ガールズトーク
一日お休みいただきました申し訳ないです<(_ _)>
今回はめちゃくちゃ軽めに書いているので、軽く読み流してください。
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それは、刀哉が拓磨達と久しぶりに再会した日。一度迷宮へ行き、そして帰ってきたルリは、刀哉とは別行動をしていた。
そう、女性陣の部屋に居たのだ。
加えて皆が皆仲が良さそうなので、色んな意味でルリは肩身の狭い思いをしていた。
もっと言えば物理的にも肩身が狭い。両肩を縮こまらせているのはそういう意味もあった。
というのも、ルリはベッドに座る叶恵の上に置かれていたのだ。小柄な体なのですっぽりと叶恵の膝に収まり、抵抗できずただ固まる彼女はまさに置物状態と表現出来る。
もちろん、本当に何もしなかった訳じゃない。むしろルリはこの場ではほぼ初対面のようなものであるため、話の中心がルリとなるのは必然と言えよう。
主に「ルリちゃんって歳いくつなの?」「……見た目、よりは」とか「魔物と戦って平気?」「……問題、無い」なんて言うやり取りをしたり、その間叶恵に頭を撫で回されたり。
「───ところで、ルリちゃんは刀哉君とどういう関係なの?」
だから、そんな質問がくるのも必然と言えば必然だ。
「あーたしかに気になる~。だってルリちゃんは、刀哉クンに誘われたから一緒に来たんでしょ? 迷宮の時も思ったけど、凄く仲良いよね」
「今日もずっと近くに居たしなぁ……」
確かにルリと刀哉は仲が良い。いや、仲が良いというか、距離が近いというか……普通の仲の良さではないが、言っていることは事実だ。
「……仲間……家族?」
「家族!?」
「家族って……その、なんというか、随分と親しいのね」
美咲が少し動揺したように言う。
ルリと刀哉の関係だが、まず友達ではないと思う。友人関係と言うには刀哉もルリも、踏み込む領域が歪だ。
そして仲間、というのも少ししっくりこない。間違ってはいない かもしれないが、それだと冒険者や探索者としての活動をメインに捉えた関係に思えてしまう。
まだそう長い期間ではないが、プライベートも含めてほぼ全て共有しているところを考えると……やはり家族というのが一番近いだろうか。
もっと言えば、ルリがそう思いたかった。刀哉と家族のような関係であると思い、そう周りに知らせたかったのだ。
「……ずっと一緒、だから」
「そういえば、ルリちゃんは夜栄君と一緒に寝てるって聞いたなぁ。ホントなん?」
「……ん」
「ベッドも同じ?」
「…………ん」
「いや、いやいや、それは刀哉クンちょっと犯罪臭してない? 大丈夫?」
果穂の謎の心配に首を傾げるルリ。異性が同じ部屋、同じベッドを使うという問題点は分かるが、ルリにとっては両者の同意があれば何も問題は無いだろうという認識である。
そのため、果穂が何を心配しているのか思い当たらなかった。
───自身の容姿の幼さを全く考慮していないのは、仕方の無いことであった。
「大丈夫……じゃないかしら? 多分だけど……そういう趣味があるとは聞いたことないし」
「大丈夫大丈夫。ね、ルリちゃん。刀哉君変なことしたりしないでしょ?」
「…………ん」
叶恵が確認してくることに、ルリは少し間を空けて頷いた───変なこと、と言うのが何を指しているのかともかくとして、ルリには若干思い当たる節があったもののそれを悟らせるのは多分ダメだろうなと判断していた。
いや、実際に刀哉自身がルリに何かをしたことはほとんど無い。大抵の場合はむしろルリの方からだし、あとは寝相だとか不可抗力だとか、その程度のことだ。
しかしそれを含めるのであれば、変なことにはなっている。体を触られたり、触らせたり、見られたり、見せたり、当たったり、当てたり……変なことになりすぎな気もする。
とにかく、そういうことを他人に知らせるのはなんとなくダメだと言うのは分かるし、ルリも羞恥心はある。もっともなことを言って誤魔化しておくのが良いだろう。
「……じゃなかった、ら、家族なんて……言わ、無い」
「それもそっか……でも叶恵ちゃんにとっては結構やばいんじゃない?」
「えっ?」
「ほら『ルリちゃんに刀哉クン盗られたー!』みたいな?」
「え、えぇっ!?」
しかし果穂の言葉に、ルリは思わず肩越しに叶恵を見上げていた。少しだけむっとした表情で。
「だってぇ、昔からの幼馴染みなんでしょ? 学校でもすんごく仲良かったし、唯一スキンシップとかもとってるし、思うところあるんじゃない?」
「ないないない、ないよ! その、抱きついたりするのも、刀哉君は異性とは違うって言うか、昔から一緒にいるから距離感が近いだけみたいなもので……」
果穂に言われて取り乱す叶恵。どうやら叶恵と刀哉は凄く距離が近い事が把握できるが、ルリとしては当然それは警戒すべき内容だ。
「……トウヤのこと、好きなの?」
「る、ルリちゃんっ!?」
「そうだよね、刀哉クンと一緒に居るルリちゃんとしてもそこは気になるよね? ほらほら白状しちゃえ」
「そ、そんな……それは、もちろん好きは好きだけど……異性として見たことは無いし……だから別にルリちゃんと刀哉君が一緒の部屋にいても、気にしてないっていうか!」
「……そう?」
ルリが確認のために聞くと、うんうんと強く頷く。強すぎる首肯にむしろ嘘なのではないかと疑いたくもなるが、
「んーそっかぁ……」
果穂は期待していた答えではなかったらしく少しガッカリ気味だが、それ以上深く聞く様子はない。
「まぁ、刀哉君の話は一度終わりにして、実はルリちゃんに私の方から少し聞きたいことがあるのだけど」
そこで一度話題の転換を図った美咲が、言ってルリのことを見た。その合図で三人もつられたようにルリを見る。
「……?」
「いえその、少しデリケートな話になるんだけど、いい?」
「……よく、わからない、けど……」
どうやら言い出しづらい内容を口にしようとしている美咲に、ルリは首を傾げつつも頷く。
「えっと、その前にルリちゃんはその……
しかし『アレ』と聞いても全く思い当たるものが無く、ルリは分からないと困惑の表情をした。
「ほらその……
「…………ん、わかる」
その言葉を聞いて、声を潜めていた理由はそれかと納得した。
「……私、は、無いけど……」
「あ、来てなかったのね。じゃあ……わかる範囲でいいのだけど、他の人がどう対処してるか、分かる……?」
目を逸らしつつの美咲。その隣ではさりげなく聞いていた叶恵達が「あー」と言わんばかりに共感の顔をしていた。
実際に果穂が口にしていた。
「あー私も確かにそれは気になってた」
「……元の世界、じゃ、どうしてた、の?」
「あ、いえ、やり方はこの世界と同じだし、お城に居た頃はそんなに問題なかったの。ただ……痛かったりすると、戦闘どころか生活にも支障が出てくるじゃない? 怪我の痛みともまた違うから、耐えるのも大変だし……」
確かにその話は、幾ら同性の中とはいえ大きくは言えない。結局みんな聞いてしまっているので意味は無いが、少なくとも声を大にして、というのは難しい話題だ。
一見すると最も幼い容姿であるルリに、大人の体に近い美咲達がそういったことを聞くのは酷く不自然な光景だが、この場において、この世界での先輩は確かにルリであった。
「……冒険者、とかは、薬、買ってる、とか……痛み止め。結構効く……みたい」
「痛み止め……この世界の薬って効き目が高いイメージがあって怖いわね」
「でもルリちゃんの話だと皆飲んでるし、平気なんじゃない?」
「そうね……今度買いに行ってみましょうか」
ルリはその痛みを知識でしか知らないが、少なくともかなり普及している薬なのは確かだ。ルリ自身色々な店でふと目にすることも多く、使用することこそないが、期間中に激しい運動をする人には必需品と言っても良い。
ルリの知る知識と、異世界から来た勇者の体の仕組みが果たして合っているのかはわからないが……手順が同じならその仕組みも一緒だろう。
解決策が見つかったと、安堵の表情を浮かべている女性陣を見ながらその不安を胸の奥にしまう。
そのままデリケートな話題だっただけに話は流れ、話はまた刀哉の方へと向かっていく。というよりは、ルリの方が刀哉に関して少し聞きたいことがあったため、話題を持ってきたと言った方が正しい。
「……トウヤって……付き合ってる、人、とか……いた?」
「ん、どーなんやろなぁ。ウチはそうゆうの聞ぃたことないけど」
「私も。美咲ちゃんとか叶恵ちゃんは知ってるんじゃないの?」
「少なくともそんな話は聞いたことないわね。刀哉君、女の子と出かけたりすることは意外と少ないし、出かける時も大抵は拓磨とか樹君も居るから」
刀哉が元々付き合っている人がいたのかどうか。ルリはそれが知りたかった。
知りたい理由に関しては言わずもがなとして、それ以外にも以前寝言で口にしていた『カナミ』という名前が気になっていたのもある……がしかし、三人の反応的にそういうことは無いらしい。
「叶恵ちゃんは?」
「……」
「……叶恵?」
「え? あっ、えっとね……私も特には知らない、かなぁ……」
一方で一番刀哉のことを知っていそうな叶恵は、少しだけ考え込んでいる様子だった。果穂と美咲に言われてようやく意識を戻したものの、何だか曖昧な笑みを浮かべる。
「で、でもどうして?」
「……別に。ちょっと、気になった……だけ」
「気になった、ね……さては、ルリちゃんも刀哉クンのこと好きなんでしょ? そうでしょ?」
「……ん」
果穂がニヤリと笑って、恐らくはからかう目的で聞いてきたであろうことに躊躇うことなく頷くルリ。
その率直な答えに一瞬だけ沈黙の時間が作り上げられ、そして……。
「……家族の、意味で」
「あ、そ、そういう意味ね! ちょっと焦っちゃった私。流石に本気で刀哉クンのことが好きで一緒の部屋って、なんか危ないし? 間違いとか、ね?」
「…………間違い?」
「果穂の言うことは気にしなくていいわ」
ルリが続けた言葉でどこか安心したような雰囲気が取り戻される。ルリも自分の反応が少しダメだったなと悟り慌てて付け足したのだが、上手く誤魔化せただろうか。
いや、嘘をついた訳では無い。ルリは刀哉のことを家族のように好きだ。家族のように好きで……そういう意味でも、好きなだけで。
ルリの怪しい反応に若干の違和感を抱かれつつも、しかし少女達の会話は途切れることなく続いていく……。
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えと、幕間二話と言ったんですが、もう一話あります。というのも昨日投稿しなかったのは単にこのお話が書き終わっていなかったからなんですが、今日は逆に異常に書けまして、既に次の幕間も書き終わっているのですよ。しかも8000文字という長いやつ。
なので昨日休んでしまったお詫びも兼ねて、明日幕間をもう一話投稿させて頂きます。明日です。懐かしい投稿頻度だ……。
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