第17話


 すみませんちょいオーバーかも?

 はい、お久しぶりです取り敢えずどうぞ!



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 ───その後は迷宮の中を一時間程度歩き回り、魔物を倒しまくった。とはいっても、比較的余裕であったので、疲れなどはそんなに無い。


 まず能力が圧倒的に優っているので、魔物の数が多くとも大した障害になり得ないのである。戦闘への精神的な疲弊も───俺は無い。


 凶器が体を掠める恐怖も、魔物に剣を突き刺し肉を抉る感触も、最初から気にしていなかった。

 ある意味で、余裕が無いのだろう。


 今はそれでいい。慣れでも麻痺でもなんでも、戦闘の負担が少なくなるならそれに越したことはない。


 それはともかく、ルリと共に居たのもあるが、この階層の敵は鎧袖一触と言っても良いほどに軽く倒せることが判明したので、試しとして必要な情報を得ることが出来た。

 この分なら次の階層へと向かうのも問題は無いだろうと判断しつつ入口へと戻ったのが、凡そ三時間程度迷宮内を歩き回った後だった。


 一時間程度のつもりが思ったよりも長居してしまったのは、俺のレベルアップの早さにある。


 「……勇者って、早いね」

 「この世界の標準を知らないけれども、流石にこうはいかないことぐらいは把握できるな」


 改めて、レベルを見てみる。今日迷宮に入る前が11で、現在が21……三時間で10も上がっている。

 無論、ゲームとしては遅い。序盤のレベル上げに三時間も取られていたんじゃバランス調整のできていないクソゲーであるが、ここはリアル。現実だ。


 レベルが100に行けば一流と言われている世界で、たった数時間で10も上げてしまうのは異常と言わざるを得ないだろう。もちろんこの先、指数関数的に必要な経験値───のようなものが増えていくのは想像に難くない。

 しかし、そうなったらこちらも相手を変えるだけ。魔物によってレベルアップに必要な討伐数も異なるのは確認済みで、ブルーゴブリンは魔物全体で言えば弱い方だ。


 強ければ強いほど経験値も多いというわかりやすい法則に従えば、例えを出すとドラゴンを倒した場合の経験値は、ブルーゴブリンの数十倍は最低でもあるだろう。


 数値としてのそういったものが無いのでこの世界の研究者が調べた大雑把な内容にはなっているが、つまり適性レベルの魔物を倒していれば、効率を落とすことなくレベルを上げることが出来るわけで。


 その上でブルーゴブリンやゴブリンメイジなどのゴブリン種を三時間倒していただけで20レベルを超えてしまったのは、迷宮という魔物製造機の中だったことを加味してもヤバいらしい。


 流石は勇者、と言うべきか。成長に必要な魔物の数が少ないのは勇者であるという部分が強いはずで、そのパラメータの上がり具合も勇者補正によるものなのだろう。




 迷宮の外に出た時も再び許可証を提示しなければいけないのだが、その時チラリと見てみれば、『到達階層』という項目に『第一階層』という文字が追加されていた。

 入る前はこんな文字は無かったので、迷宮内へと足を踏み入れたことがトリガーだったのだろうか。どういった原理か、何らかの方法によって自動で到達階層を記してくれるらしい……お手軽量産できそうな探索者カードにそんな機能があるとは、ハイテクだ。


 それはそうと、時刻は夕方。茜色の街はそれでもなお、いやむしろこの時間帯からより活気に満ち溢れるようで、ただでさえぎゅうぎゅうだった通りの人口密度が更に増したように感じる。

 

 「迷宮から帰ったら、まずは魔石を売るのが良いのか?」

 「……じゃない?」


 生憎とこんな生活を送ったことがない俺は勝手が分からないのだが、ルリの曖昧な肯定を貰ったので探索者ギルドに向かうことに。

 魔石自体は結構な数がある。とはいえ、迷宮内の魔物の遭遇率を考えると、あまり高くは買い取って貰えないだろうとは思っているが。


 たかがゴブリンの魔石。溢れ返っていて需要も無いのではないか。




 「───はい、こちらで全部ですね」


 探索者ギルドについて魔石を納品するのは非常に簡単だ。そもそもそれ専用の区画が設けられている。

 アイテムバッグから魔石をピンポイントで取り出すのは、数が数だけに大変ではあったがそれはそれ。レジを前に小銭を財布からせっせこ取り出すように頑張ったとも。


 まぁ、軽く100はありそうな魔石は一つ一つは小さくともトレイから溢れてしまう。だが向こうも手馴れたように大きめのトレイを持ってきて乗せ直し査定を開始したので、どうやらこの量は非常識という訳では無いらしい。

 少ない方、ということはないと思うが、このくらいもあり得るとなると、今日だけ運が良かったということではなく、迷宮というのは総合的に見て魔物との遭遇率が高そうだ。


 そうやって待っていれば、職員さんは硬貨を入れた袋を俺に手渡してくる。


 「ブルーゴブリンの魔石145個、ゴブリンメイジの魔石53個、レッドゴブリンの魔石20個の納品を確認しました。こちらをお受け取りください」

 「ありがとうございます」


 礼を言って受け取れば、多少の重み。入っているのは銀貨七枚に銅貨が数十枚の様子。


 ちなみにだが硬貨の種類は銅貨が一番下で、その上に銀貨、金貨とあるのだが、どうやらお金自体に単位は無いようで、金額を表す時は『銅貨〇枚』などと言った表し方になる。

 一応数度携帯食などを購入した感覚としては、銅貨は100円ぐらいの価値に思える。銀貨は宿屋で数枚単位で使ったので、千円と言ったところか。そして金貨は一万円と。


 それに換算するなら、今日は時給三千円程度の仕事をやったと考えたらわかりやすいだろうか。


 果たしてこれを安いと見るべきか高いと見るべきか……少なくとも俺たちは明らかに戦闘時間が短く手間もかかっていないので、満足度としては高い。


 これからは基本、クリスに貰ったお金には手をつけずに自分で稼いでお金を払っていくことになりそうだ。出世払いとは言ったが、早いうちに返せるのならそれに越したことはない。

 

 「ルリはお金はどうする?」

 「……トウヤ、に、任せる……基本、一緒に居る、し」

 「了解だ」


 と、二人で稼いだというか、ルリの方が明らかに働いてくれたのでお金を分けてみるかと提案するが、ルリは首を降って拒否。確かに基本一緒に居るので俺が持っていれば問題は無いのかもしれないが……。


 「必要になったらいつでも言ってくれ」

 「……ん」


 ルリはあくまで俺についてきてくれているのだ。要望があるなら基本何でも応えて上げるべきだろう。


 


 ◆◇◆




 初めての街に着いた時、何をするかと考えてすぐ宿に向かってしまう俺はもしかしたら観光が下手なのかもしれないと思ったりする。

 しかし、あの人混みの中ルリと共に移動するのは大変で、もっと周りをゆっくり見ながら歩ければいいのだが、まずルリの目に入るのは他の人の腰から背中ぐらいの部分だけだろう。


 その状態では観光も何も無い。俺は辛うじて見ることが出来るが、それだって落ち着いてのものでは無いし、少しここは人が多すぎる。

 夕方辺りに出歩くなら少し細い路地とかの方でなければ中々難しいだろう。朝早ければ表通りも空いてそうだが、それは明日の話である。


 もっとこう、わかりやすい観光スポットがあればいいのなと思ったりしつつ結局いつも通り宿に向かった俺達は、いつも通り二人一部屋で通された。

 通されたというか、通した。流石に俺も慣れたと言おうか、チラっとルリの方を見て俺の方から頼んでしまった。


 「一応言っておくと、変な意味は無いからな。ベッドが一つなのも偶然だし、今更別の部屋にするのもと思っただけで」

 「……言い訳?」

 

 確かに言い訳だけども、そうハッキリと聞かないで欲しい。

 ルリは少し首を傾げて言う。ただシングルになってしまっているのは本当に偶然だ。部屋のタイプなんて聞かれなかったし。


 しかし、何故こうルリが部屋にいる事が当たり前になっているのか。少し作為的なものを感じるような気もするが、どちらにせよ確認を怠ったのは俺だし、確認していてもそんなに変わらなかった気はする。


 部屋の中を確認して、しかし特に落ち着くこともなく。


 「そうだ、夕飯を外に食べに行くか。それなら歩く目的もあるし」

 「……私は、別にいい、けど……近くに、ある?」

 「宿の人にでも聞けば多分分かると思うが、まぁそれはそれだ」


 折角なので夕飯は食べに行こうと、話を誤魔化すのも兼ねて口に出してみる。別に宿内の食堂で食べてもいいが、どこかレストラン的な場所に行ってみたい。

 ぶらぶらと歩くことは出来なくとも、そういった店を探して歩くぐらいは出来るだろうという魂胆だ。あと、少しだけ贅沢もしたい。


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 カクヨムではこの前投稿が出来ていなかった都合上前書き後書きに書かなかったのですが、本来の予定より投稿が遅れたのはプロセカというアプリにハマってたせいです。前話の本来の投稿予定日が10/1で、その前日にそれがリリースされまして……めちゃくちゃハマってたから五日ほどお休みを頂いてました。

 そしてその五日の休み明けが現在なわけですが、未だにプロセカの波が引かなくて大変です( ̄▽ ̄;)


 一応何とか書ききりましたが、まだ収まってないよ今日も普通に4時間以上やってるよ……今日でリリース1週間ですが合計時間20時間超えてるよ多分……。


 まぁでも流石にこれ以上伸ばすのはなぁと思っているので次回はまた明後日辺りといつも通りにさせていただきます。プロセカ、スマホにダメージ入りますしね。

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