2「どんなとこにいるはずもあるのか」


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 ぼくは、かのひとと連絡を取ろうと試みた。ネットで。断片的な情報でググるが、当然のように、見つかるはずもない。

 断片的といっても、格闘ゲームの巨大掲示板程度だ。

「ニシタマ地区のハガー市長の達人の人っているー?」

 レスはつかない。

 今思い返すと、かの女はメールアドレスも、ネットでなにかやってるかも、全く話題に出さなかった。

 いまどき、暗殺だかに関わっている人間なら当然かもしれない。

 また、かの女は変装の達人だった。

 ぼくと出会った時の髪型は地毛であるクリーム色のなめらかに伸ばされたワンレングスだったが、黒髪ボブカットに見える変装もしたことがある、とかの女自身が自慢げに言っていた。イメージの全然違うメガネと短めのポニーテールでどこかの高校の制服だったこともあるようだ。

 その変装も、今思えばぼくには、そんな格好をした人が視界の端に居たような気がするのだった。

 そして、変装はそれだけではない。

 文字通り「匂い」をも付け替えていたのが明らかなのだ。それもかの女自身から聞いたが、

「万が一においを覚えられても、なるべく印象に残らない、別の香りを身にまとえるのよ」

 とのことだった。

 そのあたりを考えたとき、ぼくは絶望的な気分になった。

 すれ違う人、人、人、みなかの女のように思えるが、そんなことはありえない。

 いや、ポジティブに考えることもやってみよう。

 人と会うにはどうしたらいいか?

 ふつうなら、「連絡して約束をする」だろう。「誘う」だろう。「募集する」だろう。

 募集する? ホームズの『赤毛連盟』みたいな解決法もあるかな?

 それは、さすがにない。

 要するにこっちからメッセージを送りつけるのはほぼ不可能だと思える。

 さて、それでは、向こうからのメッセージになってしまった何かがあるのではないだろうか?

 いままでのに。

 はたして二〇分ほどの思案後、やってみる価値がありそうなものを思い出した。

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