マツバギク
彼は村で一番の怠け者だった。よく晴れた日だけは不承不承、畑に出て働いたが、少しでも曇れば家に篭り、寝てばかりいた。それは月に一度ある神事についても同じで、たとえ雨の日でも行われる山頂の奉納式に、彼だけは姿を見せないことが多かった。
あんな不心得者はいない、と陰口を叩くものも沢山いたが、彼自身はそんなことを気にかけなかった。もし村八分にされるようなことがあったとて、きっと気にしなかっただろう。そういう性格だった。
だから、酷い雨の日に、奉納式に集まった村人全員が土砂に巻き込まれたときも、彼だけは自宅の寝床にいた。翌朝、大惨事を知った彼は、あくび混じりに呟いた。
「なんでも真面目にやりゃ良いってもんでもないんだよな」
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