第二十五節:ザブールにて

 ザブール門前街で一夜が明けた。


 夕食代わりに皆で弁当を食べ、その後寝る御者さんを護衛して朝まで粘ったのであった。



 朝まで特に何かあったわけではないが、守って無ければ何かあったことだろう、それくらい治安は乱れているのであるからして。


 ザブールの大門が開き始めた。


 一旦宿屋によって部屋を借り汗を流し休憩する。


 そういう方向性で皆まとまった。



 御者さんがオシュル商会の特命印の入った書状を見せたため、確実に街の中に進入する事ができたのであった。



 またそこにもオシュル商会の白壁、青い屋根の宿屋があったのではある。


 宿に付くと私を先頭にして入り、真っ直ぐフロントに向かい、フロントで例の手紙を見せた。



 するとまた、ロイヤルスイートツインダブルに皆案内されたのである。


 そして「セッティングは万全です。何なりとお申し付けくださいませ」と、またいわれたのであった。



 まずは朝食から頼んだ。


 朝食というには豪華なものが並んだ。



 『ゲルハート』は「これが身印の代わりだ」と、いって報奨金を出した。


 皆の前のテーブルに積んだ。


 三千六百ゴルトだった。


「一人、九百ゴルトか」と『ウィーゼル』は五十ゴルト金貨を一人分十八枚に分けて行った。



「どこかで換金しないとお財布が重たい。けどここよりはカルトルのほうが安全よね」と私がいった。


 現財産額が千三百九十二ゴルト九十五シルズ八十ブロスとなったわけである。


 旅行財布の中身[2.175kg]

 五十G×二十七[1.72kg]、十G×四[0.12kg]、一G×二[0.030kg]、

 五十S×一[0.05kg]、十S×三[0.105kg]、五S×二[0.05kg]、一S×五[0.10kg]


 旅行小銭入れの中身[0.16kg]

 五十B×零[0.00kg]、十B×八[0.16kg]、一B×零[0.00kg]、

 五十Ca×零[0.00kg]  貨幣全重量二.一九五キログラム、


 体重を除く全備重量が六十四.八一一キログラムとなったのである。


「確かにここ最近は、五十ゴルト金貨コインが増えていたからな、重いのは仕方あるまい」と『ウィーゼル』も同意した。


「王都とか城塞都市か大きな街の銀行に行かないと、白金貨プラナは手に入りにくいからねー、しかもコインじゃないし」と『セリア』はいった。


 確かにそうなのである。


 一般的に、金貨ゴルト銀貨シルズ青銅貨ブロス銅貨カルドが一般社会では主流であり、水晶貨クリプトや白金貨は手に入りにくいのが現状で外観はコイン形状ではないといえるのである。


 偶々、私は全ての貨幣を見たことがあるだけだった、という稀有けうな家系に生まれた証拠でもあったのである。


 各貨幣とも百単位は水晶貨を除き、五十、十、五、一の単位でしか存在しなかったのである。


 なので、一般的な報酬は百金貨を超えても五十金貨何枚という単位で払われるのであった。



「そうねー、カルトルの銀行で換金するのが一番安全かしら」と『セリア』もそれに同意したのであった。



 カルトルはとりあえず、現在乗る馬車の最終目的地であり大型の城塞都市なのであった。



 そして『ウィーゼル』の目的地でもあった。


 現在のパーティーリーダーは『ウィーゼル』のはずなのだが、『ウィーゼル』自体が皆の意見を聞いてから行動方針を打ち出すので、一見パーティーリーダーに見えないのであった。



 それに現在の馬車と宿を用立ててくださった方が、パーティーリーダーではなく私を指名して用立てて下さっているという特例もあって、私が行く先々を決めているような印象があり、『ウィーゼル』としてはそれを立てて行動しているのであった。


 『ウィーゼル』は「今日は歩をここで留めて、明日昼手前に宿を出ないか?」といったのである。


「俺は構わんが、なにか大事な用があるんじゃないのか?」と『ゲルハート』は『ウィーゼル』に聞いた。


「何、ただの気まぐれというよりは、いつもの出発時刻よりも遅くなっているから、明日に回した方がいいんじゃないかなと思ってね」と『ウィーゼル』はいう。


「三十分でも違うと影響は出るだろう?」と『ウィーゼル』はいったのであった。


「確かに三十分て馬鹿にできないからねー。また門前町で護衛って言うのもねー」と『セリア』も同意した。


「じゃあ御者さんたちにも伝えなきゃ」と私が行こうとすると。


「そっちは、パーティーリーダーとしての俺の役目だから『ウィオラ』はゆっくり休んでおいてくれ」と『ウィーゼル』はそういって部屋から出たのであった。


 そういわれたので役目を渡すと、私はお昼まで休憩に入り始めたのであった。


 『ウィーゼル』が伝えてきたといって帰ってくるまで特に何事も起きなかったので、休憩がてらに道具や武器の手入れを行っていたのであった。


 刀はいつも通り特に念入りに手入れ整備したのであった。


 刀ほどデリケートな武器は、私の持っている中に存在しないからでもあった。



 魔導剣抜刀でコーティングしていても切れ味というものは鈍って行くものである、とは師匠の教えでもあったからだ。


 魔導剣抜刀では刃の周りにも鋭いコーティングが付くがそれでもなお、切れ味は減衰するというのが師匠の教えでもあり、実際に何度か使ってみた結果自身で導いた答えでもあったからだ。


 バスタードソードのほうはそこまで丁寧に手入れしなくてもやって行けるのだが、刀はデリケートなのであった、そしてこの前のオーバーロードの件と言いどこかでぎに出した方が良さそうな塩梅あんばいでもあったが、この辺りの研屋とぎやでは難しいのが現状でもあった。


 東方の刀は専門の職人に渡すのが一番なので、やはりフレイニアの首都フレイに居る刀匠に診てもらうのが一番だと言えた。


 それか重量は重くなるが、二本挿しを考えるかである。


 幸い今回の目的地カルトルは、城塞都市でもあるので武器は揃っているはずであった。


 カルトルには東西の武器が揃っている、という噂まであるくらいなのだ。


 それには早くカルトルに着く必要があった。


 多分『ウィーゼル』の抱えている用事とやらも、それなりに急ぐものなのであろうとも思った。



 なのでここで時間を費やしてもいいのかなあ? とか考えたりもしたものだがPTリーダーがそのようにいったので仕方がないともいえた。


 なので、今日はしっかり休むことが得策ともいえたのである。



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