グロキシニア
毎日、違う花が届いた。その日その日を象徴する花が、私の元に。
窓辺に置いてあることも、郵便受けに届けられていることも、仕事机に入っていることも、いつのまにか花瓶に生けられていることもあった。
日によっては花ではなく、観葉植物だったり果実だったり、手折られた枝だったりもした。彼らが持つ独特の形や色、手触りや香りは、この一年間、私を楽しませ、慰めてくれた。何より愉快だったのは、彼らが、彼らだけが知っているとっておきの物語を、私に聞かせてくれたことだ。彼らは届いたその日のうちに、彼らなりの独特の言語で、それを語ってくれた。
たしかにそんなことがあった、と思える話もあれば、絶対にありえない、と思われる話もあった。舞台も時代も世界観も、主役となるものでさえも、彼らによって違った。彼らは彼らの世界を生き、彼らだけの物語を大切にしてきたのだ。それはまるで、私たち人間と同じように。
だから私は、彼らから教えてもらった数多の話を、寝る前に書き留めてきた。寝て起きるとどこかへ消えてしまっている彼らは、きっとそのために、私の元に届けられていたのだと思う。
書き留めた物語を、私は時折、読み返す。それを語ってくれた彼らのことを、思い出しながら。
花束(誕生花ss集) tei @erikusatei
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