閑話3
「衛兵からいわれのない罪を着せられて街を出て行った……らしい?」
ここはラシアーユ商会、交易都市ザイン支部である。執務室で書類を確認しながら部下の報告を聞いていたけれど、不確定な悪い知らせにわたしは顔を上げた。
「らしいって何なのよ」
「フルールさん……、それがその……」
「はっきりしないわね。判断はわたしがするから、ありのまま報告しなさい」
確か名前はシュウとリオだったかしら。あのように綺麗に獲物を仕留める技量は、数年の研鑽で身につくものではない。あの年であそこまでの実力を持つ二人だ。今後もお付き合いをと思ってたけれど、何があったのかしら。
「はい、衛兵の包囲を突破したあと、男のほうは西門から出て行ったと証言が得られたんですが、もう一人の女の消息が掴めずでして」
「……消息不明?」
あの実力者がそうそうやられるとは思えないけれど、どういうことかしら。付き合いは短いけれど、なんとなくわたしの直感がそう言っているのだ。
「包囲を突破したあと見かけた者がいないらしく……」
何とも歯切れの悪い部下に納得する。シュウが西門から出て行ったというのであれば、リオも一緒に出て行った可能性は大いにある。
「男が西門から出て行ったというのであれば、きっと王都に向かったはず。王都支部に連絡を取りなさい」
「わかりました」
シュウとリオの二人はいい商売相手になりそうなのよね。獲物を持ち運んでいた方法も気になるけれど、いろいろと隠し持ってそうよね。わたしの勘だけれど。
アレスグーテの本部にも話を通しておきましょうか。時間はかかるけれど、各国に支部があるからどこにいても接触してくれるでしょう。
「うふふふ」
出ていく部下を見送りながら口元に笑みが浮かぶ。
あの二人がうちの売り上げにつながれば、
「実るのはもう少し後でしょうけれど、楽しみだわ」
そしてまた目の前の書類へと視線を落とし、日常業務へと戻るのだった。
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