやりとりをしていると、隣で見ていたアースが、そんなことを言ってきた。


 俺としては単に覚えたスキルを試しているだけなので凄いという実感はないのだが、客観的にはそう見えるらしい。


 というか、今までは凄いとは思われていなかったらしい。


 とはいえ、これが想像通りの効果を発揮するとは限らない。


 試しにそのポーションを飲んでみる。


 ごくん。


 刹那、生命力と魔力が同時に回復するような感覚を覚えた。


 俺が予想した通り、二種類のポーションを一度に摂取できるようになっていた。


「なるほど……これは便利だな」


 今までは余裕のない戦いになることはなかったが、これからもないとは限らない。


 生命力と魔力……すなわちMPとHPが同時に枯渇する事態になった時、これは効果を発揮する。


 ほんの少しの時間さえ作れれば、全快の状態に戻れるかもしれないんだからな。


 地味ではあるが、有用なスキルだ。

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