残った者達


 今回は慎二目線、王城からどうぞ!



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 ───剣を打ち合せる。打ち合わせることで分かることがある。



 そう言う人間も居るらしいが、残念ながら慎二しんじには分からなかった。彼には剣を通して相手の感情や思いを知ることも、もちろんその剣術を身につけるまでの研鑽を推し量るような真似は全くできない。

 そもそも普通の人間にはできないだろう。だが、その道を極めた人間なら誰もが理解できるらしい。


 「フッ!!」


 相対する騎士の剣に狙いを定め幾度となく刃を交える。慎二と騎士には本来かなりのレベル差があるはずだが、慎二は問題なく切り結ぶことが出来ていた。

 その流れの中で、それまでのように剣で受けると思わせておいての回避。振り下ろされた剣が頬を撫でていき、慎二は肉薄しようとした。

 が、流石に簡単には勝たせてはくれない。どうやら狙いが見抜かれていたようで、剣は地面まで下がりきることなく途中で角度を急変させ再度慎二を狙ってくる。


 その場で地面を蹴って後退することで避けた慎二は、少しだけ息を吐いた。



 ───話を戻すが、慎二にはこうして戦っている今も、騎士からは何も感じない。今何を思っているのか、何を考えているのか。次の行動を予測することは出来ても、その人格まで見ることは叶わない。

 明らかに常人の修練レベルは超えているはずなのに、出来ないのだ。

 別にそれが不満に感じるわけでも、ましてやそれが出来るようになりたいと願っている訳でもない。ただそう……自分は感受性が欠落してしまっているのかもしれないと、改めて思うだけであって。



 騎士が放つ突きを外へと弾き、そのまま剣先を手繰り寄せて今度はこちらから突く。騎士は首を傾けて避け、下から剣を振り上げてきた。

 上へと弾かれる剣。だがそちらの衝撃は上手く流して隙を与えることなく、まるで別の体であるかのように右半身を無視した動きで左手を前へ突き出す。


 騎士の伸ばしきった右腕を掴み取り、やや遅らせて右手首の返しで剣先を正面へと向け直して放てば、それは相手の首元寸前で止まる。

 騎士の方も遅れて片腕を動かそうとしていたが、ここから動かしたところで慎二の方が先んじるのは明白なため、それ以上の行動はなかった。


 「……参りました。相変わらず勇者様はお強いですね」

 「いえ……」


 お互いに剣を収める。未だに騎士に勝てる勇者クラスメイトはほぼ居ないが、慎二にとってはそう難しくないことだ。

 もちろんそれを言うことは無いが、目の前の騎士ぐらいなら勝てる───確か彼は騎士団内でも上から数えた方が早い実力者だったはずだが、それはいいだろう。


 「それにしても、レベルも歳も下の方にこうも連続で負けていると、騎士としての自信を無くしてしまいますね」

 「……貴方とそんな戦ったことはありませんが」

 「いえ、シンジ様のことだけではありませんよ」


 なんと反応すれば良いかわからず、取り敢えず連続というほどこの騎士と戦ったことは無い慎二が言えば、苦笑いが返ってくる。


 「以前の襲撃の際に、この城へ単独で向かった勇者様が居たのです」

 「……夜栄、いや、刀哉ですか」

 「はい。その場に居合わせた私含め三人の騎士が止めようとしたのですが、殺さぬよう手加減をされた上で見事に突破されてしまいまして……その後の状況がむしろ改善したことを考えればあの勇者様こそ結果的に正しい判断をしたのだと思いますが、同時に自身の実力不足を痛感しているのです」


 慎二の知らないところでそんな無茶をしていたのかと、ここにはいない刀哉を思い出して驚く。


 慎二とて三人の騎士に同時に攻められれば、ではかなり厳しいところがある。倒すことはできるかもしれないが、あくまで振り切るだけに留めるのであれば、難易度は高い。

 いくら慎二でも、かなりのレベル差がある騎士には身体能力で負けている。その時点で騎士の追尾を振り切るのは至難の業だ。慎二の力ならば、いっそ倒してしまった方が楽に済む。

 

 それは恐らく刀哉も同じだったはず。刀哉や慎二がレベル1でありながら騎士に勝てるのは、レベル1に似つかわしくない身体能力を持っているのもあるが、それ以上に戦い方や反応速度などが飛び抜けているからだ。

 そのため単純な話、腕相撲のような純粋な力比べとなると、テクニックや戦術部分が介入する余地が少ないため負けてしまう。


 故に、負傷させることなく良く逃げられたなと感心している。


 そして同時に、騎士のその思いは仕方ないことも察する。いや共感する。


 「……アイツは俺達の中でも特別なので、気にするだけ無駄ですよ」


 慎二自身、地球に居た頃は刀哉のことをどこか雲の上の存在のように思っていた。無論刀哉だけでなく、拓磨や樹もフィクションのような存在に思えたのは違いない。しかしその中でも刀哉は飛び抜けていた。


 完璧な人間だと言うつもりはない。だが全ての事柄において優れており、非の打ち所が無いのは事実だろう。


 純粋な能力。初見での技術や、その習得速度。記憶力や観察力など。そういった様々な要素を合わせた『総合力』ともいうべきものが、刀哉以上の存在を今の今まで……文字通り今この瞬間まで含めても、見たことがない。

 無論、刀哉にいきなり何かのプロと対決をさせところで負けるのは確実だろう。しかしそれは最初の一回のみ。その次、二回目ぐらいで既に刀哉は引き分けに持ち込めるか、下手をすれば勝利すら掴み取ってしまうかもしれない。


 特別親しくなかった慎二が持っている印象だけでも、それほど並外れた能力を持っているように感じたのだ。そしてそれが全てではなかったことを、この世界に来て、初めて刀哉と行った試合を通して察した。


 あいつは本当に、文字通り天才だ。確かに多少は慎二も拮抗していたかもしれない。だがそんなものは関係ない。

 慎二ではきっと、刀哉には敵わないのだ。


 「そういうシンジ様も、普通ではない。失礼ながら勇者様の中でも私に、いや、騎士に勝てる方はほぼ居ないですからね」

 「俺は……俺は夜栄じゃありません。俺にはあんな、化け物じみた力も何も無い」


 きっと目の前の騎士は、刀哉と慎二が対等なラインから始まったのだと感じているのだろう。少なくとも時間に関しては誰もがそう認識している。同じ時期に召喚され、同じように訓練に身を費やした。

 だがそうじゃない。先も言ったが慎二では刀哉には絶対敵わない。


 今の状態でどうにか拮抗? それすらも高く見積った評価だ。既に刀哉と拮抗など、それこそ既にレベルを上げた彼と同じ場所まで行ったとしても無理だろう。

 慎二と刀哉では、格が違う。その違いを自分自身が最もよく把握している。


 「……全然、対等じゃありませんから」


 慎二が騎士の前から離れる。何かを感じとったのか、それとも丁度訓練の時間が終わりとなったからか、騎士が慎二を追いかけることは無かった。




 ◆◇◆




 現在のルサイア神聖国王城における生活は、以前までのものとは少し変わっていた。


 訓練は変わらずあるが、行われる時間は短い。魔族が一度襲撃してきたことで、騎士団長であるグレイを含め、騎士団の警備体制が厳重になったのもあり、騎士団が訓練に割けるリソースが少なくなったのだ。

 また魔法訓練においても同様で、宮廷魔法師団の団長を務めるマリーが居ないことが多くなり、他の人間が代理を務めることもあるのだがやはり頻度や時間は減った。


 それ以外にも、彼らを担当していたメイドや、内政を担当していた高官など少なくない人数が魔族の襲撃の際に死亡し、少なくとも専属のメイドなどは居なくなった。


 こうして並べてみるとあまりいい環境とは言えないものの、それでも襲撃当初に比べればクラスメイトの様子は随分とマシになっている、と慎二は感じている。

 慎二が後押ししたとはいえ、拓磨などが出立したのは正直に言えばリーダー不在で不安でもあるのだが、何とか上手くやることが出来ていた。


 というのも……。


 「───門廻せど君、お疲れ様です」


 廊下の奥から歩いてきた人物が、慎二を見るなりそう挨拶する。

 

 敬語を使っているが、れっきとしたクラスメイトの一人、春風はるかぜみのりだ。元々女子の学級委員であることから、辛うじて慎二も会話したことはあるもののその程度の縁だが、現在はかなり話す間柄となっていた。

 その理由としてはやはり、慎二の補佐をしてくれている面が最も大きいだろう。


 「あぁお疲れ様。春風は……丁度見てきたところか?」

 「はい。昨日とあまり変わっていませんが、順調にケアは進んでいると思います」


 慎二もその言葉に返事をする。廊下の奥、慎二達が使う客室がある区画の方から歩いてきたということで、みのりが何をやっていたのかは明白だった。


 彼女は今はクラスメイトの精神状態の把握を務めてくれている。必要であればそのメンタルケアも。

 慎二達のクラスは現在訓練に参加できていない人間が存在する。というのも襲撃の際にクラスメイトである枢木くるるぎ蒼太そうたが死んでしまったことで、恐怖や絶望を覚えてしまったという話だ。


 地球では、単に事故死だったりするのならそんなふうになりはしない。しかしこの世界での死は特に残酷だった。

 クラスの半分以上は、蒼太が殺される瞬間を目にしてしまっていたのだ。胸を貫かれ、即死するその瞬間を見てしまった。


 人が死ぬ瞬間を見てトラウマになる人間など数多くいる。しかも厄介なのは、次は自分かもしれないという可能性があることだ。

 この世界には敵対する存在が沢山いる。魔物や魔族、同じ人間など、治安は日本などとは到底比べ物にならないし、その危険度も比較はできない。


 何よりこの安全と思われた城で襲われたことも大きい。覚悟など出来ていない高校生に、その仕打ちはつらすぎた。


 部屋に閉じこもり、一日を過ごす。そうなってしまうのも無理はない。病んでしまったとしてそれを責められるだろうか。

 慎二ならば……前の、地球の頃の慎二ならきっと、部屋に閉じこもっていただろう。当時の精神や思考を思い出し、それは避けられないだろうなと思う。


 慎二は別に精神が強い訳では無い。ただそう……そういった死に耐えるのも億劫になり、流しているだけなのだ。

 自身への苦痛を減らすために、そうせざるを得なかった。



 ともかく、襲撃当初はクラスメイトの半数近くが部屋にとじこもってしまっていたのだ。


 「……悪いな。せめて男子連中ぐらいは俺が見るべきなのに」

 「大丈夫です。拓磨君からも言われていましたし、ようやく学級委員らしいことが出来てむしろ嬉しいんです。今までは……私に手伝えることがあまりありませんでしたから」


 みのりは少しだけ苦笑いで言う。とはいえそれは仕方のない事だと思う。拓磨は能力が高い分一人でほとんどできるし、学校の行事ならともかくこういった状況では、学級委員とはいえみのりよりも刀哉や樹といった人間に手助けを頼むだろう。

 ぶっちぎりで能力の高いあの二人が補佐を務めたら、他にやることがないのは仕方ないことだ。女子のまとめ役としては手伝えたかもしれないが、その程度になるのは必然と言える。


 そして拓磨や刀哉、樹が居ない今、学級委員であるみのりに役目が回ってくるのもまた当然。本来であれば男子側は精神が正常である慎二がまとめた方が良いのだろうが、残念ながら慎二にまとめ役は荷が重かった。

 コミュニケーションに難があるというのは一つだ。元々慎二は明るい性格ではない。暗いと言ってもいい。そのため男子をまとめるとは言っても、精神的に弱っている相手への言葉など思いつくはずもないのだ。


 その結果としてみのりが男子までまとめている。慎二の役目はもっと別の部分、王女であるクリスに現状の報告をしたり逆に指示を仰いだり、訓練で教える側に回る事であった。


 「今は誰が平気だったか」

 「男の子だと、宮川みやがわ君や有村ありむら君、女子だとえんじゅちゃんや剣持けんもちさんが安定してます。あとは、鎮目しずめ君や繰上くりがみさんみたいにちょっと分かりにくい人も居ますけど……」

 「あいつらは元々口数が少ない。ただ、どっちも平気なように思えるけどな」


 鎮目みつるも繰上千聖ちさとも、寡黙な人間だ。だが慎二が見た限りではこういった事態に動揺するような人間には思えない。何を考えているか分からないところがあるのは確かだが、どちらも精神的にはかなりしっかりしている部類だろう。

 むしろ槐一実ひとみが安定していることの方が驚いた。特に交流があった訳では無いものの、グロい映画やゲームを怖がりそうなイメージがあった。見た目も小柄でクラスのマスコットのような扱いを受けていたが……ゴブリン退治をしたことで精神的に成長したのかもしれない。もしかしたら蒼太の死を直接見ていないのもあるのか。


 いや、それを言うなら目の前のみのりもまた強い。蒼太が死んだのを見ているはずなのに、こうして平然としている。いや、平然と、と言うと悪い言い方になってしまうだろうか。とにかく精神を病んでいるようには見えなかった。


 ───案外このクラスは肝が据わってる奴が多いのか。夜栄といい拓磨といい如月といい、そして俺のようなイレギュラーといい、集まりが普通じゃないのは確かだな。


 「今は凄く病んでるって人もいませんから、みんなきっとそろそろ復帰してくれると思います」

 「……そうだな」


 改善の方向へ進んでいることにみのりは嬉しそうな表情をした。確かにこのままいけばもう少しで元通りになるだろう。

 慎二も、皆の様子を見たのが皆無という訳では無い。現状の把握として男子の部屋ぐらいは一度訪れたことがある。その時の状況も、部屋に閉じこもりはしていたがそのぐらいで済んでいたのだ。


 本当に精神を壊せば自殺の選択肢が出てもおかしくない。自殺する勇気が無いだけ、ともいうがそれは自殺に踏み切るほどのことでもないとも取れる。


 みのりの期待通りとまではいかないかもしれないが、復帰までの時間はそう長くない。


 「そう言えばどう思う」

 「何がですか?」

 「蒼太の火葬だ───城の修復などもあったせいで遅れたらしいが、もうそろそろ準備ができるはずだ。皆で行ったほうがいいのか? それとも……」

 

 ふとその事から派生して、慎二は思い出す。

 既に襲撃から少なくない日数が経っているが、蒼太の葬儀は行われていない。というのも、襲撃で破損した城の修復や亡くなった高官の穴埋め、業務の引き継ぎなどがあり、また勇者の葬儀ということで他所に頼むことも出来ず、準備が遅れていたのだ。


 しかしそれも落ち着いてきた頃。問題は、蒼太の火葬に立ち会うかどうかというもの。

 参加することは可能だろう。グレイやマリーからもそう聞かされている。


 葬儀の意味としては宗教や所属する場所で大きく異なる。ある場所では死者を成仏させるためのもので、ある場所ではむしろ遺体に魂を留めるような意味合いを持たせることもある。

 葬儀の内容もそれに併せて変わってくるものだが、少なくともこの世界、この国では葬儀は厳かな雰囲気の中淡々と進められるものらしい。それは魂を肉体から解放させるという意味も含めている。

 火葬という点でも、日本とそう変わることは無い。内容で変わるとしたら、それこそ火葬場の設備が少し違う程度のものだろう。


 ただ果たして、その死から直りかけている人間を改めて蒼太の葬儀に立ち会わせた場合、それがどう出るのか分からない。もしかしたら当時のことを思い出してトラウマが蘇る可能性もあるのだ。

 蒼太のことを考えるなら、何となく縁のある者で見送った方が良い気もするが、そうも言っていられない。


 「……そうですね。でも私は参加するつもりです。あとは大丈夫そうな人にだけ参加の有無を聞いて、他の人には黙っておくのが良いのではないでしょうか」

 「それが確実か。俺は人の葬儀に出たことがないから、どうなのかと思ってな」

 「私も曽祖父のものにしか出たことありませんから。それも幼い頃であまり実感はありませんが……人によっては辛い可能性があるのも、確かだと思います」


 みのりの言うことはもっともだった。結局は当人の意思に任せ、明らかに難しそうな者には黙っているのがいいのだ。中には後からそれを知り後悔するものも居るかもしれないが、今の状況で少しでも蒼太のことを思い出させる方が酷というものだろう。


 慎二もその意見に賛成する。


 「そうだな。助かったよ。俺一人じゃどうするか決められなかっただろうからな」

 「いえ、私もその事を考えながら、結局結論が出なかったですから。門廻君から口にしてくれて考えが纏まった面もあります」

 

 みのりが「ありがとうございました」と感謝を口にし、慎二はお互い様だと首を振った。

 そうして慎二が、話を終えたのでみのりの横を通ろうとする。


 「───ところで、門廻君」

 

 しかし、背中を向けた状態で声をかけられた慎二は止まらざるをえなかった。先程までとは違う硬質な声音に、足を止めていたのだ。


 「なんだ」

 「門廻君は……枢木君が亡くなって、悲しいですか?」

 「……いきなりだな」


 火葬の話の後にするにしては、随分と空気が読めていない内容だ。クラスのまとめ役とも言える人間が露骨にそんな話題を出してくるのだから、そこに意図があるのだろうと思う。

 しかも、人の感情を疑うような質問。


 「少し気になったんです。私は枢木君の死を、大きく捉えることが出来ませんでしたから」

 「悲しくないのか?」

 「分かりません。少なくとも嬉しいとは思えないですね。元気でもありませんし……でも、涙が出たり、明らかな悲しみを感じることは無かったんです」

 「嬉しくないなら、そういう事なんじゃないか」


 慎二はみのりの言葉に、特に意味のある返事を返さなかった。


 「……いえ、何も感じないと言った方が良いでしょうか。さっきも言ったように嬉しくはありませんでした。けれど、かといった悲しんだ訳でもない。無関心に近いような思いなんです」

 「蒼太のことが、どうでもよかっのか?」

 「そんなことはないと思います……ないと思ってます。私は」


 蒼太のことをどうでもいいとは思っていないが、蒼太の死には何も感じなかった。

 どうやらみのりは、その感情の差に困惑しているようだった。知り合いなら何かしら思うはずだと、本人はそう認識している様子。


 「……すみません。私の話はいいんです。ただ、門廻君はどうなんだろうって気になっただけで。こう言うとあれですが、門廻君は他の誰とも違って、私に似ているように感じたんです。悲しみに耐えたわけでも、無理して忘れようとしているのでもなく……まるで、何も感じていないみたいに、思えて」

 

 他のクラスメイトは、基本的に蒼太の死を悲しんでいる。その大小の差や、死への恐怖の程度によって復帰出来ているかいないかの違いだ。

 一方で慎二はそうではない。死を乗り越えている訳でも、耐えてるわけでもなんでもない。みのりにはそんな風に見えたのだろう。


 「何も感じてないわけじゃない。蒼太が死んだことに関しては、悲しいと思う」

 「……そう、ですか」

 「あぁ。でも……」


 慎二はみのりの質問に答える過程で、自身のことを思い直した。

 確かに悲しいとは感じた。蒼太が死んだことで、悲しみが湧いたのは確かなのだ。


 でもそれを実感することは出来ない。今考えてみても『悲しいと感じていた』という過去の情報しか出てこない。具体的に何がどう悲しかったのか、精神的にどう変化が生じたのか説明できない。言葉にできないのでは無く、そもそも実感が得られない。


 その理由は、自分でもよくわかっている。


 慎二にとって蒼太の死は、だ。今更何を思おうが、その結果が変わることは無いし、蒼太の霊が出てきて怒ったり喜んだりする訳でもない。

 慎二は蒼太が死んで以降、『悲しいと思っていた』ということを思い出すだけで、『悲しい』と感じたことは一度もないのだから。


 それを言うことは出来た。けれど慎二は、みのりにそのことを伝えることはなく、何でもないと首を振ってその場を後にした。


 慎二のこの考えが、みのりにとって助けになるとは到底思えなかったのだ。そしてみのりも、慎二の言葉を聞き返そうとはしなかった。






 それから程なくして。慎二達は───蒼太の遺体が、保管場所から無くなったことを伝えられた。




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 これにて幕間終了! 8000文字と長めで申し訳ありませんでした( ̄▽ ̄;)

 さて次回からは本編第四章に入っていきます。一応あらすじ程度に言っておきますと、満身創痍で気絶した刀哉が宿に運び込まれた後からですね。

 次回投稿は、もしかしたら明後日に出来るかもです! 明後日か、もしくはいつも通りってところです。



 そしてこれは私事になるのですが、明後日の土曜日、6/5で誕生日を迎え、とうとう私も18歳になります。お陰様でこの歳を迎えることができました(?)できます(?)

 とにかくありがとうございます!

 そして18歳になるとなろうの大人用アカウントであるXIDを取得できるようになるんですね。そうなるとどうなるかと言いますと、ノクターンノベルズ等にR18のエッチなお話を投稿できるようになる!


 まぁ私本気のエロなんてほぼほぼ書いたことないのですぐになにか投稿できる訳じゃないですが……目標としてはこの作品のエロシーンをノクターンに投稿してみたいなと。例えば夢の中でクーファと戯れたシーンとか、レーティングの都合上カットした部分がありますからそこを書いてみたり。

 あとはこの先『朝チュン』的な展開があれば、その間の出来事を書いてみたり。そういうエロシーン集みたいなのを投稿してみたいなーと思っております!


 っと、後書きで長々と語ってしまい申し訳ありません。取り敢えずそういうことで!

 改めて、次回は明後日もしくはいつも通りです。

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