第41話


「休憩時間も終わりましたところで、第二戦の内容についてお話しさせていただきます。


第二戦は、謎解きとなります。各チーム選手を四名出していただきまして、こちらにある転移魔法陣に乗って移動してもらいます。


残った選手の方はこちらのモニターで見学という形になりますのでよろしくお願いします」


センコウによると、次の対戦は謎解きらしい。

会場が異なるということで、参加する人は次は移動しなければならない。


「四人か…次は誰が行く?」


ジルはみんなに話しかける。


「私は遠慮しておくわ。さっきの試合で目をつけられていそうだし。余計に疲れるのは得策じゃないもの」


「確かに、アイシャは一番目立ってたな」


「ぷぷ、アイシャってばジルみたいなこと言ってる!」


「ちょっと! ジルと一緒にしないで頂戴! 私は戦略的に話をしてるのよ!」


「ごめんごめん、あんまり怒らないでってば」


アイシャはチラリと他のチームの方に目を向け、自分が注目されていることを確認する。

第一戦においては他を寄せ付けない活躍っぷりだったから他のチームが警戒するのも頷ける。


彼女の性格上、好きで目立っているわけではないのはわかるのだけど、結果的にそういう雰囲気になってしまう星の元に生まれたんだろう。


こういう場でなくとも、気づけば話題の中心にいることが少なくない。


「私もやめておこうかな。頭を使うのは苦手じゃないけど、今はちょっと遠慮しておきたいかなって」


エリンも参加しないようだ。彼女は先ほどの休憩時間からアイシャと話し合っていた。おそらく、反省と新しいことのアドバイスでももらっているのだろう。


もしかしたらまた母さんの弟子が増えるかもしれないと思いジルは少し気が重くなった。

修行に耐えられれば強くなれるのは間違いないのだけど、耐えられるかどうか…何人か脱落していったのを見ているだけあって心配だ。


ちなみにアイシャは脱落することなく今もなお母さんからの教えを受けている唯一の弟子だ。他の人たちはそれぞれ独立というか一人立ちしてしまっている。


「あたしは参加するわ。さっきの対戦じゃ何も活躍できなかったもの。ここで切り替えてアピールしないと!」


「俺ァパス。頭より身体を動かしたい気分だからな。ここで黙って観てる」


カレンは参加する気持ち充分。反対にガジは不参加らしい。

なんでも出てやると言っていたが、やっぱり頭を使う系は嫌なんだなとジルもキャロルも苦笑する。


ここでまたカレンとガジの口喧嘩が勃発するのではないかと思ったジルだったけれど、予想に反してそういったことはなかった。


カレンが先ほどの試合を引きずらないように心がけていたのはみんな分かっていたため、ガジも余計に食ってかかったりしなかったんだろう。


「優しいところもあるじゃないか」


「ああ? 何がだよ?」


「いや、カレンに食ってかかったりしなかったなって」


「…負けんのが悔しいなんて誰だって一緒だろうがよ。本気でやってた奴を冷やかしたりしねえよ」


「そういうところがいいヤツだよな」


「うるせえ」


ガジの肩を軽く叩くと、綺麗なキックが飛んできた。

ジルはそれを軽く避けて、ガジの方を見て頷く。ガジは苛立ったが、それ以上何かしてこようとはしなかった。


アイシャにエリン、それにガジが第二戦に不参加となると、必然的に誰が行くのかが決まる。


「そしたら、俺とキャロルとラシューの参加になるけど、二人はどう?」


「は、はい。苦手ではないので何とかなるかと…」


「僕も大丈夫です」


キャロルとラシューが頷いたのを確認して、第二戦でのメンバーが決定した。


「じゃあ今回はこの四人でやってくわけだ。よろしく頼む。あ、なんか俺が仕切ってるみたいになってるんけど、もし嫌だったらやめるよ?」


「あたしは気にしてないわ。前もそうだったしね」


「私も、むしろありがたいというか…」


「僕も気にしてないです」


「そっか、じゃあとりあえずこのままでいこう。何かあったら臨機応変に交代ってことで」


ジル、カレン、キャロル、ラシューの四人はセンコウの元に移動する。

他のチームの参加者も移動を始めたようだ。


緑チームは先ほどアイシャと戦っていた女は今回は出ないようだけど、ズールー侯爵の息子のシタテは出るようだ。


先ほどアイシャに殺されかけているものの、参加しないとアピールできないのと、今回はアイシャがいないから出てきたのだろう。


ジルは自分以外の三人を見て比較的頭脳派が揃っているから大丈夫だろうと結論付ける。

ジル自身は頭の回転は悪くないけれど、最終的に力で何とかしたほうが早いと思っているので、こういう競技には向かないと感じていた。

けれど、最悪何もしなくてもみんなが何とかしてくれるという精神で参加している。


「それではルールの説明をします。


みなさんにはこれからここにある転移魔法陣でこの大学校の地下に作られている巨大な迷路に富んでいただきます。


みなさんの目標は迷路の中の謎を解き、奥にある転移魔法陣でここまで帰ってくること。一番最初に帰ってきた人のチームが今回の第二戦の勝者となります。


迷路は様々なカラクリでみなさんの行手を阻もうとしてきますので、それを潜り抜けゴールを目指して頑張ってください。


それでは、検討を祈ります」

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