第90話:お土産を選ぶことになったんだが②
◇
「ふぁ〜。眠いんだナー……」
寝起きのアースの背中に乗って、商業地区上空まで来た。
ひとっ飛びしてきたというのに、まだ眠気が醒めないらしい。大丈夫か……?
「うぅ〜。こうしてみるとお店いっぱいありますね……。悩みます」
「荷物の量の問題ならアイテムスロットに入れておけばいくらでも持ち運びはできるけど、まあ、あまり多すぎても困らせるよな」
なお、お金の問題はこの際考えなくていい。
実のところお金を手に入れてもあまり使いどころがない。
大きな買い物……例えばかなりお金をかけた家を建てたとしても金貨一万枚ほど。
日本円にして一億円くらいだが、そのくらいでは困らなくなってきた。
もっとも、金貨一万枚の家を買ったとしても、売ればそれなりの金額になるのだから、本来の意味で消費しているとは言えないのだが。
「何か思い出に残るものと、食べられるものの二軸で考えてみればいいんじゃないか?」
「あ、それいいかもです!」
俺自身がお土産に迷ったときはこうしていたのだ。
ヒントになったようなら何よりだ。
「食べ物はプリンパフェと、アイスクリームと……」
「移動する間に腐らないかしら……?」
アイナの懸念はもっともだ。そう言えば、まだ言ったことなかったっけ。
「俺のアイテムスロットに入れておけば腐ることも溶けることもないからそこは大丈夫だ。安心してくれ」
「ええ……⁉︎ あれって何でもありなのね……」
アイナが驚くのも無理はない。
俺だってさすがに何かがおかしいと思う。
しかし、これが現実なのである。
「まあでも、お腹が空いてからお土産を買うついでに行ってもいいし、とりあえずまずは雑貨屋さんから行ってみるのはどうかしら?」
「ここから近いしな。俺もそれがいいと思うぞ」
「そうですね、そうしましょう!」
というわけで、雑貨店に行くことになった。
大公爵として帝国に挨拶に伺うわけだから、俺も何か手土産が必要になる。
俺は錬金術で作ったポーションを持っていくつもりだ。
この雑貨店で素材を補充しておくこととしよう。
そんなことを思いながら扉を開け、中に入る。
「わあ〜! す、すごいです……! ユーキ大人気ですね!」
「これ、私も買っておこうかしら……?」
「うげえ…………」
雑貨店に入るや否や、目に飛び込んできたのはフェアの商品。
これだけ聞けば普通のことに思えてしまうが、そのフェアの名前は『大公爵フェア』。
俺にあやかった商品が大量に並んでいるのだ。
いや、俺だけじゃない。
アレリアやアイナ、それにスイ関連のものまで並んでいる。
フィギュアや、俺たちのイラスト入りの日用品、果てには俺がお墨付きしたことになっている格言集まで。
しかもかなり売れているので何とも言えない気分になる。
売れていなかったらそれはそれで悲しい……故に何とも言えない。
「恥ずかしくて死ぬ……」
俺はあまり目立ちたくないのだ。
それなのに、異世界に転生してから成り行きに任せて生きているうちに、なぜかこんなことになってしまった……。
「俺は先に買って待っておくよ。ごゆっくり」
「えー、ユーキも一緒に見た方が楽しいですよ?」
「アレリア、駄目よ。ユーキの気持ちを察しなきゃ」
「……わかりました」
「悪いな」
俺はコソコソとポーションの素材を購入し、二人が買い物を終えるまで外で待っていることにした。
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