桜の樹の下には

作者 郡冷蔵

男の邂逅したのは【彼女】か【それ】か

  • ★★★ Excellent!!!

「桜の樹の下には死体が埋まっている」
有名な言葉であり、梶井基次郎の小説のタイトルだ。梶井の作品のように、この小説の男は桜もとい花の美しさについて、たまたま出会った少女に語られる。
「道に咲く花より、墓に添えられた花の方が綺麗でしょ?」
なるほど、言い得て妙だと思わされたのは私だけだろうか?
この作品を初めて読んだ時、自分はオフィーリアという絵画を思い出した。
美しい水死体のそばに添えられた花。【それ】と化した【美女】のそばに散り散りとなって添えられる桜は、風に乗って弔い花のようになる。
死というものは現実にすると猟奇的で目にしたくないものだが、芸術に脚色すれば誰もがその闇を覗きたがる美へと昇華するのだ。
いつかあなたも死を美化した芸術に目を凝らす日が来るでしょう。
そう思わずにはいられない作品だった。

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