第47話


 投稿出来ました良かったです。


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 元々宿屋はいつ何かの用事で離れるかもわからなかったので毎日毎日代金を払っていたのだが、そのお陰でこちらの宿屋に移るのも即座に完了した。


 受付で今夜泊まる為に俺とルリの分の銀貨を支払って、宿屋の外に出る。


 この後は拓磨達が早速迷宮に潜るということで、どうせだから俺達も着いていこうと言う話になったのだ。俺達の方が進んでいるとはいえ、勇者の成長速度を考えれば共に行動していても問題は無いはず。


 「クリスは?」

 「ここからは別行動だ」


 そう言った先ではクリスがこちらに微笑みを向けていた。隣には護衛の人だろう女性が……いや。


 「彼女はメイドのサラさんだそうだ。城にいた頃はお前の担当でもあったな」

 「あぁ、そうだな。メイド服じゃないから一瞬誰かと思ったけど」


 その女性は俺の世話をしてくれたメイドのサラさんだった。クリスの横で深々と腰を折りお辞儀をした彼女は、少しだけ笑みを零す。

 こちらも頭を下げて理解している素振りを見せる。なるほど、メイドならば護衛も務まる……のだろうか?


 だがクリスの口振りでは他に護衛が居るようだったし、サラさんはどちらかと言うと護衛ではなく身の回りの世話のために着いてきているのかもしれない。

 まぁクリスも王族だ。ちょっとした魔法の教養ぐらいはありそうだし、実はそこまで護衛も必要ないのかもしれない。


 二人は俺達から離れ人混みへと消えていき、俺達も行動を開始する。


 拓磨達は既に探索者登録を済ませていたので、そのまま迷宮へと直行することに。ルリは集団での行動に少し窮屈そうにしていたが、こればっかりは耐えてもらうしかない。

 

 そうしてやってきた迷宮で、拓磨が止まる。


 「一応俺達は初心者故、折角なら刀哉とルリに少し迷宮探索の勝手のようなものを教えてもらいたいのだが、良いか?」

 「別に構わないが……そうだな、ならまずはチームを分けよう」


 俺はルリを見る。流石にルリに説明させるのは酷だろうか。何にせよ俺が担当すればいいので、少しだけ考えて、まずはと拓磨達に提案する。


 迷宮は俺とルリの二人で行動する分には広いが、流石に十人ともなると戦闘も満足に行えない。人数が多ければ有利になるのであれば他の人もそうしているはずで、実際のパーティーが六人ぐらいというのはその事実を否定している。


 「俺とルリはいつでも入れるようにするとして、拓磨、44よんよんでバランスよく分けてくれるか?」

 「あぁ、分かった」


 そう言うと、拓磨は迷うことなくすぐに指示を出した。全員の戦闘スタイルや能力を把握してるとしか思えないが、実際ここに来るまで戦闘が皆無な訳ではなかったのかもしれない。

 それに、もしかしたらルサイアに居た頃にゴブリン討伐も経験した可能性はある。ともかく拓磨は十秒とかからずチーム分けを終えさせ、他の皆も何か疑問や不満を呈すことは無かった。


 「俺と美咲に果穂と雄平、竜太と亜由美に樹と叶恵で分けてみたのだが、問題はありそうか?」

 「いや、平気だと思う。前衛と後衛は大体取れてるんだろ?」

 「問題ない」

 「オーケー。じゃあ……」


 拓磨の返事をもらって、ふと口を噤む。教えると安請け合いしてしまったが、果たして俺に教えられるような実績があるかと言われると微妙だ。俺もルリも、特別なことはせずに出会った魔物を正面から倒していただけで、強いて言うなら罠を警戒していたぐらいか。

 まぁでも基礎的な部分は何となくで分かっているつもりだし、ルリの方も何かおかしいと感じたら口にすると思われるので、いいのか。少なくとも何も知らない拓磨達に自力でやらせるよりは安全そうだ。


 拓磨達に必要かどうかは分からないが。


 「刀哉?」

 「いやなんでもない……最初は拓磨達のチームを先頭にして進もう。樹達は後ろについて、俺とルリが最後尾にいる。迷宮の大雑把な知識ぐらいはあるんだろ?」

 「それなら問題ない。出立前に樹が全員にわかりやすく説明してくれたのでな。ゲームにあるようなダンジョンと基本的には同じで、階段を見つけて下に降りていく。道中には魔物がいるから、相対したら討伐し、罠には気をつける……こんな所だろう?」

 「大丈夫みたいだな。ならさっき言ったように、最初は拓磨達が先頭で進んでくれ。魔物に出会ったら四人で対処、樹達は加勢せずに待機だ」


 でいいよな、という言葉は口の中で含む。曖昧な反応は不安をもたらすかもしれないので口にすることは無いが、それでもちょっとだけ教える側としてはスッキリしない。

 多分大丈夫だろう、いざとなったら間に入ればいい。そう考えることにして、歩き出すのを見送る。最後尾に居るのはもちろん後ろの警戒の方が前より難しいという理由からだが、積極的に教えることもないだろうなという思いからでもあった。


 「……平気、そう」

 「リーダーが優秀だからな。それに、の探索の仕方はそう難しくないと思う」


 拓磨達の探索のやり方は特に問題などない。多少の緊張感を持ちつつ進んでいるので不注意でもないし、警戒しすぎて足が遅くなっているわけでもなく程よいスピード。


 そもそもここは分かれ道こそあれど基本的には道を制限された通路なので、気にすることと言えば敵の位置と罠ぐらいだ。それも第一層においては見たことがないが。

 でも元高校生ということを思えば、明らかに動きはスムーズで慣れている。


 「───止まってくれ」


 すると拓磨が片手を上げて制止をかけた。これにも皆すかさず反応する。

 通路の角、今までは普通に進んでいた拓磨が何かを感じ取ったのか止まって指示を出し始めた。


 言うまでもなく魔物の気配。角を曲がった先にはゴブリン達が居て、このまま正面から会敵しても問題は無いと思っていた為何も言わなかったのだが拓磨はしっかりと把握していたようだ。


 「この先、四十メートル程度先にゴブリンが居る。数は四体。俺と美咲で先手を取って肉薄するから、雄平と果穂は後ろから魔法で援護を頼む。速攻で行くぞ」

 「わかったわ」

 「オッケー!」

 「……ふっ」


 と、三者三様の返事を聞いた拓磨は、それ以上様子を見ることなく美咲と顔を合わせて頷き合い、二人して同時に飛び出した。

 全速力で駆け出した二人に続くように雄平と神無月も角から出るが、二人は走ったりはしない。代わりにその場でバッと手を突き出した。


 「紅蓮の炎よ、我が力に応えここに集え───『クリムゾンスピア』ッ!」

 「水よお願い───『水刃ウォーター・ブレード』!」


 それは魔法を練るために意識を割いていたからなのだろう。飛び出した拓磨と美咲の頭上を追い越して赤と透明のそれは二体のゴブリンへと降り注ぐ。


 薄水の刃を放った神無月はともかく、雄平の零した魔法名は全く聞き覚えがないものだが、見た目から察するに『炎槍フレイム・ランス』だと思われる。スピアはともかく、真紅クリムゾンと言うほど『炎槍フレイム・ランス』の色は真紅ではないのだが、雄平は気分なのだろう。


 多分あの詠唱もいらないはずだが、魔法の大まかな下地はイメージに依存すると考えれば、彼にとっては無駄なことではない。


 どちらにせよ二つの魔法は援護と言うよりも決定打に近かった。炎の槍はゴブリンを射殺すと同時に焼き尽くし、水の刃は意図も容易くゴブリンの首を跳ね飛ばした。

 残りの二体のゴブリンがその状況の把握を完了させる間もなく、駆け出していた拓磨と美咲は武器に手をかけ始めていた。


 「───ッ!」

 「ハァッ!!」


 美咲は男女両方で見てみても類まれなる身体能力と運動神経の持ち主であり、剣道の経験もあってか剣術は相当上手い。

 そして拓磨に関しては言うまでもない。不意をついたゴブリンに対し手こずるなど有り得るはずがなく、振るった武器は何の妨害も受けずに振り切られた。


 剣の軌跡と、飛び散る鮮血。


 丁度そこで、十秒の時間が経過した。


 「鮮やかなもんだな。城に居た頃よりかなり練度も上がってる」

 「……一気に、進め、そう」


 ゴブリン相手に苦戦するとは全く考えていなかったが、この分ならどんどん進めそうだ。それこそ、パーティーというのもあるが、俺達が今やっている階層まで一気に進めたとしてもさして問題はないと思われる。

 

 まぁそこを決めるのは拓磨達だし、俺としては危なく思える。


 「お疲れさん、戦闘するまでもなかったな」

 「ふっ、俺にかかれば造作もないことよ……我が力の前にはゴブリン如き塵芥も同然……」

 「相手はゴブリンだもんねー、ま、余裕って感じ? 厨二病クンが手を出すまでもないんだけどねホントは」

 「ふんっ、俺とて貴様の力など必要は───」

 「え、貴様? 誰に対して?」

 「や、な、なんでもないです……」


 後衛の二人に近づいて声をかければ、予想通りの反応か。ゴブリンでは相手にならないのは確かに事実で、ただ慢心だけしないように気をつけて欲しいなと。

 まぁ何だかんだここに来るまでに戦闘を多少はこなしていたはずで、故にゴブリンを殺すことも容易くなっている。


 そういう意味ではここのメンバーは現時点でかなり上位の戦闘能力わ持っているのかもしれない。雄平が神無月の一言で口を噤むようなヘタレだとしても上位のはず。

 神無月は雄平には結構厳しいのだが、これはやっぱ厨二病という存在と相容れないからだろうか。こちらの世界に来てからか、何かと二人がセットで居る場面をよく見る。


 そして大体、こんな光景なのだ。


 「───やはり先手を取って即座に片を付けるに限るな。これが最も安全で効率も良い」

 「そうね。ここのゴブリンも弱くて助かったわ」


 反対に前衛組は上位どころかクラスメイトの中でもトップ。こちらは当たり前と言えるだろう。


 「全然問題なさそうで何よりだ。それに身体能力も結構上がってるんだな」

 「道中で魔物とも戦っていたからな、レベルが上がったのだ。とは言ってもまだ2、3程度だが。それより今の戦闘で刀哉の方から何か言うことはあるか?」

 「いや、さっきも言ったが何も問題は無いと思う。あとは樹達がどうだかってところだな」

 「だそうだが?」

 「心配はいらないな。竜太も亜由美も戦闘能力は高いし、叶恵は魔法のスペシャリストでもある」

 「肝心のお前はどうなんだ?」

 「中途半端の遊撃組だ」


 肩を竦めながら、でも卑下する感じではなくちょっとした謙遜に近いその言葉に俺はトンと肩を叩いた。


 「そう言いながらも、お前は何気男子の中でも運動神経が高い方だからな、期待してる」

 「いや、拓磨みたいにはなれんから真面目に期待は程々にお願いな?」

 「あぁ大丈夫だ、期待してる」

 「話聞けよ」

 「聞いた上で言ってるんだ」


 別に拓磨と同じように出来るとは思っていないが、拓磨に劣っていると思ったこともない。

 だから実際期待はしているし、せざるを得ない。


 それに、亜由美はマイペース故の安定性のある戦い方をするし、竜太は近接戦では無類の強さを発揮する。叶恵は近接戦闘がどうなっているのか想像がつかないが、少なくとも魔法に関してはトップクラスの才能を持っていた。

 拓磨や美咲のように目を引くようなものは無いが、こっちのチームの実力もかなり高く、どちらが強いかと言われたら分からないほどには拮抗している。


 見る前から、多分何も問題ないんだろうなと確信するには十分な判断材料だった。




 

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 次回は明明後日で! それでですね。


 そう言えば今日2月2日はツインテールの日らしいですねと。私はかなりツインテールが好きでして、Twitterのアイコンもツインテールの女の子なので今日は中々Twitterで挙げられる絵にホクホク顔でございます。

 また少し作品に触れますが、まだ夢でしか出てきてない刀哉の妹の金光や、神無月などもツインテールなのですが、こちらは趣味ですねはい。私の。


 どうせなので少しツインテールについて語りましょうか。それこそツインテール愛好者のやるべき事。


 えーまず、ツインテールには『原理主義的ツインテール』というものがありまして、こちらは、


1.髪の束が2本左右対称に垂れていること

2.髪の束の長さ(毛先)は肩より下まであること

3.髪の結び目は耳より上であること


 という三原則を作り、この三原則から外れている場合は、ツインテールっぽくてもツインテールとは違う呼称をとるという考え方? 提案? というものですね。ようは『これ以外はツインテールじゃなぁぁい!!』って考えです。はい。

 言い方悪いですがツインテール過激派ってことです。全然いいと思います。まぁ私はそこまで深く考えてませんが。


 とりあえずツインテールっぽかったらツインテールです。


 またツインテールにも種類がありまして、結び位置、テールの長さでそれぞれ3種類ずつあり、この3×3の9種類の掛け合わせによって全てのツインテールは9種類に分類されるようですね。


 ここでは種類の説明は省略しますが、先程挙げた二人のキャラは、どちらもラビットスタイルと呼ばれる最もツインテールらしいツインテールですね。見た目はセーラームーンの月野うさぎちゃんのような感じでしょうか。

 正確に言えばあそこまで跳ねていませんが……最もわかりやすい例を挙げるならということです。


 どっちもロリなのも、趣味です。

 

 更に厳密に分けると、神無月の方がゆるふわな髪質で、金光はスッと通っている感じですかね。


 まぁここまで語って何が言いたいかと言いますと、私はツインテール大好きですし、なんなら登場キャラほとんどツインテールにしたいぐらいな程にツインテール好きなのです……しませんししてませんけど。


 でもこの先もちょっとツインテールキャラ出したいなとは思っております。髪型も重要な特徴なので同じ特徴のキャラを多く出すのはあんまりなのですが、それでも出したいという思いがあるのですはい。


 以上、ツインテールの日なのでツインテールの解説に偽装して自分語りしてみました。皆さんもちょっとはツインテールに興味を持って貰えたらなと思います。

 あとツインテールキャラは例え敵として出てこようがどんな形で出てこようが絶対に私のお気に入りということですね。(もちろんそうじゃないからお気に入りじゃない、という訳じゃないです悪しからず)

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