奈落の神の福音

作者 J@オルカ船上特別市

171

59人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

 ジャンルをどれにくくるか難しそうな作品ですが、どんなジャンルであろうとも、そこに人が生きているのなら、それは全て人間ドラマではないかと気付かされる作品。何かのジャンルに括るなら、舞台的にはSFにするしかないという感じでしょうか。

 科学で色々な不可思議なものが解明されている時代にあって、絶滅危惧種の最後のファンタジーともいえる呪術師と共に、日本が世界に誇ほこる船上都市「オルカ」というSF都市で起こる各種事件の解決と、それに関わる人々の物語。

 主人公は呪術師の江破鏡子、もう一人の主人公ともいえる百目鬼由佳を主軸に進みます。呪術師というからどんなクールなキャラと思いきや、作中一番能天気そうな明るいキャラだというギャップがすごいです。

 こんな感じで登場人物の個性が際立っていて、彼らが彼らであってこそという場面も多く、それぞれの傷と向き合いながら事件を乗り越えていき、やがて面倒な敵に立ち向かう事に。

 霊を取り扱う物語のため、命に向き合うべきシーンも多いですし、人が生きるという事、生きている事で成し遂げよう足掻いてしまう事柄。業と呼ぶにふさわしい魂から突き上げて来るような衝動に、登場人物は従いながら生きていく。

 生と死。人生と歴史。理想と現実。
 自分自身と向き合い、こうあるべきだと貫く強い意思。
 
 読後に色々な想いを馳せさせる名作です。

★★★ Excellent!!!

オカルト要素より、人間模様が魅力の作品ですね。
理不尽な「生き残ってしまった」という罪の意識。
自身の才能を信じることは素晴らしいけど、それが他者を不幸に突き落としてしまうということもある……。
そんな、色々な人間模様。

おどろおどろしい悪霊と、強力な霊能者がバチバチ呪術戦を繰り広げるシーンが無いわけではないのですが、メインはそこだと思います。

複雑な人間心理から来る、一筋縄でいかない人間模様が楽しい作品です。

★★★ Excellent!!!


 今から200年後の未来都市。すべての災害から逃れるために海上に建設された船上都市「オルカ」。そこには、人類最後といわれる呪術師が生き残っていた。
 魔術すら科学で解明されたこの時代において、いまだ解明されていない魔呪術。それを駆使して探偵業を営む最後の呪術師・江波鏡子。
 彼女は、すでに解体された呪術カルト教団によって未来の教祖として作り上げられた呪術のカリスマだった。


 まず本作で注意してもらいたいのは、ジャンルはSFではあるが、内容はSFではないところ。200年後の未来であるとか、作り上げられた船上都市であるとかは、物語のリアリティーを緩めるために設置されたアクセサリー程度にしか機能していない。
 もっとも、このアクセサリー程度の設定が、じわじわと効いてくるのであるが。


 内容は、探偵業を営む江波鏡子のもとへ監察官として派遣された百目鬼由佳の視点から語られる。
 ものすごく平凡であると見える百目鬼由佳。
 いっぽう全身タトゥーに覆われた赤髪金目の呪術師・江波鏡子。
 そして彼女の助手の頭脳明晰だが非人間的な秘書・甲斐谷。

 物語は彼ら3人が、江波鏡子の交霊術によって、数々の事件を解決してゆく一話完結形式。


 本作はとにかく呪術師・江波鏡子のキャラクターが素晴らしく、一見の価値ありだ。
 少々きつい評論になるかも知れないが、第1話である第1章が一番つまらない。というと言葉が悪いが、この第1章だけでは作品世界が十分に説明されていない。だから、ここで離脱せず、続きを読むことをお勧めする。本作は正直、スロースタートである。

第3章、第4章と物語を進めるうちに明かされてゆくキャラクターたちの過去。ひとつひとつのエピソードで描かれるドラマと、生きることに対する作者からのメッセージ。

 ただし、呪術師である江波鏡子は、死者と交感し、そこに秘められた謎を解き明か… 続きを読む

★★★ Excellent!!!


 科学が進歩した近未来に建造されたオルカ特別船上市……。しかし、そこで起こるのはオカルト的な事件の数々。
 探偵にして呪術師である江波、秘書の甲斐谷、
探偵局の新米監察官である百目鬼由佳は、事件を解決する為に奔走する。


 魅力的で不思議な世界観が織り成す物語は、由佳視点を中心に進んで行くのですが……これがまた絶妙な文章構成です。
 気取った小難しさは一切なく、かといってありきたりな文章とは違う。作品の世界観を余すことなく捉えることができる巧みさは流石と言えます。

 また世界観はしっかりと組まれていて、オルカ特別船上市という特殊な舞台、そして登場人物達の背景等も楽しみながら読める秀逸さ。

 私の感性では間違いなく書籍化レベル……いや、アニメで見たいとさえ思える傑作です。

 スピンオフも描かれている本作……是非とも読んで頂きたい作品ですね。

★★★ Excellent!!!

ちょっと先の未来。世界は「こうなっているだろうな」と鮮明に思わせてくれる都市形態の一つとして、現実味の高い設定を作者は仕掛けてきた。地球での生活と似てはいても一線を画す船上特別市は、様々な人種とヒエラルキーが混ざり犯罪率と検挙率のバランスが上手く機能していない。そこで出番となったのが異能の力を持つ奈落の神であり、物語のキーパーソンでもある。

しかし、神も人の子。生まれてから今に至るまでの経緯は他と違えども、人としての根本的な想いというものは持っている。そこを上手く描写する作者の筆力が凄い。神を取り巻くキャスト陣の人間味溢れる心情の描写も、時に面白く、時に鋭く読み手の心を揺さぶり、作品全体の魅力を高めている。物語の舞台やストーリーの構成など、枠組みとなる部分がしっかりとしているのは勿論のことだが、何よりも「人」の心の中にある光や闇を描く力が圧倒的に強かった。

複数の短編に分けて様々な事件と向き合いながら、色々な意味での「家族の絆」を教えてくれる魅力的な小説で、一度とは言わず何度も繰り返し読みたくなる。いつの日か、オルカ船上特別市という名が世界的な固有名詞として広く知られることを願いたい☆


★★★ Excellent!!!

今よりも、科学技術の発展が極まった未来――二二二一年九月三日。
人類は海上に都市を造り、そしてその都市の上に、さらなる繁栄を築こうとしていた。

その科学技術の粋というべき、船上特別市・オルカにて。
ファンタジーの末裔ともいうべき、世界最後の呪術師・江破鏡子は、霊と語らい、呪術を操り、犯罪を追う。美貌の秘書と、頼れる用心棒と共に。

呪いともいうべき運命を背負い、江波鏡子は、どこから来て、どこへ行くのか。
ファンタジーは、ミステリーとなり、生き延びるのか。


推理小説でもあり、人間ドラマでもあり、そしてこれは未来の伝説でもあると思います。

★★★ Excellent!!!

近未来。オルカ船上特別市を舞台に、最後の呪術師とそれに関わる人たちのヒューマンドラマでもあります。
ジャンルはSFとなっていますが、死者の魂や生霊を呼び出して事件を解決するという部分はファンタジーでありミステリー。
ですが、それら区分けに囚われることなく、章ごとで一つのお話として面白く読み進めて行けます。

自身の持つ最後の呪術師という宿命を理解しながらも飄々としている江破。
自身では自立した大人であると思いつつも家族を避ける百目鬼。
このダブルヒロインを支える甲斐谷にもまた……と登場キャラそれぞれの深い背景が物語の厚みとなって終盤に結実します。

重みのある主題を解き明かしつつも、コミカルなやり取りもあって重すぎず。
それが必要だとはいえ、完結してしまっているのがもったいなく思う作品です。

★★★ Excellent!!!

オルカという都市の独特な雰囲気が、まるで自分もそこにいるかのように文章によって立ち現れます。
そのなかで働く視点人物の由佳、最後の呪術師の江破、彼女をサポートする甲斐谷、と一癖ありすぎる人々がメイン。
重量感のある設定なのですが、一章ごとに事件が完結する構成も手伝ってスイスイ読めます。
お世辞にも清く正しいとは言えないメンバーたちが、不思議な絆を醸成し、得体のしれない敵に立ち向かっていく事件の先を見届けたくなります。
それぞれ人間離れした彼女たちが、ふと人間らしさを取り戻す家族のエピソードも巧みに取り込まれていて、キャラクターの内面の描写も高クオリティな近未来SFです。

★★★ Excellent!!!

 (第1部までを読んでの感想となります)

 まず、近未来を背景にした物語としての魅力に溢れている作品だと思いました。

 現実としてのリアリティを活かしながらも、現代ではない社会システム、文化などが細かく話の中に溶け込んでいて、より物語に深みを与えている印象を受けます。

 そして、最後の呪術師……科学の発展と共に、神秘の存在が薄れ、それが更に加速化した時代に一人取り残されたとある人物と接することで、その周りで起きる事件をハードボイルド+サイバーパンク風味で紡いでいく物語の雰囲気に引き寄せられました。

 また、登場する各人物たちの個性と背景がしっかりしており、その絡みが面白いのも特徴の一つです。
 特に台詞などは、改めて考えさせられる意味深なところや、異常に格好いいフレーズがあったりと、そんな表現の上手さと上品な筆致は一見の価値があると思います。

★★★ Excellent!!!

ミステリーにオカルト的要素を加えただけでなく、SF的な切り口も含めた力作です!

呪術師がどの様に事件を捜査するのか? と思ったら、いきなり真っ向勝負で驚きましたが、それからの展開にナルホドとなります。
あとはどうやって犯人を追い詰めるかは読んでからのお楽しみ!

なかなか難しい題材を扱っている筈なのですが、スピード感と説得力のある展開に嵌まりました。

事件の深層には世界感全体に関わる「謎」と「敵」が見え隠れしてストーリーの深みを与えています。

いやあ、この作者はスゴいぞ!

★★★ Excellent!!!

科学の発達とともに捜査に霊能力が取り入れられるようになった世界。
探偵局の新人、百目鬼由佳の視点から語られるその日々の物語です。

明確な目的はあっても派手なアクションや魔法を撃ち合うようなバトルがあるわけではなく、そこにあるのは人の営みでした。

語らい、食べ、仕事をしながら年月を経て、親と諍い、そして誰かが死を迎える。
たとえ死者を相手に聞き込みなどしようとも、ごく普通の、生活感あるやりとりや情景が魅力的です。

各エピソードが短く区切られているので、読んでいてもだらけることがありません。
正月休みなどに、一日一エピソードと言った調子でゆったりと、噛みしめて読んでいただきたい笑いあり、涙あり、最後には一抹の切なさと爽やかさが残る良作です。

★★★ Excellent!!!

現実世界には無い呪術などを用いながらも、淡々と事件を捜査するそれは、プロファイリングの先にある別次元の捜査法とも言えるだろう。しかし、中身はしっかりとした探偵物で、ハードボイルドな推理小説が好きな人でも楽しめる作品になってます。
 重厚な探偵小説をご覧になりたい方は、是非読んで見て欲しい。

★★★ Excellent!!!

世界観は今から200年後のいわば未来を書いたSFですが、警察や探偵局などの科学技術を用いた現代風文化と、降霊術や呪術などの非科学的な話が相まって、独創性があります。上手にドッキングされているので、読みごたえもあり、次の展開が気になりました。
応援してます!!!

★★★ Excellent!!!

作品を読んでいただいたご縁で、この物語に出会いました。

近未来を舞台にした推理物。そこに少しのファンタジー要素が入りますが、その加減が絶妙。
推理物では大切な、事件に関わる人々の人間模様あっての物語になっており、ファンタジーがあっても全く違和感がありません。
また、それぞれの登場人物達の背負う過去も練られており、その過去があったからこその個性あるキャラクター達。そして彼らのやり取りも、小気味良く、とても読みやすいものとなっております。

ラストの盛り上げ方も上手く、読み終えた今は凄く良い気分です。もう一周しようかな。
他の皆さまも是非読んでみてください。

★★★ Excellent!!!

今より少し未来の日本。
巨大な船上に作られた実験都市オルカで、新人の監察官、百目鬼 由佳は探偵業を営む呪術師と出会う——。

全体としては非常に緻密で硬質な文章でシリアスなシーンが語られているはずなのに、随所で飛び出す絶妙な言葉の組み合わせと登場人物たちの突飛な台詞回しで、気がつけば思わず爆笑してしまうという不思議な作品です。

呪術を使って事件解決をサポートする探偵をはじめ、登場人物たちは語り手の由佳を含めて、(本当にびっくりするほど!)圧倒的な個性を秘めています。

前半はどちらかというと軽妙な語り口で笑いを誘われ、テンポよく展開する物語に引き込まれますが、だんだんと江破の素性に関わる部分が明らかになってくることで、否応なしにその運命に巻き込まれていく仲間たち。

それだけでなく、登場人物一人ひとりの抱える心の闇というか——縺れた人と人との関係性が丁寧に描かれています。

ともすれば、読んでいるこちらの胸にまで重くのしかかりそうなそれを、けれでも、彼らはお互いにほどよい距離でそれを時に見守り、時に支えることで、重苦しくなりすぎず、暖かな希望をまだ感じさせてくれます。

後半からは、いよいよ姿を明確にした邪悪な敵との戦いが始まり、江破さんの軽やかさは変わらないものの、次第に緊迫感が高まっていき、そして、映画のようなクライマックスへ。
ラストは、ああ……と思わず声が出てしまいました。これしかない、という見事なエンディングだったと思います。

何を書いてもネタバレになってしまうのですが、最後まで本当にわくわくどきどきできる作品でした。ぜひ、結末まで皆さんに読んでいただきたいおすすめ作品です。

素晴らしい物語をありがとうございました!

★★★ Excellent!!!

化学が大きく進化した未来の日本。
国家移転計画と共に作り上げられた完全なる人口都市。
その舞台はなんと、地下世界をも繰り広げる船の上。

探偵、警察、事件現場。
勝手知ったる展開の中、船上の都市であるからこその非日常感。呪術師の存在によって醸し出される不穏さが、物語の大筋となります。

ここまでなら何となく仄暗いストーリー進行を思い描くのですが、実はこのお話、コミカルな面が随所に潜み、確実に読者を笑わせにかかってきています。

シリアスの姿勢だけは崩さないながらも、生じるズレが見逃せない。
気付く頃には絶対的な面白さに取り憑かれ、完全に虜となるでしょう。

鋭敏でスタイリッシュな背景が似合うのに、登場人物全員、変……!


「奈落の神の福音」ーー
歌い踊る艶麗の呪術師に、あなたは満月の輝きを見るか。

腹の底から声出してオススメしたい作品です!

★★★ Excellent!!!

魔術がすべて科学的に解明された近未来、最後のファンタジーと呼ばれる呪術を使うただひとりの呪術師、江破鏡子。
彼女を中心に個性豊かなメンバーが集結し、船上に建設された「オルカ船上特別市」を舞台に、数々の難事件に挑みます!

まず世界設定が、濃いけどわかりやすく面白いです。
その上登場人物まで、濃い面々が出揃って楽しいシーンを次々に生み出してくれます。
呪術というとダークなイメージが思い浮かぶかもしれませんが、この作品全体に流れる空気はどちらかというとアットホーム。
霊の皆さんまで、話のわかる明るい方が多いです(笑)

呪術師なのに能天気な鏡子、ごく普通の等身大の女性に見えて実は…、という語り手の由佳。
基本明るいダブルヒロインが物語を引っ張ってくれるのが、本作の大きな魅力でしょう。
彼女たちの活躍、この先もとても楽しみです!

★★★ Excellent!!!

舞台は二十三世紀、進歩した科学を享受する都市——オルカ船上特別市。

主人公は日本探偵局オルカ支局監察課、百目鬼由佳。万丈な過去の持ち主。
彼女が監察するのは満月色の双眸で赤髪の呪術師兼探偵、江破 鏡子。

オルカ船上特別市はでは今日も明日も事件が起こる。その大小の事件に主人公たちは赴き、解決していく。

第一章の主人公と江破 鏡子が初めて顔を合わせる事件「市長秘書殺人事件」から、この作品の特色が大いに溢れ出している。

個性的な人物たち、無駄なく必要十分な情報が頭に流れるよう配慮された文章、そして明快な解決劇。呪術師の力で事件が解決されていく過程は鮮やかで読む者を魅了する事間違いなし。

また題名にもなっている「奈落の神の福音」という単語の謎も、話が進むに連れて徐々に背景が浮かび上がってくる。その謎に誘われたら最後、この物語から目が離せないだろう。

これは「呪縛と宿命を背負った女」の物語……「超科学の時代を、人類はどう生きるか」そして「世界最後の呪術師を、我々はどう生かすべきなのか」——その人生は……。それは是非あなたの目で見届けてください。

★★★ Excellent!!!

本作は23世紀の海上移動都市を舞台にして、最後の幻想といわれる呪術師と出会った主人公の物語です。
未来の世界では、魔法でさえも科学で解明されており、残された未知は魂や霊といった呪術の分野だけとなっています。主人公は降霊術を駆使する探偵を監査する役目に就いており、謎めいた事件を解いていくことになります。
高度に発達した科学がやがて停滞を迎え、幻想もまた消えていこうとするどこか物哀しい世界観が、巧みな文章表現により描かれています。